わが子キリスト (講談社文芸文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984127

感想・レビュー・書評

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  • なんか恐ろしく古い文庫。むしろステキ。

  • 最近欧米系小説ばかりよんでいたので気分を一転、おもいきって武田泰淳です。
    初武田泰淳。
    今回の読書コンセプトはマニアックな作家さんを読んでみようという失礼なものですが、有名だよ!という人がいたらすみません。あと作者にもすみません。
    中国かぶれのお坊さんで中国を誰よりも深く愛していながらその中国に従軍し、尊敬する文化と伝統を蹂躙せざるを得なかった不幸な人らしいです。
    マルクス主義からの転向派でどちらかといえば太宰に近いけど、根本的に違うところは、太宰と違って彼は自分と時代の不幸に陶酔できなかったところ。どこまでも現実を見据えた冷静な人だったらしい・・・。戦後文学をリードした大家です。
    ざっと読んだ経歴はこんなもん。結構興味をそそられます。

    三話入っていますが、
    『わが子キリスト』では裏切り者のユダの解釈が斬新です。誰よりも真面目で知性派で、イエスを愛していた男として描かれています。
    自分が弟子達の不幸を一身に背負って自殺する、というところは作者の時代とてらしあわせて極東裁判を思わせなくも無い・・・と愚推してみる。
    ちょっと不満だったのは、主人公がマリアを犯してイエスを産ませた男という設定。ここまで重くて面白い設定のわりに不完全燃焼だったような・・・・。ユダ史観も斬新だったのに、主人公とユダと二人のどっちつかずに終わった感が残りました。どっちかにしぼればよかったのにな〜。

    『王者と異族の美姫たち』は主人公が晋の文公の重耳。
    晋の国を翻弄した驪姫と、重耳を助けた現地妻たちのお話しですかね。
    宮城谷昌光の『重耳』を読み返したくなりました・・・・。『重耳』面白いですよ。ヘタレ皇子ですが庇護欲をさそうのか、臣下から奥さんから皆重耳の尻をたたくたたく。
    やたら『重耳』を読み返したくなる内容でした。

    『揚州の老虎』
    一番興味が薄い・・・というか・・・袁世凱の時代の話なんでもはや時代的にも興味がなかったです。すんません。かろうじて「揚州」とか「塩」という言葉に『水滸伝』を思わせるものがあり、(;´Д`)ハァハァするくらいでした。時代を見誤った男のお話というか、結局商人が得をする、というか・・・。
    風刺ですかね?

    渋いお話ばかりでした。面白い・・・とはちょっと言いがたいかな。現代作家さんの小説を読みなれている人にはちょっとつらいかも。
    小説というよりは講釈という感じがしました。歴史小説を書く人にありがちな客観的描写パターンですね。

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著者プロフィール

武田泰淳
一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2022年 『貴族の階段』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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