腕一本・巴里の横顔 (講談社文芸文庫)

著者 :
制作 : 近藤 史人 
  • 講談社
3.44
  • (5)
  • (11)
  • (26)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 190
感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061983953

作品紹介・あらすじ

二十六歳で渡仏、絵を燃やして暖をとる貧しい修業生活を経て、神秘的な「乳白色の肌」の裸婦像が絶賛を浴びる"エコール・ド・パリ"時代の栄光。一方故国日本では絵の正当な評価を得られぬ煩悶と失意から、やがてフランスに帰化、異郷に没した藤田。本書は一九四〇年以前に書かれた随筆から、厚いベールに包まれた画家の芸術と人生を明かす作品を精選、さらに未発表の貴重な二作を発掘収録する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東京新聞2018929掲載

  • 藤田嗣治の随筆。
    藤田がパリで、戦争で、筆で何を見たのかが鮮やかに見えてくる。
    なぜか近年藤田が注目を集めている。おそらく戦争への反動から無反省的に戦争に関わったものを蔑んできた「戦後」というものを、彼を再評価することで脱却しようとでもいうのだろうか。あるいは同じように、失われた「日本」を、愛国者でありながら国に嫌われた彼を再評価することで取り戻すとでも。
    近年の流行の何であれ、彼が古今東西に何を見て、その中でどう闘い、何を見出したかがわからなければ、彼を本当に評価することは難しいだろう。彼は、独自の色彩を生み出したことで知られることになったわけだが、それ以外にも彼が苦心していた点はいくらでもあったことが、この随筆で伝わってくる。また彼が「日本的」であることに強くこだわり、その表現のために歴史から自由であろうとしたこともわかる。自由の地での血肉を巡る彼の闘いのなかにこそ、彼が見ようとしたもの、あるいは彼が描こうとした「力」が垣間見られるのである。

  • 藤田嗣治の三冊の随筆集からの抜粋と未発表・未完成の文章二本を収録してあります。藤田嗣治の人となりを感じ取るには好適の一冊だと思います。有名画家となった人間の魅力と強さ弱さ、そしていやらしさのようなものも含めて、人間的魅力を持った人だと思いました。それは、反面では近代日本の社会を写す鏡としても機能しています。
    なお、この本の編集で不満なのは、各文章の初発表年月が明記されていないということです。

  • この自己礼賛・他者批判加減が世から疎まれた理由ですな、これは。日本人は良くも悪くも、今も昔も所謂中道がお好みですから、出る杭は確実に打たれるます。
    それにしても同時代の煌びやかな画家の話が充満していて凄さを思い知る反面、過去の画家への言及が非常に少ない気が。この辺りにこの人の日本性を感じなくもないです。

  • フォトリードのみ

  • 藤田嗣治「腕一本/巴里の横顔」読んだ。http://tinyurl.com/3f2k9nm 激動の人生、モデルたち、制作への真摯な姿勢。戦後の戦犯騒動は知らなかった。彼の死に際した仏国営放送のコメントに泣く。死んだ人に勲章あげるくらいなら、生きているうちに本人へ言葉を伝えなきゃ。

  • 人物を描く作家としては、これほど独創性のある絵はそう無い。
    だから真似もされ、贋作も多い。ある意味真似しやすい。
    ずっと謎とされてきた下地のファンデーションも解明されているようだ。
    フランスで英雄、言わずと知れた大画家の大変面白いエッセイ。
    現在では聞き慣れた画家のエピソード等盛りだくさん。
    長らく文庫では読めなかった著である。
    少し高価な文庫ではあるが、珠玉の様相、価値あり。

  • 画家藤田のパリ日記だったり。

    もっともっと奇抜なことばっか書いているのかと思いきや、
    とっても情にあつかったり、時代に翻弄されていたり、
    人間っぽさが素敵でした。

    つか友達とかすごすぎ。
    父さんは森鴎外と友達とか、
    いうまでもなく、本人はモディリアーニやゴッホとお友達な訳で、
    シャガールとも親交があり。
    くらっくらします。

    岡本太郎の名前もでてきちゃったりね。

    あのパリで戦争とかも思いつかないし、
    リアルな戦争も身近に感じるような一冊。

    でもやっぱシャネルおかっぱおじ様はかっこよし。

  • レオナール・フジタこと、藤田嗣治のエッセイ集をまとめたものです。

    才気走った文章です。意外とうまくて驚きました。しゃれっ気もあります。ベル・エポックのパリが背景に描かれたものは、まるできら星のごとく有名人が出てきますし、ドラマのような出来事も描かれています。

    ストーリーテラーだなぁと思います。でも、本当のことを描いているのでしょうが、微妙に嘘っぽいようにも感じてしまう。「えーかっこしぃ(関西でいうところの『カッコつけすぎ』)」なタッチを感じるんですけど(苦笑)。おそらく、このあたりが戦争画うんぬんで突き上げられた遠因かもしれません。持ち上げられるとノリノリになってしまって、相手の期待に応えようとする、というか。

    画家の側面が分かって面白く読めましたが、ちょっと自画自賛でしんどいようにも思うのでこの☆の数です。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1886年、東京都新宿区新小川町の陸軍軍医の家に生まれる。1913年、渡仏。パリのモンパルナスでピカソやヴァン・ドンゲン、モディリアーニらエコール・ド・パリの画家たちと交流。手製のなめらかなカンヴァスの上に、面相筆と墨で細い輪郭線を引き、繊細な陰影を施した裸婦像は、「乳白色の肌」と呼ばれ絶賛された。1919年にはサロン・ドートンヌ会員推挙。作品はパリで大人気となった。1929年、凱旋帰国展のため16年ぶりに一時帰国。1933年以降は日本を活動の拠点とする。日中戦争がはじまると、祖国への貢献を願い大画面の戦争画の制作に没頭するが、戦後は画壇から戦争協力者として批判を浴び、その責任をとる形で日本を離れる。再びパリに暮らし始め、日本には戻らないと決めたフジタは、1955年にフランス国籍を取得。1959年、72歳の時にランスの大聖堂でカトリックの洗礼を受け、レオナールという洗礼名を与えられます。最晩年には、ランスに感謝を示したいと礼拝堂「シャぺル・ノートル=ダム・ド・ラ・ペ(通称シャペル・フジタ)」の建設を志し、完成から2年後に没した。

「2021年 『フジタ 色彩への旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤田嗣治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×