この本は大きく二つに分かれています。
最初は作者が知人などから伝聞した奇妙な話に創作をまじえたショートショート。
そして、二つ目は明らかにフィクションだと思われる短編がいくつか。
読んでいて最初のショートショートだけだと思っていたら、半分あたりから短編になったのでガッカリでした。
個人的には断然、最初のショートショートの方が良かった。
まあ、私が恐い話が好きだからというのもあるけど・・・。
短編の方は夢と現実の狭間のような、ちょっととらえどころのない話ばかり。
読んだらすぐ忘れる、という類のものです。
それと比べてショートショートは淡々とした文章で書かれているものの、これが本当の話?どこまでが本当なんだろう?と思うとやはり引き込まれてしまう。
と言っても、文中にあるように、「言ってみればそれだけの何という事ない話」ばかりなんですが・・・。
こういう話って、ゴテゴテした文章でなくサラッと書かれている方が却ってジワジワ~と後から恐くなると思います。
これはそれで言うと、バッチリ効果的な文章でした。
個人的に印象的だった話、恐かった話は、
「二階のお客さんに出す食事の話」
離婚をして出戻って来た姉が一週間に一度か、二度おかしな行動をとる。
それは誰もいない2階に食事の支度をして運ぶということ。
それを家族は見て見ぬふりをしている・・・という話で、話の結びが恐かった。
ゾッとした。
他にも、
祖母にひどい暴言をはいて2階に上がると、そこに1階にいるはずの祖母がいて繕いものをしていた、という話。
祖母と大ゲンカをしてまもなく、その祖母が亡くなり、語り部の男性が2階にいると、亡くなったはずのその祖母が階段の降り口の暗がりにいた、という話。
この2話も想像すると怖かった。
私が恐いと思ったのは偶然にも2階がからんでいる話で、姉の話は生きた人間の話、祖母の2話はひとつは生霊、ひとつは死霊ということで、普段から恐いと思っている順だな・・・と思いました。
生きている人間が一番怖くて次に怖いのは生霊、その次が死んだ人の霊だと思ってるから・・・。
この本にはこういった恐い話でなく、小人が出てくる話とか、イイ話系のものとか、ちょっと可愛い話もまじってました。
全てがショートショートだったら評価は☆4つだったんだけどな~。
いつもたくさんのレビューが投稿されていて、憧れています。
夢枕獏氏の作品は、高校時代「キマイラシリーズ」には...
いつもたくさんのレビューが投稿されていて、憧れています。
夢枕獏氏の作品は、高校時代「キマイラシリーズ」にはまり、それ以来、文庫化される度に読むようにしています。
他の作品も是非オススメです。