台所のおと

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 60
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062059541

感想・レビュー・書評

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  • 幸田文らしい美しい文章の短編集。台所の炊事のおとなんか、日々に追われる私は意識したことないなあ。さぞかし、慌ただしく、落ち着きのないおとを立てていることでしょう。人の気持ちの遣り取りのふとした心情の揺れを丁寧に捉えた佳作ばかりだと思うが、中には捉えてほしくない面も取り上げられて「食欲」などは読後感はよくなかった。捉えてほしくない面も取り上げられ、なおかつハッピーな終わり方というところで、「祝詞」「おきみやげ」等よかったです。「濃紺」の下駄というものに纏わる思い出の話もよかった。自分の使うものも日々大切にしたいものです。

  • 普段どうにも言葉では表現できない気持ちがさらりと自然な言葉で書かれていて、言葉にするとこういう表現になるんだなあ、と思うことが何度もあった本でした。心の機微がこうも捉えられているのに驚きます。
    心地よい日本語って気持ちいい・・・!夏休みにじっくり読めて良かったです。

  • 昭和30〜40年
    今とは全然違う価値観の主婦たち。
    家族のため、自分は二の次というのは、共通かな。

  • 普段は全く気にしないのだけど、なんかのひょんな弾みで気付くことがある。五感や心がさび付いて鈍くなってるなと、伴って生活自体が惰性的で荒んでるなと。

    ラクしたいという意識から文明は進歩してきたと思う。ドラえもんの道具もラクしていろんなことができるから素晴らしい。過度に「ラクするなと戒める」のは文明の否定につながる危険性を伴う。

    かといって完全に「ラク」を追求しすぎると、文化は爛熟し「堕ラク」と化す。かといって爛熟を避けるためにラクになって浮いた時間を勤勉に過ごすとゆとりがなくなる。
    例えば、電信→電話→ポケベル→携帯→スマホ、と進化していった会話媒体は、わざわざ人に会いに行くという手間をハブいてラクを与えてくれた半面、軽薄な人間関係を育てる温床となった部分(堕ラク)もあり、24時間体制で人とつながり続けるという余裕のない関係(ゆとりがない)を生じさせることになっている。

    どこまでラクするか。どこまで手間を惜しむか・・・。各自の価値観も合って一概に正解のない課題ではあるのだけど、この本を読めば何がしかのヒントがつかめるかもしれない。台所から聞こえてくる音や、着物の着方などで自分や配偶者の体調やご機嫌を推し量り、推し量られるから工夫する関係。電子レンジちーん、フリーススポッでは感じ得ないそういう感性を、貴重と思うのか、うざったく思うのか。

    幸田文の文章はさらっとしていて胃にもたれない、リズムもあって読みやすい。でも知性が備わっていて、しっかりと後味を残す。そんな幸田文の筆にかかった掌編を読んでみると、ちょっとだけ、手間を惜しまずラクを犠牲にしてみよかな、ひょんなはずみが訪れるわけである。そういや小津映画にもそんなひょんが潜んでいるな。

  • 表題作の「台所のおと」など10編。
    実家に帰ったときの母親の台所のおと。
    気にしてみたことがなかったけれど、
    今度帰った時にはどんなおとなのか、聞いてみよう。

  • 260ページ。装幀/大泉拓 カバー写真撮影/江頭徹(講談社写真部)

  • 幸田文の短編集。

    昭和に生きる女性の日常における心の機微が丁寧に描写されています。

    昭和の時代に妻として母として生活する女性の覚悟や心意気に寄り添えます。

    その覚悟や心意気に、現代をだらけて生きる私は背筋が伸びる思いです。こういう女性を目指したい。

  • 図書館の本

    内容(「BOOK」データベースより)
    暮しのなかのなにげない音に絡みあう男と女の意気地。生きる哀しみを捉える確かな視線と透徹した感性。

    昭和の女性が見えてくる作品ばかりでした。筆者の生きた時代を考えれば当たり前なんでしょうが、昭和といっても明治・大正の流れを汲んでいる昭和の女性がきれいに描かれていたと思います。
    そして食べるものの描写の美しいこと。人の心のひだに寄り添うように食べることへの描写があっていいなと思いました。

  • 幸田露伴の娘で、しっとりと古風な作品。
    古き良き女性のあり方を見せてくれる。
    好きだったのは、『台所のおと』『雪もち』『食欲』『祝辞』『おきみやげ』

  • 病床にいる料理人の夫が聞く妻が料理をしている台所での音。
    長年の願いでやっとひとり暮らしを始めた筆者の一人の生活の侘しさと気楽さ。『ひとり暮らし』などの短編と随筆集。

    私ならさあっと目にも止らないようなことまでも、柔らかく見つめてそれを書いていくその眼差しがいい。

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プロフィール

幸田 文(1904・9・1~1990・10・31) 小説家・随筆家。東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。1928年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚。幸田家に戻り、父の傍らにあって家を守り、父の最期を看取る。47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。その清新な文体が好評を博し、随筆家として出発。56年『黒い裾』で読売文学賞、57年『流れる』で芸術院賞等を受賞し、小説家としても文壇的地位を得た。70年頃から、奈良法輪寺三重塔の再建のために奔走した。著書は他に『おとうと』『闘』『崩れ』『木』『台所のおと』『きもの』等多数。『幸田文全集 全23巻別巻1』(岩波書店刊)がある。

「2013年 『北愁』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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