ノルウェイの森(下)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062035163

作品紹介・あらすじ

彼らの求めたものの多くは既に失われてしまっていた。もうそこから進むこともできず、戻ることもできない、暗い森の奥に、永遠に…。限りのない喪失と再生を描く今いちばん激しい100パーセントの恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の最初のほうにこういう文がありました。

    「もっと昔、僕がまだ若く、その記憶がずっと鮮明だったころ、僕は直子について書いてみようと試みたことが何度かある。
    でもそのときは一行たりとも書くことができなかった。
    その最初の一行さえ出てくれば、あとは何もかもすらすらと書いてしまえるだろうということはよくわかっていたのだけれど、その一行がどうしても出てこなかったのだ。
    全てがあまりにもくっきりとしすぎていて、どこから手をつければいいのかがわからなかったのだ。
    あまりにも克明な地図が、克明にすぎて時として役にたたないのと同じことだ。
    でも今はわかる。
    結局のところーと僕は思うー文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。
    そして直子に関する記憶が僕の中で薄らいでいけばいくほど、僕はより深く彼女を理解することができるようになったと思う。」

    読み終えて何時間かが過ぎて、今こういう状態にいます。
    これからもどんどん変わっていくのだと思います。

    ビートルズのノルウェイの森からきていますが、WIKIPEDIAによると
    最初はドビュッシーの「雨の庭」で書き始めていたそうです。
    この小説のどよーっとした感じはその曲の方がぴったりくると思いました。

    でも、作者はJAZZが好きらしく、この小説も形式がJAZZっぽいです。
    繰り返し読むかたが多くいらっしゃるそうですが、わかる気がします。
    今すぐ読みたいとは思いませんが、結果を知っていてもまた読んで味わってみたい気はします。

    主人公の心の動きや、登場人物のそれぞれが面白かったです。
    自殺した人がたくさんいますが、それは鬱病のせいだと思うのでそのことについてはあまり関心ありません。

    それより永沢さん、突撃隊、レイコさんがピアノを教えた女の子などがその後どうなったかが気になります。

    映画化されるそうで、菊地凛子さんがどこまでやるのだろうとか、いろいろ気になりますが、映画をみるとがっかりすることが多いので、評判を聞いてから見るかどうか決めます。

  • 最後の3章は止まらなかった。
    本には終わりがある。人生も。
    これから彼はどうなるだろう。とても何とも言えない感情で、何とも言えないことが理由なのかよくわからない感情で泣いた。

    表紙の緑は緑のことで、題名はレイコさんのことだと思う。赤はケガかな。

    読み終えた深夜2時。

    すごく言葉にし難い想い。
    大切な感情を次の日には忘れてる感覚。
    事実として起こったことは思い出せるし、感情も言葉では思い出すが、全く同じ感情にはなれないカンジ。
    読書中、結構そんな感覚だった。

    これいる?って思う一文も、何で書いたんだ?って立ち止まる。
    読み飛ばせない水溜まりがたくさんあったなぁ。

  • 素晴らしい小説です。出てくる表現一つ一つが繊細で弱く同時に強く残るという不思議な感覚です。
    村上春樹さんの書く文章がとても好きです。

  • 変化が起こるようで起こらない下巻。
    しかし終盤で急に事態が激変。かなり驚いた。
    ちょっと「そりゃないよ」的な感じ。
    あんな事があったら、主人公は生きている事に
    望みを見出せないのでは?と思った。
    それでも最後はきれいに終わる。希望も見出せる。
    (上下巻を通じて)
    テーマは「生と死の境界」みたいなところであろう。
    それだけ聞くと重くて暗い感じを受けるが、
    この小説では様々な出来事(明るかったり暗かったり)
    を通してそのテーマを表現している為、
    重さや暗さは感じない。
    むしろ会話のやり取りが明るくて楽しい。
    それがこの小説の人気たる所以なのかも。
    …しかし、エロシーンが満載であった。
    最後の最後まで。もう少し抑え目でも良いのでは?
    村上春樹の小説だとこれが普通なのかも知れないけど。


  • はじめて読んだのは十五歳の時で、当時は何が良いのかよくわからず読了できなかった。次に読んだのは二十歳の時で、このときはじめて読了した。死というものに対するワタナベの考え方や直子の底知れない孤独について衝撃を受け、当時、大きな影響を受けた。
    それからときどきページをめくって、いろんな場面を飛ばして読んだりして、この世界観を味わった。
    なぜか何回も読み返してしまう作品。

    三十歳になって他の村上春樹作品も読むようになり、その一環で『ノルウェイの森』も最初から通読した。ちりばめられたユニークな比喩、いちいち立ち止まってしまう名文や格言、魅力的なキャラなどに引き込まれ、やはり名作だと感じた。その時は、最後にレイコさんと肉体関係を結んだのはきっと直子の浄化のためで、そうやって緑を選び、生きるほうを選んだのだ、という分析的な感想をどこかに投稿した記憶がある。

