酔人・田辺茂一伝

  • 講談社 (1994年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (262ページ) / ISBN・EAN: 9784062068512

みんなの感想まとめ

青春や人間関係の複雑さを描いたこの作品は、立川談志と田辺茂一の独特な交流を通じて、魅力的な人間ドラマを展開します。談志が田辺を「ワカラナイ」と表現する一方で、彼の破天荒な性格を受け入れ、深い思慕を抱い...

感想・レビュー・書評

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  • 立川談志が「人生の師」と仰ぐ、紀伊國屋書店創業者の田辺茂一の評伝。
    談志の著書は、そのほとんどを集めている自分ですが、本書は未読でした。
    それもそのはず、絶版になっていて、中古で手に入れたのです。
    田辺といえば、行きつけのバー「美弥」で談志とよく呑んでいたことは、談志の他の著書で知っていました。
    でも、本当に毎晩呑んでいたのですね笑。
    その時の田辺とのエピソードがとても愉快です。
    あの談志が舌を巻くのですから、それだけで田辺という人は凄い人ですね。
    一流企業の社員たちがカウンターにいる田辺を見つけて、
    「田辺先生、いつもお世話になってます」
    「先生お世話になってます」
    と次々とあいさつすれば、田辺は
    「なら返せよ」
    ですって。
    このやり取りについて、談志は
    「いい気持ちだった。成程その通りだ。〝お世話になってる〟ンなら返しゃいい。それだけだ、それまでだ」
    と述べています。
    田辺は、世間ではケチだと評判でしたが、談志が自宅へ行って「そこらにある品物を強奪に近い形で持ってき」ても、嫌な顔はしなかったそうです。
    この逸話を紹介したうえで、談志は持論の「ケチ論」をぶつのですが、これが実に頷けます。
    「〝あいつはケチだ〟といった奴にロクな奴ぁいない。それだけはいえる。相手を〝ケチな野郎だ〟と思ったりいった時に、もうそいつの負け」
    田辺のこんな話も、ぼくは気に入りました。
    「梅田の、大阪駅からホテル阪急へ続く、地下の、プロムナードに近いような感じのところに紀伊国屋が支店を出し」ました。
    本の棚がずらっと並んでいるところを通行人がぞろぞろ歩いていきます。
    そこで、談志は田辺に言いました。
    「ねえ先生、ここに本を並べたって、人がぞろぞろ来て通るだけ、買わないよ、売れないよ、立ち読みだよ。へたすりゃ万引きだよ、これ。ダメだよ、これ、商売にならないよ」
    これに対して田辺はこう言ったそうです。
    「方法はともあれ、読んでくれれば満足だ」
    この了見、シビれますよね。
    田辺は悪性リンパ腫で76年の生涯を閉じます。
    ただ、そこは談志ですから、湿っぽさはありません。
    代わりにこんなエピソードを紹介します。
    主治医の若い先生に田辺が
    「俺が死んだら、俺の心臓を君にやろう」
    と言いました。
    医者は
    「いえ、大丈夫です、私のは丈夫ですから」
    これに田辺は
    「かぁ、質が違わぁ」
    これが田辺の最期の言葉だったそうです。
    その談志も今はいません。
    田辺より1つ若く75歳で亡くなったのでした。
    本書には、田辺だけでなく、芸人や文士、ミュージシャンらと談志との交遊録もあり、私の知らなかったエピソードも満載、読み応えがありました。

  • 昨年鬼籍に入った立川談志による紀伊國屋書店社長、田辺茂一伝。談志は田辺をワカラナイとするが(たしかにワカラナイ)、破天荒な談志を可愛がった風景はとても素敵だ。談志にとっての先輩思慕、青春譚とさて面白い。

  • 171.初.カバスレ、帯付
    2010.12.26.阿倉川BF

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著者プロフィール

落語家、落語立川流創設者。1936年、東京に生まれる。本名、松岡克由。16歳で五代目柳家小さんに入門、前座名「小よし」を経て、18歳で二つ目となり「小ゑん」。27歳で真打ちに昇進し、「五代目立川談志」を襲名する。1971年、参議院議員選挙に出馬し、全国区で当選、1977年まで国会議員をつとめる。1983年、真打ち制度などをめぐって落語協会と対立し、脱会。落語立川流を創設し、家元となる。2011年11月逝去(享年75)。

著書には『現代落語論』(三一新書)、『談志百選』『談志人生全集』全3巻、『立川談志遺言大全集』全14巻(以上、講談社)、『談志絶倒 昭和落語家伝』(大和書房)、『談志 最後の落語論』『談志 最後の根多帳』『立川談志自伝 狂気ありて』(以上、ちくま文庫)、『談志が遺した落語論』『江戸の風』(以上、dZERO)などがある。

「2021年 『談志の日記1953 17歳の青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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