眩暈

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 120
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (556ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062060639

感想・レビュー・書評

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  • 先が気になり、内容もそこまで難しくもなかったので、本の厚さほどは読むのが大変ということもなかった。
    気になる点は残ったけど、御手洗潔の頭の良さと無茶苦茶さと優しさを堪能できる一冊で面白かった。

  • 御手洗さんのあまりの辛辣変人ぶりに、石岡くんはよくこんな人と長年ひとつドアの内側で暮らせるなあ、すごいなあと感動します。

  • 読んだのが16年前。島田作品初体験だった。

    賛否両論の作品だろうと、別サイトの書評・感想を覗いてみた。案の定、評価は大きく分かれている。
    否定派の感想にはかなり辛辣なものもある。もし『異邦の騎士』が好きでという方が読んだのなら仕方ないかもしれない。ロジックの構築に目を瞠る見事な本格ミステリを期待して本書を開いたのに、醜悪な闇の世界に導かれてしまったのだから。

    本書は本格ミステリというよりも、過激なサイコ・ホラーであり、猟奇趣味に訴える蠱惑的幻想小説なのである。男女二人の死体をのこぎりで切断する。女の上半身と男の下半身をつなぎ合わせ、両性具有の彫像をつくる。呪文を唱え、両性具有者として甦らせる。動きだし、かすれた声を発する。ついには恐怖に脅え命を失う犠牲者が出る。ほかにも同性愛、環境汚染問題、胎児の先天性異常などの社会問題が刺激的に語られる。
    だから本格ミステリを読もうと思って本書を選んだなら、不快感がこみ上げたり、生理的に受け付けないと感じても無理はない。

    それでもあえて本格ミステリ面を考察するとどうだろう。ミステリとしては腑に落ちない点があり、消化不良を感じさせることは否めない。しかし、これは島田さんがあえてそれを狙って書いたのではないかとも思える。江戸川乱歩や、最近なら恩田陸の小説のようにだ。

    気になった疑問点をいくつか挙げておこう。
    自家用車を所有する者は、汚され傷つけられた車が自分の車なのかと不安になったら、まずナンバー・プレートを見ないだろうか?
    死体の輸送は可能か?
    両性具有者は本当に甦ったのか?
    マンションに住んでいる者が、あのフロアの存在に気付かないわけがないのでは?

    これらの疑問点は、こじつけ気味のちょっと無理のある答えなら出すこともできる。完全否定はできない。疑問を喚起させ、イラつかせる点も島田さんのあざといたくらみなのかもしれない。

    それ以外にも、排水溝の問題や、あそこを殺害現場に選んだことへの疑問を取り上げた書評を別サイトで見つけた。

    まず、排水の件だが、ここは問題ない。なぜなら、御手洗はこの「コリオリ効果」をあくまで理論上のことで、実際に実験してみても、そのような結果が出ない可能性は高いと、強調して言及しているからだ(P.342)。
    つまり「コリオリ効果」は、きっかけなのである。御手洗に仮説をもたらすヒントになったということなのである。なにか引っかかりを感じ「コリオリ効果」を思い出し、その可能性を疑い、仮説を立て、推理を進めた。推理の糸口となったということなのである。
    御手洗の言葉に「自然科学の、前進のありようというのは、まず仮説を立てて、これを立証するために実験を計画しますね。〜中略〜 みんなが大笑いするようなとんでもない仮説をうちたて、一年程度の実験で見事にこれの立証に行き当たる人もいる」(P.133)とある。

    次に犯人があそこを殺害現場に選んだことに対する疑問である。あの部屋を殺害の実行現場に選ぶのはやはりおかしい。何か理由をつけて陶太を人気のないほかの場所に誘い出し、そこで犯行を目撃させればよかったのではないかと思うのは当然である。
    ただし、この点も一応は御手洗が推理を述べている。あくまで推理で真相はわからないが。犯人が浅はかで、単純に計画が杜撰だったから。拳銃を手に入れやすいから。死体を処理しやすいから。 ほかにも犯行に向かう際、目撃される可能性が低くなるから。銃声をはじめとした犯行の際に出る音が気がかりだったから。などがあるだろう。
    犯行が計画通りにいっていたとしたら、その後の犯行はどのように進めたのだろう? そこが非常に気になった。

