国境の南、太陽の西

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1287
レビュー : 140
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062060813

感想・レビュー・書評

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  • 個人的には、村上春樹の長編作品の中では一番の作品だと思っています。

    ストーリー自体は、ありがちなものの気もします。
    現状に対しては不満を抱えていない「僕(ハジメ)」の前に、「島本さん」という少年期に好きだった女性が現れ、彼女への想いを捨てきれないハジメは、彼女の「側」へ行こうと決意するが、突然島本さんは消えてしまう。ざっくりだとこんな流れです。

    そんなありがちかもしれないストーリーですが、
    本編に登場する印象的なフレーズと、村上作品を支える「文体」、もしくはそこからもたらされる「独自の雰囲気」がもっともマッチした作品だと思います。

    男性は(女性はどうかわかりませんが)、なんとなくみんな「島本さん」のような存在を、どこかでひきずっているというか、秘めているような気がします。
    それが幸か不幸かはともかく、多くの人が抱えるものを、うまく、素敵に、この作品は「代弁」してくれているような気がします。

    都合がよすぎるかもしれませんが、島本さんに対する気持ちも、有紀子に対する気持ちも、全部が本音なんです。男の。

  • 「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて―。

  • 空が永遠に青かったらきっと何も思わないのに

  • 島本さんやイズミのことが最後曖昧で終わっていると思う。どこかで主人公が不幸になれと思ってる自分がいた。若い頃とはいえ、女性を傷つけてるな~って思う。

  • 初めてこの小説を読んだのは私が高校生のときで、当時は正直あまり好みではないと感じました。しかし大人になって再読してみると、意外とおもしろいと感じました。時間が経つと小説への感じ方がこんなにも変わるものなのだと驚きました。

    小説は、まず一人っ子の「始(はじめ)」が、小学校の六年間を通じて出会ったたったひとりの一人っ子、島本さんに異性としての好意を抱くところから始まります。しかし別の中学校に進んだことで、二人は会わなくなってしまいます。

    大人になった始は、島本さんではない女性と家庭を持ち、仕事もうまくやっていました。
    けれど長いあいだ、島本さんに対して“心の中の特別な部分(p23)”をあけていました。小学校卒業から二十年以上経って、島本さんに再会した始は、ぽっかりと欠けている部分を埋めることができるのは彼女だけだと気付きます。

    奥さんと二人の娘のことを愛していると言いながら、島本さんのことを愛している、どこにも行ってほしくない、と言う始は、人を傷付けてしまうことのできる、身勝手で残酷な人間です。始も自分でわかっているのだと思います。それでも“その力に打ち勝てるという自信がどうしても持てない(p287)”不完全なところが、人間らしさなのかもしれません。

    島本さんがいなくなったことで、“僕は君(妻有紀子)と別れたくない(p287)”という始は、やっぱり自分勝手だと思います。傷付けられたはずなのに、それでも“私はあなたのことが好きよ(p290)”と言ってくれる有紀子と出会えた始は、幸せ者だと思います。“明日からもう一度新しい生活を始めたい(p291)”と言う始の言葉を、信じたいです。

  • よくわからない。大人の本。何が言いたいんだろう。セックスの描写がリアル。

  • 2017/02/06 読了

  • あらすじ[編集]
    バブル絶頂期(1988年 - 1989年頃)の東京が主な舞台となっている。小説の前半3分の1ほどは、主人公が会社を辞めバーを開店するまでの半生が描かれている。
    「僕」は一人っ子という育ちに不完全な人間という自覚を持ちながら、成長と共にそれを克服しようとする。義父の出資で開いた「ジャズを流す、上品なバー」(文庫版、95頁)が成功し、二人の子供を授かり、裕福で安定した生活を手にするが、これはなんだか僕の人生じゃないみたいだなと思う。そんなとき、小学校の同級生だった島本さんが店に現れる。
    登場人物[編集]
    始(ハジメ)=僕
    1951年1月4日生まれ。一人っ子。大都市郊外(近畿地方と思われる)の中産階級の住宅地から大学入学を期に東京に移る。教科書出版社を退職後、港区青山にジャズバー「ロビンズ・ネスト」を開業。バーを2軒経営する。
    島本さん
    小学校5年生の終わりごろ、「僕」の学校に転校してきた同級生。一人っ子。生まれてすぐに患った小児麻痺のせいで左脚を軽くひきずっている。「僕」とは別の中学校に進学する。
    有紀子
    「僕」の妻。5歳年下。教科書出版社勤務時代の夏休みの旅行の時に出会う。「僕」との間に二人の娘をもうける。
    有紀子の父
    中堅の建設会社の社長。子供が3人いる(兄、有紀子、妹)。「正規の教育はほとんど受けていなかったけれど、仕事に関してはやり手だった」と「僕」は記している。
    大原イズミ
    「僕」の高校生時代の恋人。父親は日本共産党員の歯科医師で、3人兄弟の長女、妹、弟がいる。「僕」がイズミの従姉と関係をもったため深く傷つき、「僕」と別れる。
    大原イズミの従姉
    京都在住。「僕」の2歳年上。「僕」が高校3年の時に出会い、関係をもつ。

  • なんとなく再読(多分4回目)で初の感想。
    男が浮気ではなく本気になっていく様子が愚かしく悲しく虚しい。運命的な再会を前にした時の無力感やら絶望感もよく表れている。
    建設会社の社長がいかにも土建屋らしく前面に押し出てくる動的な印象に対して、他の登場人物が全て一歩引いた感じで静的だった。それと島本さん、もしかするとこの人は初め(12歳時点ではなく店に現れた時)からこの世に存在してなかったのではないかなと思った。雨の夜がお好きみたいだし。
    これを読んで今度はスプートニクの恋人を再読したくなった。

  • 何というか、他人事とは思えない物語。読み始めて数ページでそう思ったけれど、ずっとその気持ちは続いていて、ラストで最高潮に達し、ラスト一行まで続いた。思い切り感情移入し、先を読む手が震えるような気がした。

    もちろん、主人公と僕は違う人間だし、個々のディテールにおいて同じであることは、当然ながらあり得ない。僕は彼のような人生を送っていない。しかし、彼の持つ人生への違和感と、自分自身への不快感は、ディテールを超えて僕に響いてくる。だから思うのだ。「これは僕自身の物語だ」と。

    没入しながらも、語り手と主人公の間にかすかな揺らぎがあって(語っている「僕」は、いつの「僕」なんだ?)、それが時々違和感となる。まあ、僕の読みが甘いのだろうけど。それもこれも、まるで自分自身の物語として、僕自身が読んでしまったからかもしれない。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ、早稲田大学第一文学部演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーターキャット」を国分寺に開店していた。
1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。
翻訳家としての仕事も高い評価を受け、フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけてきた。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、いまなお作家として成長を続けている。
代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。

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