羊をめぐる冒険

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2048
レビュー : 209
  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062002417

作品紹介・あらすじ

野間文芸新人賞受賞
1982年秋 僕たちの旅は終わる すべてを失った僕のラスト・アドベンチャー

1979年 風の歌を聴け
1980年 1973年のピンボール
そして、1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった消印は1978年5月──北海道発

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めてすぐに、このお話には「失われる」予感しかしない、と思った。
    第一章の悲しみが深すぎて、私はこの一章を読んだだけで、今更ながら村上春樹のことを「いったいこの人は、どんな生き方をしてきたのだろう」と思ったのである。

    『風の歌を聴け』に始まる、「僕」と「鼠」のシリーズの完結編にあたる作品らしい。
    yuuさんから「『羊をめぐる冒険』は、止まった世界が終わる話かも知れません」とお聞きして、とても気になりつつ読むのが今になってしまった。読んで納得、そしてやはりこれは、「失われる」お話だったのだな、と確信した。

    この物語で、「僕」はたくさんのものを失う。それは妻だったり、仕事だったり、そしてもっともっと深く、長い長いものだったり。
    けれどもそこに漂うのは喪失感というよりは、圧倒的な普遍さ、であるような気がした。あまりにも普遍すぎて、それが故に茫漠として、刹那的なもの。
    「鼠からの手紙」を読んで、私はそのあまりの刹那さに、「鼠はきっと、もうダメだ」と思った。彼のあまりの悲しみに、いたたまれなくなってしまったのだ。
    この「もうダメだ」というのは、彼が人間として、あるいは生きていくこと自体が、もうダメだ、というのではない。このあまりに個人的な彼の悲しみが、もうダメだ、と思ったのである。
    私がもし、この作品の中で描かれているほどの悲しみを背負ったとしたら……はたして、生きていけるだろうか? と思う。

    私は村上春樹のファンではないし、彼の作品も数作しか読んでいないけれど。もし、彼のすごさは何か? と人に聞かれたなら、私は「必然性だ」と答えるかもしれない。
    けれど、何が、「必然」なのか? いったい、村上春樹作品の何が、「必然」であるのか?
    わからない。けれど、考えてみたところ、それは「現実は虚構である」「虚構は現実である」という、あまりに主観的で矛盾した認識なのではないか、と思った。

    私たちが生きている世界は、自分の思い通りにならないし、個人の考えなど何の意味も影響も及ぼさない。「わたし」や「ぼく」に、どれほどつらいことがあって、死ぬほど悲しいことがあったとしても、それは世界には全く関係のないことなのだ。
    こんな世界がはたして「現実」だと言えるだろうか? 否。この感覚、この感情、自分が抱いているこの認識だけがリアルで、唯一自分のものと言えるもの。だとしたら、この世界は自分の感情の入れ物ではないだろうか?
    けれど現実はそうではないこともまた、「わたし」や「ぼく」はわかっている。1+1=2であり、世界は自分がいなくとも回る。けれど、不思議なことに、それと同時に1+1=2ではない、ということもまた、事実なのだ。

    この圧倒的な矛盾。どちらもが現実であると同時に、どちらもが虚構であるという認識。これが村上春樹の「必然性」なのではないかなぁ、と私は思う。

    最後の最後、「僕」が二時間泣いた、と書かれていることが、むしろ救いのような気がしてしまうほど、私にはこのお話が、とてもとても悲しいものに思えた。

    • yuu1960さん
      「ピンボール」は、直子が死に、僕は遠い街に出かけ、帰ってきた、というだけの物語であって、喪失感を相対化できていないように思います。

      村上春...
      「ピンボール」は、直子が死に、僕は遠い街に出かけ、帰ってきた、というだけの物語であって、喪失感を相対化できていないように思います。

      村上春樹を読んでいると、何より作者が物語を欲していると感じます。本作で作者はその必然性を得たのだと思います。
      2013/04/28
    • 抽斗さん
      >yuuさん
      この物語は誰より、作者村上さん自身のために書かれたような気がしました。
      私は『ノルウェイの森』のラストがとても印象的だと思った...
      >yuuさん
      この物語は誰より、作者村上さん自身のために書かれたような気がしました。
      私は『ノルウェイの森』のラストがとても印象的だと思ったのですが、この作品のラストも、それに近い印象を抱きました。
      2013/04/29
  • 処分する前に読む母の村上本 その⑥
    デビュー3部作の完結編とは知らず
    30年前に初めて村上春樹と出会った本作は衝撃的だった

    年を経て順番にデビュー作から読み直す
    読み終えて感想を書こうとすると何も思い浮かばない
    けれど読んでいる時間が無性に楽しい
    他の方のレヴューを読むのも楽しい