    それからまた六、七年が経ち、今回読み返してみると、もはやどう感想を書けばいいのかわからない。これがこうなって、こうなった物語なのだ、というよりは、ワタナベも直子も緑もレイコさんも永沢さんも、すぐそこに存在していそうで、彼らがただ人生を暗中模索しているだけの様子を丁寧に描いてくれたという印象を受ける。我々の人生が決して予定通りにいかないように、『ノルウェイの森』の彼らもいきあたりばったりしながらすすんでいくのがリアルだった。
    もちろん今と違ってスマホもない時代だし、春樹作品特有の世界観は現実世界では味わえないものもあるけど、読んでいると、彼らの抱えている感情にのめりこんでしまうものがある。今回、終盤で号泣してしまった。『ノルウェイの森』で衝撃こそ受けてもそこまで泣くとは思っていなかった(歳とともに涙もろくなったか……)。レイコさんとの直子の葬式は素晴らしかった。
    そして、生きるほうを選ぼうと決意しても、その先にはまた何が起こるかわからない。電話ボックスの外でいろんな方向に歩き去っていく人々のなかで、自分の立っている場所を見失う。というラストは何度読んでも良い。物語が締まるというか。

    余談、
    ハツミさんの物語をもう少し掘り下げて読みたかった。
    永沢さんは、ほんとうに惜しい。あれだけの能力と強さを持っているのに、人を幸せにできない。

  • 主に下巻の感想。
    直子、かなり頑なだったけど少しずつ柔らかくなってきた気がする。
    緑の柔軟なこと。家のことがいろいろ大変みたいだけどそんなこと感じさせないくらい。

    男たちみんながとても自由だ。永沢さんが全く最高に自由で、ハツミさんをとても悩ませている。

    「あれからもう二年半たったんだ。そしてあいつはまだ十七歳のままなんだ、と。でもそれは僕の中で彼の記憶が薄れたということを意味しているのではありません。彼の死がもたらしたものはまだ鮮明に僕の中に残っているし、その中にあるものはその当時よりかえって鮮明になっているくらいです。」

    「お前とちがって俺は生きると決めたし、それも俺なりにきちんと生きると決めたんだ。お前だってきっと辛かっただろうけど、俺だって辛いんだ。本当だよ。(中略)そして俺は今よりももっと強くなる。そして成熟する。大人になるんだよ。そうしなくてはならないからだ。」

    直子は緑のことを、緑とのことを本当はわかっていたんじゃないか。

    「僕にはその事実がまだどうしても呑みこめなかった。僕にはそんなことはとても信じられなかった。」

    「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ」

    渡辺くんは全体で見れば勝手だけど、いろんなことを真面目に深く考えて悩んできちんと行動するところに好感が持てる。ひとつひとつは納得できるから嫌いになれないんだ。

    直子と緑は両極端で、最後には何事も考えすぎない緑のことが好きになっていた。そこは柔軟性というか、強い心の持ち主というか。彼にとっても、そういうことなのかな。

  • 上巻を読んだ時点では、なんて妄想的なんだろうか、こんな男にとって都合のいい女の子(緑)がいるものかという憤り?とちょっとした不快感を感じた。思い返すと、「村上春樹氏は決してノーベル文学賞は取れないだろう、今の時代の価値観からはあまりにもかけ離れすぎている」なんて評論家の意見を前情報として取り込んでいたことも少なからず影響していたのだろう。しかし、下巻で、緑が私が眠るまで抱いてして欲しいとつぶやき、ハツミがどうして私だけじゃ足りないのと叫んでいる姿を見た時、私の心は既に物語の中にあった。

    http://nobuko.html.xdomain.jp/noruweinomori.html

  • 処分する前に読む母の村上本 その⑧

    いやはや疲れた
    しばらく村上本は読みたくないが
    図書館が開館するまでに全部読み切ってしまいたい

    若かりし頃に読んだ時には
    それまでの村上春樹の作品とは違うんだぞという
    売り出し方(100%恋愛小説という帯)だったかと
    それでもさして違いを感じなかったが
    好きな部類にはならなかった

    著者自身がわざわざ「ふだんは書かないあとがき」と
    前置きして4つの理由を挙げている
    何度読んでもその必要性があまり理解できない私 
    ちょっと言い訳めいて聞こえるのからかなw

  • 上下まとめて。
    人間の美徳好きを表したような話、と思った
    ほんまに好きやったけど、死んでしまった相手をいつまでも特別な存在とし続けること
    愛する人が死んで心に傷を負った彼女を一生守りたいと思ったこと
    やけど、別の人に気が移ることもあるのに
    それでも美しく終わることが良いとされる世の中
    そんな論理的なものじゃないのに、って話
    やからワタナベくんは最後に緑にいったんやろうな

    ただ村上春樹の提示型の書き方は好きじゃない
    俺の表現が分かる人だけ分かればいい、みたいな
    でもまあ、さすがみたいなところも

  • 不思議な話のような、ものすごく現実的な話のような
    全く知らないことのような、よく知っていることのような
    哀しいような、羨ましいような

    そんな不思議な印象の本でした。
    他人の死が常に誰かの側に寄り添い、捻じ曲げたり、立ち止まらせたり、後を押したり。

    少し時間をおいて、もう一度読みたいなと思う。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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