新八郎は根岸肥前守に仕え町を巡回中に、突然の雷雨と竜巻に襲われ湯島の岡っ引き鬼勘こと勘兵衛の機転で案内された場所で、偶然雨宿りしていたお鯉と再会し動転せず気が利くお鯉に目を留めた御奉行が、彼女を奥向き女中として雇い入れる。身近で働くお鯉に複雑な心境の新八郎が描かれる。暗くドロドロとした展開にならず、新八郎の爽やかな人柄で明るく展開され読みやすい。
表題作「又右衛門の女房」地震が続く江戸の町、直接の上司高木用人は途方にくれた様子で、心配した新八郎が話を聞くと、刀剣鑑定の名家に嫁いだ娘の離縁話を打ち明ける。地震騒ぎの最中、自分をほり出して逃げた夫にに愛想を尽かして実家に戻ってきたらしい。取り成しを頼まれ引き受け店に訪れた後、新八郎の眼前で預かった刀剣のトラブルが起こり…。他、松平家の若殿誘拐事件・能楽師の若い妻をめぐる不倫事件・狸と男心中させた話等、内与力の新八郎が解決する。