- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061983632
作品紹介・あらすじ
終戦直後の大阪の混沌たる姿に、自らの心情を重ねた代表作「世相」、横紙破りの棋風で異彩を放つ大阪方棋士・坂田三吉の人間に迫る「聴雨」、嫉妬から競馬におぼれる律儀で小心な男を描いた「競馬」、敬愛する武田麟太郎を追悼した「四月馬鹿」等、小説8篇に、大阪人の気質を追究した評論「大阪論」を併録。自由な精神で大阪の街と人を活写した織田作之助の代表作集。
感想・レビュー・書評
-
小説に関しては、まるで大阪弁でテンポよく語られていて、ひどく歯切れのいいリズムが印象的であった。
巻末の「大阪論」は、大阪の風土と文学・芸術との関係を論じているが、とかく一般的な印象論になりがちなところを、さまざまな人物の生涯に託して論じた、特筆すべき論考である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
八木沢里志「続・森崎書店の日々」つながり。「競馬」のみ読了。真面目なだけがとりえのさえない高校教師が、美しい女給の一代に入れあげ、思いが通じ、結婚することになったが、間もなく一代が病に倒れ、懸命の看病、あらゆる治療法、薬をためすも、果たせず。空虚になり、職も失い、競馬にのめりこむ。一代にかけて「1」の馬ばかり買いつづけ。競馬場で、もしかして昔、一代の男だったのでは、という男と会うが、確かめる勇気もなく、顔をあわせば何言か話す関係だが、最後の持ち金、職場の金すべてつぎこんだ勝負に勝った瞬間、その男と抱き合って喜びを分かち合ってしまう。競馬にのめりこむ、墜ちていく、熱狂は読んでいて手に汗にぎってしまう。そうせざるを得なかった、一代への思いの深さも。
-
読みやすい短編集です。
不健康がもてはやされていた(?)頃の作品です。 -
馬券一枚に人生があるのだと、競馬をしない自分にもつくづく感得できる。その昔、早稲田のACTミニシアターへ行き、隣の古本屋で新潮文庫版を買った。どうでもいいコトが忘れられない織田作。
-
やばい。わたし、さいきん、オダサクが好きすぎる。はまりすぎる。彼の文章は、何か、不思議な中毒性がある。その文体、そのストーリー、そのスピード、そのリズム。まっすぐにぐんぐん突き進んでいるかと思うと、急に、ぐにゃっと曲がる。基本的には常に猛スピードで疾走しながらも、時々ひょいと、あれれ?と、「アッ!」 ―と、ずっこけたりして、そしてとにかく、ダメ人間というか何と言うか……そんな人たちが多く、そして、だけれども、いつも読み終わると心がホッと温まる。嬉しくて、にこにこと顔に微笑を浮かべてしまう。その読後感がヤミツキになる。<br>
<br>
ひとつ悲しいことがあるとすれば、私が大阪をまったく知らず、地名が出てきてもそのイメージも位置関係も何もわからないことだ。それは織田作文学を味わう上でほとんど致命的な欠陥となってしまうんじゃないだろうかと思う。私は、絶対に、織田作之助の描く話を100%理解することはできないんだ、常に何%かの空白ができてしまうんだ、と思うと、何とも言えず寂しい気持ち。(そして「でも絶対に『関西 ― オダサク巡礼の旅』に行ったるぜえ」という気持ち。)