    この3部作で登場する「故郷」は 村上春樹が過ごした
    芦屋~神戸の阪神間であると言われている
    港 工場地帯 バー 坂道 など なるほどと思うものの 
    あまりピンとこない

    東京の地名はわりとはっきり書くのになぁ
    故郷のことを書くときはけっして地名を書かない

    村上春樹の作品に頻繁に出てくる「サンドイッチ」
    読んでいると無性に食べたくなる
    神戸に「村上春樹も絶賛のサンドイッチ」があるらしいので
    一度行ってみたいものだ

  • 内容紹介
    野間文芸新人賞受賞作
    1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった 消印は1978年5月――北海道発

    あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。
    その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。
    北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。
    新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    僕と鼠の物語、三部作がついに完結!
    ...と言うか上はAmazonからの抜粋なのですが、
    この内容紹介でさえも村上ワールドっぽくなってて面白い(笑

    「あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。」

    とかね、なんか影響されまくり感ありますよね(笑。
    はまるとみんなムラカミハルキっぽくなっちゃうんでしょうかね、さすがの影響力です!
    (ほめてます)

    で、ついに完結の三部作目。
    タイトルに「冒険」とつくだけあって、この作品は前二作とは大幅に毛色が変わってきます。

    ついに村上春樹が目覚めた!って言えそうなくらい
    勢いとドキハラに包まれてます。

    そんな中でもやっぱり登場人物はみんな淡々としてます。
    誰一人として焦ったり慌てたりしてない。
    最後に鼠と再会する僕ですが、そのシーンもう少し驚いてもよくない?(苦笑

    そしてなぜか無駄なところで性的な表現が入るし(苦笑
    でもこの作品では誰かが性交していても(作中っぽい表現してみた)
    「性行為」って口にしても、さらりと聞こえてしまうのが不思議。

    たとえば最近読んでた辻村深月の作中の誰かが同じように
    「性行為」を見たり口にしたりしたら...
    急にその行為が生々しく感じるのに。

    不思議ですね。本当に。

    で、今回は「羊をめぐる冒険」です。
    冒険の名にふさわしく?淡々としながらも「僕」は謎の男の依頼に従い、
    パンフレットにうっすら載っていた背に星のある羊を探しに北海道まで旅に出ます。

    もちろんそれはその羊と「羊つき」となった人たちの末路に興味があったからなんですが。

    そしてついにパンフレットの背景となった山までたどりつくのですが、
    そこで意外な人物と再会...!?
    ってさっき自分で「鼠と再会」って書いちゃいましたね。
    ごめんなさい><

    これは面白かったし、作者独特の表現方法や名言に感動したり
    とても深く読み込める作品となりました。

    面白い表現を今回はメモメモ。

    「彼の姿は洪水がひいた直後のアスファルト道路を思わせた。」とか
    「ミイラの頭を棒で叩いたような乾いた咳」とか

    着想が本当にすごい。
    村上春樹っぽく世界を表現しようと思うと
    すごーく勉強になる気がします。

    そして耳の素敵な彼女との出会いのシーンでの二人のやり取り。
    僕が好きなのは君の耳なのか別の何かが耳を媒体としてアピールしているのか分からない、
    そして彼女がもう少し感情表現を学んだ方がいいと「僕」に言う、そのあと「僕」はこう言う。

    「それで僕はどうすればいいのかな?」

    ...っておいwww
    丸投げすかwww
    私だったらその時点で「知らんわ!」って言っちゃいそうw

    でも彼女は優しいので、「友達になろう」と言う。
    「もちろんあなたがそれでよければだけど」
    との気づかいの言葉に「僕」は

    「もちろんいいさ」

    ...ておい(再び)w
    なんでそこ上からw

    でも、この彼女もあとになると妙なことを言い出します。

    「でも我々って言葉は好きよ。なんだか氷河時代みたいな雰囲気がしない?」

    ...しないよ。
    一気に不思議ちゃん認定ですよ。
    で、このあとなぜそう思うかの説明がちょっと入るのですが、
    「僕」はそれに「なるほど」と納得しちゃう。

    いやその会話ほんとおかしいって。
    浮世離れしすぎだって。

    ...って言うネタ的なものを探しながら読むのも楽しいと思います。
    もちろん大前提としてこれがネタに思えるのは私だけかも知れないのですけどね(苦笑)

    とは言え、村上作品の登場人物って「~は好きよ」って表現をよくしますね。
    その代りに「~は嫌い」って言う表現はほとんど見当たらない。

    皮肉な表現も多くあるのに嫌味じゃないのは、
    作者がこんなふうに世界を肯定しているからかも知れませんね。

    ファンがたくさんいるのも、作者の世界が「好き」であふれているからなのかも。

    回収されないまま終わる伏線もありますが、
    それは次回作「ダンス・ダンス・ダンス」に期待します。
    (刊行順じゃないです)

