東京小説 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 42
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984080

作品紹介・あらすじ

うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる十四の断章。

感想・レビュー・書評

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  • 【速読】東京のモノ・消費社会みたいなのがにおってくる少作品いろいろ、でして、それは都会の生活とイコールでもあると思うんですが、そこに戦争の記憶をぶち込むと情緒の変遷に厚みが増すんですね。これは野坂昭如がずっと前から書いてきたことの延長なのかもしれませんが、友情編は富山から状況し都会的流行を痛感した藤子Fさんの大人向け作品にも通じる、なんてことも思いました。で、この文体を迂回的でありながらきびきびした文章、と町田康が書いてまして、このただ一言だけどもすごいなと思いますね。

  • 1988年から1989年にかけて『小説現代』に連載された連作短編シリーズ。バブル景気のまっただ中、そして昭和から平成へと年号が変ったまさにその時に連載されていた作品。野坂作品でよく出てくるテーマを扱いながらどこか冷めて漂白されたような体温のない雰囲気が当時の世相を色濃く反映しているような気がする。「純愛篇」の乙女的なロマンチシズム漂うオチと「隅田川篇」の意表を突く着地点と物悲しい余韻が個人的にはお気に入り。

  • 東京などを舞台とした作品です。

  •  これは喜劇だろ、すべて。

  • 東京という街ならではのちょっと歪んだ現代人の姿を切り取った短編集。筋はともかく文章だけで読ませる作家陣に傾倒しつつあったこの頃に水を差すような、かっさかさに乾ききった文章に、久々に衝撃を受ける。相変わらずの無頼さ加減が由来すると思われる戦中戦後のどん底の生い立ちを振り返る文章も見られ、興味深く読んだ。けれど否応なく感じられる古くさい感じは、日本の時代を他のどこよりも鋭敏に反映する東京という街を活写すればするほど避けがたく纏うことになる泡沫の時代性の証左なんではあろうなあ。

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著者プロフィール

野坂昭如

一九三〇年(昭和五)神奈川県生まれ。親戚の養子となり神戸に育つ。四五年の空襲で養父を失い、のち、実家に引き取られる。旧制新潟高校から早稲田大学第一文学部仏文科に進むが、五七年中退。CMソング作詞家、放送作家などさまざまな職を経て、六三年「エロ事師たち」で作家デビュー。六八年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞を、九七年『同心円』で吉川英治文学賞を、二〇〇二年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞。そのほか『骨餓身峠死人葛』『戦争童話集』『一九四五・夏・神戸』など多くの著書がある。二〇一〇年(平成二十七)死去。

「2020年 『「終戦日記」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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