ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 264
感想 : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984028

作品紹介・あらすじ

"ゴットハルトは、わたしという粘膜に炎症を起こさせた"ヨーロッパの中央に横たわる巨大な山塊ゴットハルト。暗く長いトンネルの旅を"聖人のお腹"を通り抜ける陶酔と感じる「わたし」の微妙な身体感覚を詩的メタファーを秘めた文体で描く表題作他二篇。日独両言語で創作する著者は、国・文明・性など既成の領域を軽々と越境、変幻する言葉のマジックが奔放な詩的イメージを紡ぎ出す。

感想・レビュー・書評

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  • 深夜にふと聞いたNHKのラジオで紹介されていた「隅田川の皺男」
    浪人生で身体を売っているウメワカと会社を辞めた女・マユコが出会って…という内容がちょっと面白そうだったので読んでみた。

    ファンの方がいらしたらすみません…
    私、この本が全く合わなかった…。

    小説だと思って読むから理解できないのかも
    詩と思ったら?
    絵画と思ったら?
    理解しようと思うから理解できないのか…

    他にも
    ゴットハルト鉄道
    無精卵
    と短編があるのだけど…
    両方とも理解が難しい…
    まだ、皺男の方が理解できるかも…

    おもしろさがわかる人に解説してもらいたい…

  • 表題作は意外と短く、収束の仕方がやや急ながら序盤はするりと入り込みやすい。鉄道やトンネルというのはわかりやすく現実と非現実の境界を曖昧にするアイテムだと思う。

    印象的だったのは同時収録の「無精卵」。同居していた男の死、勝手に出入りするその義姉、突然あらわれた謎の少女と、その少女の奇妙な行動・・・最終的に主人公の「女」は何者かに陥れられるかのように作品舞台から去ってゆき、彼女の書きためた散文のようなものも失われてしまう。

    タイトルの無精卵=温めても孵ることのない卵は、子供を産まなかった女の象徴であると同時に、発表されることのなかった作品のことでもあり、つまり徒労に終わる無駄なこと、の象徴でもあるのだろうけれど、しかし産まずとも少女は現れ、彼女は作品の写しを持ち去っている、そこに微かな希望を見出すこともできるのではないかと思う。

    「隅田川の皺男」は収録作のなかでは唯一登場人物にきっちり名前がついていて、主人公マユコだけではなく、彼女が買う男娼のウメワカ側の心情まで掘り下げてあるあたり、ある意味異色の作品。

    それでいて多和田作品にお馴染みの(と私は思っている)強迫的な人物(なぜか主人公は彼女に逆らえない)は登場するので、相変わらず悪夢感は拭えない。「無精卵」における義姉とか、多和田葉子はこの手のキャラクターに何かトラウマでもあるのかしら(笑)。

  • 気味が悪い(褒め言葉)、と言えばいいのか
    理解不能でおぞましい(褒め言葉)、と言えばいいのか。
    無機質なものが意思を持っているようであったり、
    人が単なる物質のようであったり、
    どうしてそんな比喩ができるのだろうと
    くらくらする。

  • これは、主にゴットハルト鉄道は、散文で詩だ。しかも、それは単なるイメージの描写ではなく。まるで絡め取られるような、ぬるぬるとした、、押してはいけないボタンを押したい、触ってはいけないものに触りたい、そういう、入っちゃいけない場所に、手招きされているかのような詩だ。客観視できない、自分に強烈なまでに流れ込んでくることば。ちょっと怖かった。でもたぶん、そういう誘惑はなんか気持ちよい。

    • ktserendipityさん
      突然のコメント、失礼致します。
      ぬるぬるとした・流れ込んでくる、、、という表現にはっとしました。自分のペースを保てない感覚に陥りますよね。...
      突然のコメント、失礼致します。
      ぬるぬるとした・流れ込んでくる、、、という表現にはっとしました。自分のペースを保てない感覚に陥りますよね。
      このレビューに出逢えて、感想が更に深まりました。
      2012/05/13
  • 全ての文章が示唆的で、多様な解釈を可能にする、だけどそれ故にこそ難解な作品だと思う。「無精卵」という作品は、子供ができない女性が、ある日子供を拾って育て始める作品だが、そこにはフィルターを介さない「子育て」の過酷さのようなものが描かれている。しかし、作品後半では、まるで視点が逆転したように、育てられる側の子供の不満のようなものも描かれていて、興味深い短編だと思った。

  • この短篇集の中で、ゴットハルト鉄道だけが宙に浮いている。
    ドイツ語から日本語に訳された小説というのも大きいと思う。続く2作「無精卵」「隅田川の皺男」のような粘着質な湿度がない。雪がさらさらとしているからか。「無精卵」と「隅田川の皺男」には、女との攻防が粘着質に描かれている。まず絶対に勝てない強い女がひとり以上必ずいて(その人物はひとりではないかと思うくらいに同じ強さを持っている)主人公が翻弄される。主人公は、より弱い者の弱い点を愛想笑いみたいな卑屈さでみつけて、それを少しだけほじくる。女が出てくるだけで、2つの小説はおぞましい回転を始める。

  • DADAさん推薦。

  • ベルリンの話かと思ったら、スイスの山岳鉄道の小説であった。事実か虚構かがわからない。

  • 面白かった!!
    独特の言葉の使い方ゆえか、鮮烈なイメージは湧くけど掴みきれない感じが良い。
    三作品とも甲乙つけがたいなー。
    他の作品も読んでみたい!強くそう思える作家に久々出会った感じ。

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著者プロフィール

多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞し、2018年『献灯使』で全米図書賞翻訳文学部門、2020年朝日賞など受賞多数。著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』などがある。

「2022年 『太陽諸島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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