プレオー8(ユイット)の夜明け―古山高麗雄作品選 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
3.42
  • (1)
  • (3)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 44
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982710

作品紹介・あらすじ

「生きていればこんなめにもあう」。理不尽なことも呑み込まなければ「普通の人間」は生きていかれない。22歳で召集、フィリピン、ビルマ、カンボジア等を転戦、ラオスの俘虜収容所に転属され敗戦となり戦犯容疑で拘留。著者の冷徹な眼が見た人間のありようは、苛烈な体験を核に清澄なユーモアと哀感で描かれた。芥川賞受賞の表題作ほか「白い田圃」「蟻の自由」「七ヶ宿村」など代表作9篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 安岡章太郎さんの『悪い仲間』に出てくる藤井高麗彦が古山高麗雄さんのことだと知り、古山さんを読んでみたくなった。

    そして古山さんを読み終わってから、もう一度『悪い仲間』も読んでみた。

    古山さんの作品を読んでから『悪い仲間』を読んでみると、
    最初に読んだ時の「藤井」は、棘と毒気と高慢みたいな感じを多めに感じたのだが、
    今回の「藤井」は、弱くて真面目なところが強く引き出されているように感じた。

    それは、古山さんの作品を読んで、古山さんが弱くて真面目で人のために尽くす人に思えたからだ。
    もちろん、そもそもそういう風にして描かれている作品なのだと思う。私が間違って捉えていたのだ。


    * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

    何日も前に読み終わって、感想を書かなくてはと思っていた。しかし、どうにも何を書いていいのかわからなくて書き倦ねていた。
    悪くはないし、良かったとも思う。でもこれまでのいつもの読後感とはちょっと違って、感想が思い浮かばなかった。

    『白い田圃』と『プレオー8(ユイット)の夜明け』と『蟻の自由』が良かった。
    どれも戦争記で、『白い田圃』と『蟻の自由』はビルマでの話、『プレオー8の夜明け』はサイゴン刑務所での話。

    どれも戦争記としては読んだことがないようなものだった。
    とくに『プレオー8の夜明け』のような、戦犯として刑務所で暮らすというシチュエーションは珍しいと思う。
    いつ外に出られるのかわからず、自分達の未来を描けない。生きるためにその日々を明るく過ごそうと芝居をやり、妄想をする。
    おもしろおかしく書かれているその奥に深いところがある。

    真面目に感想を書くとなったらもう1、2回は読まないと本当の感想は書けないと思う。
    いや、何度読んでも感想なんて書けないかもしれない。

  • 感想を書くまでにすこし時間が空いてしまった。9篇あるなかで、どれも戦争を題材にし、フィリピン、ビルマ、カンボジア等の戦場での戦いの様子や戦犯容疑で拘留されたという自分の経験を書いている。作品のうち経験の重なっているものがあり、実体験を小説に落とし込むときの取捨選択というものを、九作品を読んだからこそ見れた気がした。戦争当時に自分の見た戦場の風景をこんな風に整理して書けたのはすごい。
    プレオー8の夜明けがやはり一番よかったように思われる。戦犯容疑で拘留されている主人公たちの監獄での様子を描いたもので、戦争を古山高麗雄が描こうとするときに一番適した枠組みだった気がする。
    結婚して四十年経った妻との七ヶ宿村という作品が最後に載っていて、作品としてはすらっと読んだものの、中に描かれている夫婦の関係がおもしろかった。ここに焦点を当てた古山高麗雄の作品が他にもあったら読みたい。

  • 伊坂幸太郎『AX』に出ていたので。

    プレオー8とは、刑務所の部屋の名前。戦場や捕虜生活をこんな風に書くものもあったのか。と驚きました。
    哀しいものを飄々と受け流したり表現したりすることは、哀しく感じたり表現するよりずっと、難しいことではないでしょうか。

  • 一兵卒が体験した太平洋戦争を描いた「白い田圃」「蟻の自由」が強烈。読み進められなくなるような怖さではないのだけれど、飢えなくても負傷しなくても、戦争が人間をずたずたにすることを思い知らされる。特に「蟻の自由」は、タコツボの暗闇の中でのモノローグがこちらの体力をごりごり削ってきた。

    後半になるにつれてだんだん穏やかな気持ちで読める話が増えてくる。ダメ人間っぽく描かれている古山さんがいい感じにゆるくて、構えずに読ませてくれているのだろう。とはいってもお気楽なエッセイというわけではなくて、戦中派が受けざるを得なかった傷の存在が伝わってきた。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

古山 高麗雄(ふるやま・こまお)
1920年、朝鮮新義州生まれ。2002年没。旧制第三高等学校文科丙類中退。42年に召集され、東南アジア各地を転戦。47年復員。河出書房など出版社勤めを経て、雑誌「季刊藝術」の編集に従事。70年『プレオー8の夜明け』で芥川賞、94年『セミの追憶』で川端賞、2000年『断作戦』『龍陵会戦』『フーコン戦記』の戦争文学三部作で、菊池寛賞受賞。

「2021年 『文庫 人生、しょせん運不運』 で使われていた紹介文から引用しています。」

古山高麗雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×