照柿

著者 :
  • 講談社
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感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062069021

感想・レビュー・書評

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  • 合田雄一郎と野田達夫、幼馴染だった二人は異質だが似通った重暗い性格を背負って長じ、とある事故をきっかけに偶然出逢い物語は加速して走り出す! 1994年の作品だけどやはり迫力を持って読者に迫り来る力がありますねぇ。とても面白く読みました♪

  • 合田雄一郎シリーズ二作目
    レディジョーカーから遡って読んでいる。
    達夫の中のドロっとしたものが流れでる時にむけてなんとも言えない重たい空気のまま幼なじみだった雄一郎と達夫を行き来する。
    ラスト、だれしも何かしら罪を背負って生きているのかも。

    だいたいは明るい感じのものを好むのだけれど、この暗さ重たさであるのに読むのをやめられないハマる、さてまだ離婚に至っていない合田を見てみます。

  • 照柿・目次
    第一章 女
    第二章 帰郷
    第三章 転変
    第四章 燃える雨

  • 暑く、熱い人間ドラマ。
    合田も達夫も美保子もかなしい。
    NHKのドラマで三浦友和、野口五郎、田中裕子が演じて、ぴったりだった。特に野口五郎が狂気をうまく表現していて驚いた。もっと注目されてもいい役者だと思った。
    しかし、自分より年下の設定だがこんなに濃く生きられない。。
    高村さんの小説で二番目によく読み返している。

    • chirokuさん
      残念ながらNHKのドラマは見ておりません。見たいです。
      NHKのオンデマンドには収録されていませんでした。
      残念ながらNHKのドラマは見ておりません。見たいです。
      NHKのオンデマンドには収録されていませんでした。
      2014/06/22
  • 文庫と比較のため読了。文庫よりも生々しく勢いのある印象が残った。同じ話を二度立て続けに読んだ所為もあるけど、合田さんの人物像がよりわかった気がする。何故彼が本当に道を外れてしまうことができなかったのか。感情の煮え湯に浸かってじっとしている子供、壁から手だけを時々差し伸べるというのは彼は無意識に行ってきたのかもしれないけれどもそれが彼の性なんだなぁということが繰り返し描かれることによって読者の眼前にも削り出される感覚がした。また他人から注ぎ込まれるものに影響されるから必要以上に他人にシンクロしてしまうことも。断罪も赦しも。暗い森の中で出会ったことは浄化の始まりだったと思いたい。それから祐介は声をかける背中が見えてるけど声をかけられないのだと思うとやっぱり一番深い業を背負ってるように思えてならない。

  • ストーリーが濃厚すぎて、読むのにとんでもない力を使った。なにしろ、この炎天下に読むにはかなりつらい。暑苦しくて、ぎっどぎとに粘ついてて、やっぱり男くさい。読んでいるこっちが精神的におかしくなりそう。
    合田はこんなひとだったっけかーと思いながら読んだのだけど、今回は合田のどうしようもなく目もあてられない部分が明け透けに書かれてあって、じわじわとダメージを受けた。なんというか、合田がこれだけ不安定だから、どうしても読み手である自分まで不安定になってしまう。こんなにもがらがらと崩れ落ちていくものがあるんだなあ。精神がじりじりと焼け切れていくさまが目にありありと浮かんだ。
    合田はどこへ行くんだろうな。もうこれ以上ぼろぼろにならなくてもいいんじゃないのかな。でも合田はずっと引きずり続けちゃうんでしょうね。
    あと森くんもどうなってしまうんだろう。魅力的なキャラクター故に、気になって仕方がない。

    (498P)

  • 読了前に感想を書いてしまったが、一応読後の感想も書いておこうと思う。
    読了前のものは下に残しておく。

    高村薫の描く男がやっぱり好きだ。
    能力はあるのに魅力もあるのにどうしようもない、どこにも行けない、救いのない男達。
    どうしようもなくて堕ちていく男。
    堕ちていく一歩手前の男。
    そういう男を眺めわずかに救いの手を述べようとあがく男。
    みんな好きだ。