    この作品には羊男も出るらしいですよね~。
    楽しみ♡

  • 春樹ファン、と豪語しながらも、振り返ると1冊だけ読んでいない長編作品があった。それがこの「羊をめぐる冒険」。
    主人公の「僕」は、ある日謎の男の訪問を機に、友人「鼠」から送られてきた一枚の「背中に星型の斑紋のある羊」の写真を手掛かりに、その羊と友人を追って旅に出る。与えられたリミットは1ヶ月。
    北海道の人里離れた牧場へ、完璧な耳を持つガールフレンドと向かう。

    最後まで飽きさせない展開。強力な個性を放つキャラクターも健在だ。(特に羊男。春樹の本にイラストが掲載されるなんて稀だ。)
    羊がカラダのなかに入ってくるってどんな感じなんだろう。
    とても不気味。だけど物語全体の情景がものすごく私の中でイメージできた作品だった。馬ではなく、牛ではなく、「羊」を選んだことも秀逸。村上春樹の世界観にとてもうまくハマる動物な気がする。

    鼠と主人公との会話がクライマックス。鼠が自分の弱さについて語るシーン、とても緊張感がある。
    でも、全体を通すと、「僕」はあまりにも切ない。失うものが多すぎる。
    最後のジェイとの会話が救い。ジェイはカッコいい男だね。
    「風の歌を聴け」「1978年のピンボール」の続編。この二作は読んだことが有るんだけど、もう一度読み直してみる。

    「やれやれ」ってお約束のフレーズは、この時に生まれたのだろうか。
    それも含めて、春樹作品をもっと読み込んで行こうと思う。

  • とある手術で入院4日目で再読完了。病室で時間の感覚がない中で読んだことと、忘れがちだけど北海道生まれなので、あの土地のイメージがあいまり、数十年前よりも濃く浸れました。歳をとったからなのか、前に読んだ時より全体的に受け入れられた感じで、特に耳がきれいなガールフレンドを失ったことすら仕方ないなあと思いました。

  • 再読。
    オールタイムベストの一冊。
    私としては、村上春樹の最高傑作だと思ってましたが、今回、約四半世紀振り(⁈)に再読して、改めてそう思いました。
    ただ、読み終わった印象は、以前とは全くちがっていて、「こんな話だったっけ?」ていうくらい(^_^;)
    前回読んだのは20代だったと思います。混沌として捉えどころがなく、息苦しく切なく寂しい、なんとなくもやもやとした読後感でした。再読してみて、たぶん当時の自分自身のありようが影響してたのかなあ、という感じです。
    最も村上春樹らしい作品だと思います。

  • ずっと村上春樹が「嫌い」で、長いこと『ノルウェイの森』を読んだきり、いくつかの作品をつまみ食い程度に読んだだけだった。けれども、きちんと読まずに「嫌い」と言っていても説得力がないなと思っていたところ、テレビの特集で「日本では圧倒的に『ノルウェイの森』人気だが、ヨーロッパでは『羊をめぐる冒険』だ」と言っているのを見て本棚から引っ張りだした次第。
    なるほど、読んでみるとファンタスティックなストーリーで『ノルウェイの森』のような息の詰まる恋愛小説とは違う。いつもは鼻について「嫌い」だと思っていた文章も、実はとても考えられていることにも気づいた。15歳のときに『ノルウェイの森』で拒絶反応を起こしてから、ここまで来るのに15年。中学生に『ノルウェイの森』を解れという方が無理があるが、それでも私にはこれだけの時間が必要だったということか。なかなか成長の遅い子です。

  • おもしろかった。途中からはもう止まりませんでした。
    最後は悲しくてちょっと泣いたかな。
    「村上春樹わーるどに魅せられました!(どーん)」て感じかな。笑
    うん。

  • もう何度読んだかわからない。。。
    何度読んでも、飽きないし、大好きな本です。
    1行、1行...とにかく、全部が好き。

    読むたびに、違う発見があります。
    きっと私の中に、ねずみと羊博士がいるんです。

  • 面白すぎました!
    すごく不思議な世界観で、飽きのこないエピソードがちりばめられ、かなりの長さなのに中だるみも感じさせません。
    謎については先読みも出来ないまま最後まで引っ張っていく展開がすごいです。
    羊は、一体何を意味するのでしょうか…?
    深いテーマが隠されているように感じました。
    さらりと読んでも面白いけど深読みしてみるともっと面白いのでしょう。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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