旅の時間 (講談社文芸文庫)

著者 :
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本棚登録 : 129
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984622

作品紹介・あらすじ

酒を愛で、食通として知られた著者は、気侭な旅を好み、名作『金沢』によって、月明かりの世界に、古都の漆のように艶やかな魅力を妖しく浮かび上がらせ、『時間』によって、独自な人生哲学を語った。自在な空想と想像力を駆使し、パリ、ロンドン、大阪、神戸、京都など親しく馴染んだ土地を舞台に、「生の意義」を思索した連作短篇集『旅の時間』によって、日本近代文学は確かな、ゆとりある大人の小説を得た。

感想・レビュー・書評

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  • 移動しながら、会話しながら、なだらかに過ぎてゆく甘酸っぱい時間。お酒を呑んで旅のひとときを満喫できる人たちがちょっぴりうらやましくなった。
    吉田健一は、日々暮らしているなかの感覚から、自分自身にとてもよく似合ういい言葉を選び、読む者に厳選された言葉を食べさせる。わたしは突然ふふふと笑い出してしまって、言葉を食べて酔っぱらったような多幸感を覚えた。そしてゴリっとくるいいものは、いつも動いているように感じ、振り落とされないように自分も動いていかないと、って思わされた。
    特に『飛行機の中』、『京都』が好き。

  • タイトル通り、「旅」と「時間」をテーマにした小説。飛行機や客船、夜行列車などの移動空間、京都や神戸、ロンドンやニューヨークを旅していて、そこで流れる時間が一元異なるということがよく感じられる。飛行機に乗っているときは地上では時速何百キロという速度だが、なんだか世俗から切り離されたような感覚になり、たまたま隣に座った異国人との会話もそのような雰囲気となる。旅の楽しみ方を「時間」という切り口で考えるなんてあまりしなかったが、そういう楽しみ方もあるのだなと思った。次回出張は意識してみよう。

  • 時間の味わい方が、自分と似ていて嬉しかった。読点がないことで、さらにゆっくりと一文一文を楽しめたように思う。

  • 師走のやや慌ただしい空気を離れ、いい感じに酒が回ったところで読了。
    緩やかに流れる旅という非日常的なシチュエーションが丁寧に描写されていて、正に大人の時間を堪能出来る。
    それにしても、船旅はそんなにいいものなのか。一度やってみたいもんだが、果たして吉田健一が達したような境地に至れるかどうかは全く自信がないw
    貧乏性なのでつい色々とやりたくなるんだよねぇ。つまり、『大人』になるにはまだまだってことかw

  •  この人の文章はいつ読んでもその完成美に圧倒される。余計な贅肉も、はみ出た醜悪な思想もない。清廉な酒がいつまでも注がれていくよう。

  • ふむ。なかなか興味深い。
    友人から贈られて読んだ本です。自身ではまぁまず選ばなかっただろうなぁという本。笑                              しかし。この方、吉田さんですか、1文の長いこと、長いこと! 音読して息継ぎ対決とかしてました(笑)。                     最初はね、何この人?って、正直思ったわけですよ。でも、読み進めるうちに、味が出てくるんですね。だんだん面白くなってくる感じでした。別に、ただ徒然なるままに旅の出来事や感想を書き連ねているわけで、特別ストーリーがあるとかそういうのではないんですが、一人旅をしたことのある人間なら分かるよねー、ていう、なんていうか旅の空気がそのまま描写された本だなぁって感じがしました。観光本ではないので、どこの何がいいよ、とか、そいういうことは書いてないですよ?あくまで、「旅の空気」が書かれてるなぁ、って感じです。まったり。

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著者プロフィール

1950年生まれ
出生地 和歌山県東牟婁郡串本町大島
大阪芸術大学卒業
投稿詩誌等:大学同人誌「尖峰」「詩芸術」「PANDORA」
      わかやま詩人会議「青い風」

「2022年 『砂宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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