- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061983816
感想・レビュー・書評
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魯迅作の同名の短編があるが、このような直截的なタイトルを掲げる作品は今後出版されないのだろうか。そんな過剰な言葉狩りの心配はさておき、精神を病んだ主人公の一人称で日々の生活を綴った本書では、彼の独白が非常に現実的な響きを持って読み手に訴えかけてくる。物語は病院内で幻影や幻聴に悩まされる様子を記した前半から、そこで知り合った女性との同居生活を描いた後半へと展開し、救い難い陰鬱な主題でありながらドライで魅力的な余韻を残す。巻末の著者の年譜と著書目録も嬉しい。
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ラスト前の上がり方が凄い。
ぐわぁーって感じ。 -
淡々とではあるが、
しとしとと足音をたてて忍び寄ってくる漠然とした不安。
自分が歪んでいくのを自覚しながらも、
それを戻せることも無く、
隣にいてくれる人をただ傷つけ、傷ついていく。
恐ろしい程に徹底した描写である。 -
伊集院静さんの「いねむり先生」を読んだのがきっかけで、色川さんの作品ってどんなん?と思い手にとりました。ちょうど、この作品を書いているころに伊集院さんと一緒に競輪などされていたのだと思います。精神障害に苦悩する男の見えないはずのものが見えて、聞こえないはずのものが聞こえることを日常として認めざるを得ない姿が、苦しかったです。精神を病む人の苦しさがどれほどのものか、淡々と綴られる中の地獄がわかるような気がしました。
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伊集院静 氏の「いねむり先生」を読んで、この本を知った。
淡々と書かれた文章が印象的だった。
『無』の中に、日々の出来事だけが彩られて書かれてある様に感じた。その他の事は病気の事も幻覚も全て『無』の中で起きている様に感じられ、読んでいて著者と同じかどうかは分からないが『孤独感』を感じた。
いねむり先生の中で、先生に発作が起きた時「今度は自分が先生を救う番だ」という事で確か先生を抱きしめるかなにかする場面があったと思うが、そして最後に同じ患者で結婚した圭子も別れると言いながらも面倒は見ると言っている。
孤独感の恐怖...弟の幼い時の事ばかりが目に浮かぶ事...等々
赤裸々な告白....
音の無いシーーーーーーンとした世界を淡々と読み進んだ と言う印象
哀しいとかそう言う事ではなくて....なんと言うか そう言う事を知ったと言うか....
読んで良かったそして他の著書も読んでみたい。 -
壊れていく人の頭の中にいるような気持ちになった。読んでいる最中は、真っ白な世界にたった一人いるような心細さを味わった。読後の異常な虚無感はこの本以外に味わえないだろう。つらくて悲しくて泣いた。いつまでも忘れられない一冊。
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通勤で読むと気が滅入る。現実と幻覚が交差してどっちがどっちだか分からない。ふと思うと、現実も幻覚も自分が生み出しているのだから全て真実か、それとも現実も幻覚も全てユメのようなものか。どんなに理解しようとしても他人の境涯は決して理解することもできないし、言葉でも説明できない。しばらく寝かせてからいつかまた読んでみる。
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病棟生活を綴った色川武大の最後の小説。読売文学賞受賞作。最初は、何だか話が単調で、読む気があまりなかったが、後半からクライマックスにかけて恐ろしいほどの感覚に襲われて、実に素晴らしい作品であった。