    結局、ダメ男が好きなのか。
    それは本の中だけにとどめておきたいと切実に思う。

    ーーーー

    まだ読み終わってないけれど、終盤まできて感じたことがあり、どうしても書き残したかったので。レビューではないけれど。

    ーーー
    人間社会というのは昔の歪な形の石で造られた石垣のようなものかもしれない。
    それぞれの形は違うけれど凹凸をなんとか合わせて組み上がっている石垣のようなもの。
    しかし、同じ形のモノは一つもなくて、中には異質なモノもあるのだろう。
    その異質なモノも突出した異質さでなければ石垣の中で上手く他の石を支えられるのだろうし、組み合わせが良ければ強固な土台になるかもしれない。

    けれど始めはなんとか他の石と混じって石垣となっていた異質なモノも、時間が経つにつれ他の石の重みにつぶされ、変形し、いつか崩れてしまうのかも知れない。
    他の石を押しつぶしてしまうかもしれない。
    周りを巻き込んで、あるいは石垣全体を巻き込んで崩壊するのかも知れない。

    そんなことをふと考えた。
    同時に自分はどれぐらい異質な石だろうかと思った。
    それだけ。
    読了後はまた違うことを感じるかもしれない。
    そのときは、また新たにレビューらしきものを書いてみる。

  • 高村薫では、これが一番の名作と思う。
    ヘンな人の度合いが最も小さい。
    野田達夫や合田雄一郎の暴走への道のりも、素直に納得させられる。
    佐野美保子ですらわからなくもない、ある意味魅力的に映る

  • 久々に長編小説を読みましたよぉ。
    読んだのは"高村薫"の『照柿』です。
    クリックすると元のサイズで表示します
    少し前に本を読みたい欲求が強まっていた時期があり、その時、古本屋の100円コーナーでみつけて購入したものです。

    --------帯コピー--------
    「野田達夫、35歳。17年働き続けてきた平凡な人生に、何が起こったのか。
    達夫と逢引する女、佐野美保子はほんとうに亭主を刺したのか。
    美保子と出会った瞬間、一目惚れの地獄に落ちた刑事合田雄一郎はあてもなく街へさまよい出る。
    照柿の色に染まった、男二人と女一人の魂の炉。」
    -----------------------

    うーーーん、なかなか読む気をそそるコピーですよねぇ・・・

    コピーと"高村薫"のイメージから、てっきりミステリー小説だと思い込んで読み始めたのですが、、、
    事件や謎解きがありミステリーの要素もあるにはあるのですが、"合田雄一郎"と"野田達夫"の心の描写が中心でミステリーではなくヒューマンドラマでしたね。

    それでも、読んでるうちにグイグイっと惹きつけられていって、500ページの内容を2週間程で読み切りました。
    これだけのボリュームの物語を途中で飽きずに、こんなハイペースで読み続けたのって10数年振りなんじゃないかなぁ・・・

    久し振りに読書の醍醐味を味わうことができた作品です。
    "高村薫"の他の小説も読みたくなりました。

  • 照柿という色は人間の心の深奥にある業火
    情念の色

    茹だるように暑い真夏日に起こったある事件を境に、美保子という女を巡って狂い出す男女3人の物語は執拗なまでに人間の情念を描き出し読み終えるのに気力がとても必要だった

    歯車が噛み合う様に交錯し道を外れていく3人
    雄一郎に達夫、美保子

    幼き日に断罪され芽吹いた悪意の残像を抱え
    照柿の炎に包まれ堕ちていく達夫
    別れた元妻の貴代子も一目惚れしたはずの美保子にも本当は愛など持ち得ていなかったと気付いた雄一郎

    私は最終章の辻村と雄一郎の会話と手紙の部分を何度も読み返す

    小学生の時雄一郎の大切にしていた子供のカラスに青い油絵の具を塗り殺してしまった達夫
    その達夫に「未来の人殺し」と断罪した雄一郎
    最後の電話で「俺の好きな色は青なんや…」と言った達夫の心の中にずっとあった想いはなんだったんだろう
    そして達夫に伝えた雄一郎の言葉「達夫!達夫、好きや…」は本人も自覚出来なかった子供の頃からの本心の叫びのようにも思えて辛くなる

    最後、告解の様な手紙は雄一郎自身の罪を背負い続けていく姿を浮き彫りにさせ胸が締めつけられる
    何度読んでも新たに打ちのめされるような想いが込み上げてくる
    すごい小説だった

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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