自然主義文学盛衰史 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061983144

作品紹介・あらすじ

明治末期から大正初期にかけて文壇の主流であった自然主義文学を、当時読売新聞の記者として文芸欄を担当。のち作家として文壇の中心にあった著者が、藤村、花袋、秋声等の作品を論じながら回顧。漱石、鴎外、二葉亭にも及び、自然主義文学の盛衰を辿った力作評論。第一級資料。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和23年に白鳥69歳の時に書いた評論であり、証言記録とも言える作品。明治末期~大正初期に隆盛を極めた自然主義文学について「文壇の中の人」であった白鳥だからこそ知り得たこと、感じたことを回想しながら書いています。
    書かれたのが晩年になってから&元が雑誌連載のモノだったからか、何度も同じ話が出てきますが、そこから派生して色んなネタが出てくる辺り、まさに「白鳥お爺ちゃんの思い出語り」を聞いているようで大変楽しい。
    主に語られているのは、藤村、泡鳴、秋声、花袋辺り。そこから派生して独歩、秋江…等々と当時の交友関係(もちろん、自然主義派閥以外の、漱石や鴎外、蘆花などなど)と、世間からの扱い、文壇内での扱い(漱石、鴎外の作品と自然主義作品、その後出てくるプロレタリア文学との扱われ方など、横軸で刺した視点が欲しかったのでそれが知れた!)が書かれています。後の世の人が行う研究本とは違う、リアルタイムで体感してきた人だけが書ける文章で、こういうの書き残すのはとても大事! と常々私は思っているので、本当、裏表紙のあらすじに書かれている通り、「第一級資料」だと思います。

    それにしても、徳田秋声の紹介が冒頭から「秋声ははじめから地味でくすんでいたので、風葉や鏡花ほどに注意を惹かず、あまり批評に上がらなかった」とバッサリされてて笑ってしまった。
    (このあと白鳥なりの好意的な評価が続けて書かれていますし、なんと言いますか、この本はたとえマイナスな事が書かれていてもそれは愛のある正直な評価って印象で、読んでて不快にならないところがこれまたこの筆者の筆力だなあと)
    あと、逍遙先生には大変好意的な白鳥先生なのもよく分かったよ。

  •  前半は島崎藤村、後半は徳田秋声に焦点をあてて、自然主義文学の始まりから終わりまで。
     一番驚いたのは、自然主義文学は文壇で時代と地位を築いたけど、つまらないから一般受けしなかったよ本も売れてなかったし、とあるところが非常に面白かった。私の文学の印象のベースは高校の国語便覧で、ああいうので読むと自然主義文学は、例えば鴎外や漱石、白樺や新思潮と並べられて語られてるから、一般受けしてないだとか売れてなかっただとかは読み取れておらず。
     日本の自然主義文学は私小説で告白文学、それがどれくらい文学として異様だったなども読み取れる。世界の自然主義文学がどのようなものか、についてはそんなに触れてなかったようで(?)、印象が残っていない。いずれ、そのあたりを調べてみたい。

  • 歯に衣着せぬざっくばらんな白鳥の物言いがいい。柳田のつっけんどんさとは違い、当事者ならではの切って切り離せぬものに対する億劫さと嫌気と、愛がある。明治から戦後へ長く生き延びた人の哀切が淡々と語られ、逆算して明治の冒頭に大きな転機を見せた露伴の評で終わる所もなかなか良かった。藤村、秋声、秋江らのファンの人は特に面白いと思う。

  • 解説が、非常によくこの本について語られていると思う。
    自然主義とはなんだったのか、というより、
    自然主義の人たちとはどんな人物だったのか。
    それが、この本の中には余すところなく語られている。
    単純な文学史というよりは、人間を読むことが出来る
    興味深い本である。

  • 2009/
    2009/

    深沢七郎さんの本に出てきた人です。

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著者プロフィール

正宗白鳥(1879.3.3~1962.10.28) 小説家。岡山県生まれ。東京専門学校(早大の前身)文学科卒業。キリスト教に惹かれ受洗、内村鑑三に感化される。後に棄教の態度を示すが、生涯、聖書を尊重した。1903年、読売新聞社に入社、7年間、美術、文芸、演劇の記事を担当、辛辣な批評で名を馳せる。『紅塵』(07年)、『何処へ』(08年)を刊行するや、代表的自然主義作家として遇される。劇作も多く試み、『作家論』『自然主義文学盛衰史』『など評論でも重きをなした。『入江のほとり』『人を殺したが…』『内村鑑三』『今年の秋』等、著書多数。

「2015年 『白鳥評論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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