白道

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本棚登録 : 13
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062056205

感想・レビュー・書評

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  • 寂聴さんの一人称なんです、これ。歴史小説じゃなかったのね。司馬遼太郎みたいなのを想像してた。しかも「私のxx訪問」「私の出家」みたいな西行と直接関係ないエピソードが結構挿入されてて、まあ文章の処理は恐ろしく上手いから読みにくさはないが、作者本人に興味ない向きにはウザいかも。
    それ以外にも、高子業平やら花山院のエピソード、「小栗判官」に「奥の細道」、奥州藤原氏に崇徳院の配流…と来れば必然的に雨月の「白峯」、更に「歌枕見て参れ」の実方まで、同時代もそうじゃない時代も一緒くたに筆者の琴線に触れるまま、もう自在に語られていく。

  • 久々に読み返した作品。

  • 西行の仮名展を見て、西行の一生が知りたくなり、手に取った。小説かと思ったが、そうではなかった。雑誌に連載したものを、文献資料を読み直し、ゆかりの地にこまめに足を運び直し、全くはじめから書き直すつもりで取り組み、5年かけて書き上げたという。研究書、紀行文、小説の入り混じった作品といえるだろうか。

    謎だった若い時期の急な出家の原因を、著者は複数の研究者の説から「総合原因説」をとっている。厭世、かなわぬ恋、政治、数奇の遁世のすべてを総合した原因だとする。著者自身も急な出家をしていて「自分で発心する出家というものは、明確なひとつの原因などあるのではなく、わけもなく不思議な何かにそそのかされてそうなり、出家した後に於て、自分でさえ判然と云い表わすことの出来ない原因を、探し求めつづけることが出家者の生きざまとなっていく」と言っている。経験から出た言葉だけに、そういうものなのかと思う。

    数奇の遁世とは、歌詠みとして生きるためという意味だが、「現実の世界では果たし得ない恋を、西行は歌の中で、月と花に託して歌いつづけ」、「失恋の傷手をバネにして、多くの哀切で世にも美しい恋歌の数々を生む原動力にしてしまっている」。小倉百人一首の「嘆けとて月やは物をおもはする かこちがほなるわがなみだかな」はその恋の歌の一つ。想いの先は、鳥羽天皇の皇后・待賢門院璋子だった。

    「西行は、始終旅をして歌を作っていたように見られがちだが、出家以来の五十年の歳月の中で、西行なりに、仏弟子としての道をふみ外すまいと努力している」。32歳から30年間は高野山に入って仏道修行をしている。また69歳で奥州へ旅をしているが、それは東大寺再興の勧進のためだ。西行は「いつの頃からか歌はわが真言となっていた」と晩年に述懐している。

    なかなか読みにくかった。ひとつには、むずかしい言葉が多かったからで、何度も辞書をひかなくてはならなかった。北闕(ほっけつ)、幽邃(ゆうすい)、擱筆(かくひつ)など、はじめて目にした言葉だ。仏教用法なのか「荘厳する」「将来する」などもなじみのない言葉の使い方だ。もうひとつは、西行が慕った平安中期の能因や、西行を慕う江戸前期の芭蕉の足跡と、平安末・鎌倉初期の西行自身の足跡とがからむ箇所で、時や場所が入り混じってわかりにくかったこともある。

    西行の歌もたくさん紹介されているが、「風になびく富士のけぶりの空に消えて ゆくへも知らぬわが思ひかな」が一番好きだ。

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著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒。’57年「女子大生・曲愛玲」で新潮社同人雑誌賞、’61年『田村俊子』で田村俊子賞、’63年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。’73年に平泉・中尊寺で得度、法名・寂聴となる(旧名・晴美)。’92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、’96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で野間文芸賞、’11年『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。’98年『源氏物語』現代語訳を完訳。’06年、文化勲章受章。また、95歳で書き上げた長篇小説『いのち』が大きな話題になった。近著に『愛することば あなたへ』『命あれば』『97歳の悩み相談 17歳の特別教室』『寂聴 九十七歳の遺言』『はい、さようなら。』『悔いなく生きよう』『笑って生ききる』『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』『その日まで』など。2021年11月に逝去。

「2023年 『すらすら読める源氏物語(上)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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