    以上まとめると、この作品は、サイコ・ホラー、猟奇的蠱惑的幻想小説が大嫌いな方には向かない。謎の論理的解明にカタルシスを求めるミステリ・ファンにもちょっと厳しいかもしれない。島田荘司それも御手洗潔のファンでなければ、受け入れにくい作品だといえるのではないだろうか。

  • 私的には水晶のピラミッドよりは面白かったですが、占星術殺人事件ほどではないかな、って感じです。あの手記から御手洗が色んな隠された事実を引き出す手腕が流石でした。

  • 御手洗シリーズ☆
    とにかく長いんだけど中盤にかけて加速していく展開はさすがだなと思った(・∀・)
    後半からラストへはややまとめきれなかった感も残る。
    とはいえ、石岡と御手洗のコンビは最高だなぁと改めて感じた☆ケンカっぽいくだりとかw
    御手洗ってホントドSだよね(゜-゜)グロい描写があるから苦手な人は注意かなー。

  • <ネタバレ有り>



    ++++++++++++++++++++++++++++++++



    御手洗シリーズ。ハードカバー版で読みました。
    精神異常者と思われる人物の謎の手記を紐解いていく形で物語が進みます。
    キーワードは、奇形児、両性具有、同性愛、でしょうか。
    眩暈というタイトル通り、読んでいてくらくらきました。
    御手洗シリーズは長さの割にはすいすい読めることが多いのですが、これは間に休憩入れながら読まないと途中気分悪くなってぶっ倒れそうになりました。
    御手洗が手記を解読するキーワードで「香織さんの胸がずいぶん小さかったこと」というのが重要だとあげているのですが、それが結局どう重要だったのかが最後までわかりませんでした。途中未亡人を襲った両性具有者は何だったんだ…??読解力が足りないのか、色々謎が残りました。
    野辺の名前が突然出てくるあたりとか、御手洗が最初から解答を知っているのかと思ってしまうくらい、ちょっと強引に感じるところもあったかなぁ。
    文庫版ではかなり加筆されているそうなのでいずれ文庫で読みなおしたい。

    それにしても御手洗の狂人っぷりがもう笑える通り越して医者呼んで来いレベルに進化しているのにびっくりしました。ズールー族の踊りってなんすか?!
    御手洗の薀蓄もどんどん脳科学者めいて小難しくなってきて、そろそろ御手洗石岡コンビ解散の風潮が出てきてる感じでちょっと物悲しさを感じたり。

  • おいおいこんな文章から事件解決するのですか?そして御手洗さんの優しさにいいなと思う。御手洗さんは凄いよ。出だしの文にこんな謎を隠しているなんて島田さんも意地悪だなあ。

  • 御手洗シリーズ。まず装丁が良い!そして内容も、くらくらしそうに幸せでした。まさに眩暈、という感じ。しかしこれは「占星術殺人事件」を読了してからの方がぐっと楽しめます。

  • 「なに、どんな魔法もありません。ごくささいな材料も、決してくずカゴに放り込まないだけです」


    久しぶりの御手洗シリーズ。
    推理小説というよりもサイコホラー小説のようだった。
    御手洗シリーズはどれでも結構気味の悪い描写が多いけど、今まで読んできた中でも上位に入るかもしれない。

    けれど、御手洗の謎解きはいつものごとく鮮やか!
    冒頭の意味のわからない文章が、最後にはちゃんと意味が通るようになるので、読んでいて気持ちよかった。

    日本にはたくさんバディものの推理小説があって、好きでいろいろ読んできたけど
    コナン・ドイルのホームズとワトソンくんに一番近い関係性のバディは御手洗と石岡くんじゃないかと私は思う。
    御手洗の変人ぶりと石岡くんの包容力はすごい。
    けど御手洗は、今回みたいにふいに優しいから憎めない。

    次は『アトポス』!


    2021.8.18 読了

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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