小説そのものより、「知識」が得られるのが楽しい。
先日読んだ小説は江戸から明治にかけての庶民の生活。
その前は、「またぎ」や炭鉱労働者、そして女郎の生活。
こういった歴史を背景にした小説を書く場合、著者はかなり調べなくてはならない。
もちろんその時代を書こうと思ったのだから、作者の思い入れも強いので、記述は俄然詳しくなる。
ぼくの歳になると、そんな読み方をしてしまう。
まあ、間違った読み方とはいえないだろう。
今回の小説は、釣り(漁師)についての知識が豊富に仕入れられる。
ぼく自身は、釣りを全くやらないのでかなりの部分が判らない。
でも、数年海の上で生活していたので、雰囲気はよくわかる。
「老人と海」に日本版と言えよう。
ただし、老人は二人で、戦う相手はカジキと違ってイシナギといってスズキ科の魚だ。
全然知らなかったが、2mくらいの大物もいるそうだ。
長崎地方の漁師の方言で書かれているので、ちと読みにくい。
釣り名人である二人の老人のライバル心と尊敬心の間で揺れる心理を描いている。
もう一つ「赤い海」も納められているが、こちらはよく調べてあるが、ちょっと話を作りすぎの感じがする。