草のつるぎ・一滴の夏―野呂邦暢作品集 (講談社文芸文庫)

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感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061983014

作品紹介・あらすじ

「言葉の風景画家」と称される著者が、硬質な透明感と静謐さの漂う筆致で描く青春の焦燥。生の実感を求め自衛隊に入隊した青年の、大地と草と照りつける太陽に溶け合う訓練の日々を淡々と綴った芥川賞受賞作「草のつるぎ」、除隊後ふるさとに帰り、友人と過ごすやるせない日常を追う「一滴の夏」-長崎・諌早の地に根を下ろし、四十二歳で急逝した野呂邦暢の、初期短篇を含む五篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後、まだ米国による統治の残り香が漂う中、自衛隊に入隊した青年の自伝的記録「草のつるぎ」。
    皆と同じであるために、却って皆を憎んでしまう主人公。何者かになりたいのに、何者にもなれないもどかしさを、草が生い茂る野の訓練生活を通して、最初から最後まで克明かつ秀麗な描写で描く。草の匂いが伝わってくるような巧みで、かつ弛みのない筆致に、息詰まる感じがした。
    反発しつつも次第に馴染んでいくことが、隊の包容力を表しているよう。
    失業期間に故郷の諫早で、昔からの友人と物憂く過ごしたひと夏の記録「一滴の夏」もやはり流麗。

  • 「草のつるぎ」は作者が20歳のときに自衛隊に入隊して、1年間の体験を淡々と綴った作品です。別人になりたかった主人公は、果たして新しい自分を見出したのでしょうか。「一滴の夏」はなにをするでもなく、モラトリアムな自分を持てあましているような印象を持ちました。

  • 1973年下半期芥川賞受賞作。森敦「月山」との同時受賞だった。ノミネートされていた中には、日野啓三や津島佑子もいたから、なかなかに激戦だったわけだ。さて、『草のつるぎ』だが、この作品は筆者の自衛隊入隊時の初年次訓練を忠実に描いたものだ。この当時は、まだ将校達も戦前の軍隊経験者や、海兵の学生だった者たちもいた。おそらくは、自らの実際の体験をかなり忠実に再現したものなのだろう。そして、そこで自己のアイデンティティの所在を問うのがテーマだ。ただ、最後にはそれが連帯感の中に溶解してしまうのは、なんとも残念である。

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著者プロフィール

野呂邦暢(のろ・くにのぶ)
1937年長崎市生まれ。戦時中に諌早市に疎開、長崎被爆のため戦後も同市に住む。長崎県立諫早高校卒業後上京するもほどなく帰郷、1957年陸上自衛隊に入隊。翌年除隊し、諌早に戻り家庭教師をしながら文学をこころざす。1965年「ある男の故郷」が第21回文學界新人賞佳作入選。1974年自衛隊体験をベースにした「草のつるぎ」で第70回芥川賞受賞。1976年、初めての歴史小説「諌早菖蒲日記」発表。1980年に急逝する。著書に『愛についてのデッサン』(ちくま文庫)、『野呂邦暢ミステリ集成』(中公文庫)、『野呂邦暢小説集成』(文遊社)、などがある。

「2021年 『野呂邦暢 古本屋写真集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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