- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061984554
作品紹介・あらすじ
かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける<開かれた>小説の世界。<思考の生理>によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み9篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選した作品集。物語のあらゆるコードから逸脱し続ける作品世界!
〇小島信夫 私は、彼女がいなくなると、何か安心したように、いっきょに、たいへんな速さで娘時代から幼い頃へとさかのぼり、そのあたりのところに、自分が停滞するというか、そんな状態に見舞われた。その時代から、ゆっくりと先へ進みはじめ、不意に彼女がカチンと音を立てる。我に返ると、それがほかならぬこの私であった。――<「月光」より>
感想・レビュー・書評
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「ちなみに今長々書いてたのは嘘です。」みたいな感じで締めたりする、ルール無用な一冊。
読者の事は一切考えていないが、独特の叙情と滑稽さを感じれる個人的小島信夫の良いとこが詰まった名刺的一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがきを読むに、この本は小島信夫の私小説的なものの、残響のような短篇集らしい。私が読んでいる小島作品は、新潮文庫の短編集『アメリカン・スクール』と『私の作家遍歴』のみであって、老境に入った小島先生の周囲を描いたものはない。だからなのか、主人公である小島さんの感情がなかなか動かないからなのか、小説の中に入っていくにはなかなか骨の折れる話が多かった。それだけに「暮坂」は白眉であるように感じた。第1章は『私の作家遍歴』を思わせる、あっちこっちに話の移る芸術についての講演であって、これは小島信夫の、自分の小説の解題のように思われる。だからこそ、第2章から続く小島信夫の〔いつもの〕日常小説が、不思議に読みやすく思えてくる。1番面白いのが小島先生が怒るところで、どうやら小島信夫という作家は、人を怒らせるシーンを描くときに輝くような気がしてならない。「暮坂」4章の、岐阜人の記者に対して怒るシーンは、声を出して笑ってしまった。
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2013/2/22購入
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話の筋や重心を追うのがすごく難しいのに、重力があって読むのをやめられない。どうすごいのか説明できないけれど、すごい。
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小島信夫の後期短編集。
彼の作品はずっと読みやすいものだと勝手に思っていたけど、この本は結構厳しかった(ただでさえ自分は短編を読んで感じる能力が劣ってるので)。
過去に書いた作品から新たなエピソードを紡いでいるものがあって、元ネタを知らないと難しい気がした。
文章も繋がりが一読しただけでは分からない部分が結構あった。
この本から小島信夫に入るのは危険だと思う。
前もって他の作品を数冊読んでから、手に取ることをお薦めしたい。
そうすればある程度は楽しめるかと。
個人的に良かった作品は「天南星」かな。 -
読み終えたけど、感想はのちほど
著者プロフィール
小島信夫の作品
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