身心快楽 (講談社文芸文庫)

著者 :
制作 : 川西 政明 
  • 講談社
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本棚登録 : 26
感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061983397

作品紹介・あらすじ

滅亡は私たちだけの運命ではない。生存するすべてのものにある。滅亡の真の意味は、それが全的滅亡であることにある。戦後文学の巨人、『司馬遷-史記の世界』の著者・武田泰淳の全体像に迫る精選随筆集。代表的エッセイ「滅亡について」をはじめとし、武田文学に思想的重量感をもたらすことになった中国での戦争体験、敗戦の騒然たる体験へのあくなき思索、同時代文学と自作への問いかけ、自伝等、二十八篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 武田泰淳は次のように言う。
    「滅亡は私たちだけの運命ではない。生存するすべてのものにある。世界の国々はかつて滅亡した。世界の人種もかつて滅亡した。これら、多くの国々を滅亡させた国々、多くの人種を滅亡させた人種も、やがては滅亡するであろう。滅亡は決して詠嘆すべき個人的悲惨事ではない。もっと、物理的な、もっと世界の空間法則にしたがった正確な事実である。」(p.89)
    「私はこのような身のほど知らぬ、危険な考えを弄して、わずかに自分のなぐさめとしていた。それは相撲に負け、カルタに負け、数学で負けた小学生が、ひとり雨天体操場の隅にたたずんで、不健康な目を血走らせ、元気にあそびたわむれる同級生たちの発散する臭気をかぎながら「チェッ、みんな犬みたいな匂いをさせてやがるくせに」と、自分の発見した子どもらしからぬ真理を、つぶやくにも似ていたにちがいない。……滅亡を考えるとは、おそらくは、この種のみじめな舌打ちにすぎぬのであろう。」(p.90-91)
    倫理が、舌打ち、言い換えればルサンチマンに過ぎないことを自覚していたところに武田泰淳の非凡さがある。滅亡について思考すること、倫理的であることは、弱者の戯言に過ぎない。だが、たかが舌打ち、されど舌打ちだ。誰も舌打ちをしない世界を想像してみよう、それこそ地獄ではないか。武田泰淳の口から漏れ出る舌打ちは一考を要する。

  • この人はやっぱお坊さんなんだなあ、と思わせる随筆。

  • さいこう。
    作品の順番は単行本版(絶版)のほうがよい。

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著者プロフィール

武田泰淳
一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2022年 『貴族の階段』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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