蒼穹の昴(上)

著者 :
  • 講談社
4.19
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感想 : 233
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062074971

作品紹介・あらすじ

汝は必ずや西太后の財宝をことごとく手中におさむるであろう-。中国清朝末期、貧しい農民の少年・春児は占い師の予言を信じて宦官になろうと決意した。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻は第4章三十七段まで。
    人に勧められ、中国後宮ものだといわれワクワクして読んだ…ら、骨太かったよ。もうちょっとチャラチャラしたやつか、少し時代先くらいのが好きなんだよね。でも、確かに良い本です。西太后って、もっと昔の人だと思ってました。確かに中国、この時代(日清戦争のちょっと前)に科挙で昔の詩とか暗記させて試験してたら、世界に乗り遅れるわ。

  • 宝塚歌劇でのミュージカルを見に行くので、予習のために読みました!
    歴史物には苦手意識があった私ですが、これはすいすい読め、おもしろかった。
    キャラクターが魅力的だからだろうか。
    所々、暴力的だったり、残酷だったりする描写もある。本当に目を背けたくなるが、当時の清国ではそれ以上の事実があったんだろうと思う。

    歴史に疎い私なので、登場人物にフォーカスした感想を書いていきたいと思う。

    春児。
    名前は李春雲。春児というのは「はるぼう」的な、男の子の愛称だろうか。
    10〜13才くらいにして、自らの意思で宦官になった少年。家族思いで、賢く、優しい。また、外見も美しいようだ。
    春児が宝を掴むと占った白太太は、春児の愛らしさ、かわいさゆえに本当のこと(糞拾いをして不遇なまま人生を終える)を言うことがはばかられ、嘘の占いを告げたとのこと。
    西太后も、春児の美しさ、可愛さには参ってしまっているようだし、宦官になってなお、ご婦人キラーっぷり。
    春児は単なる美しいだけの少年ではない。宦官になると決めてから、城を追い出された宦官たちが身を寄せ合って暮らしている集落と出会い、そこで3年の間に、宦官として必要な芸事、料理、掃除、作法などを悉く身につけた。根性あるわ。

    文秀。
    妾の子として、兄の「当て馬」として育てられた地主の次男坊。出始めた時はガキ大将って感じの、良いやつだけど言葉が悪くて危なっかしい人物だったけど、科挙の試験を受けている間に不思議なこと(隣で試験を受けていたおじいさん受験生に親切にしたが、その後その人が死んでしまい、その人の答案を頂くことになった。しかしそれは夢だった様子)を経験し、実母との記憶と言葉(性は善なり)を思い出して、途端に立派な人物になる(当て馬の仮面を脱いだ、ということらしい)。
    その後も順調に出世し、春児の妹玲玲を下女として家に置き、面倒見てあげている。
    見目麗しい出世候補なので、女官からもたいそうモテる。

    玲玲。
    春児の妹。11歳くらい。
    春児が家を出て行ってから、二番目の兄が死に、母に自殺され、天涯孤独になったころに、文秀と再会した。
    文秀に憧れの思いを抱いている様子で、文秀の妻になる予定の女性に対して嫉妬している。
    文秀の仲間からは「文秀を好きになって嫉妬するなんて分不相応」とからかわれるが、人間は平等だと説いているあなたが「分」を語るのはおかしい、と反論できる幼さゆえの強さ、真っ直ぐさがある。
    こういうところは、春児の妹だなぁという感じ。かわいそうなだけの女の子ではない、良いキャラ。

    西太后。
    実在の人物ながら、一番よく分からない人。
    夫の先祖にあたる乾隆帝の霊を「おじいちゃん、私つらいよ」的に話しかける少女のような一面もあり、宦官が死ぬまで棒叩きをするよう命じるわりに、それはそれでツラいと思っている様子。
    私なんぞからすれば「それなら棒叩きを止めればいいのに」と思うけど、やめられないのは、こうすることでしか力の維持や場内の宦官たちの秩序を保てないということなんだろうか。
    光緒帝をたまらなく愛しているが、素直に愛することはできておらず、光緒帝のことも毎日叩いている。
    傾きつつある清国を、愛する光緒帝に託すことを躊躇っているが(光緒帝に苦労させることになるから)本当は引退したい気持ちもあるっぽい。

    光緒帝。
    誠に清らかな帝。わずか3歳で即位して、作中では20歳くらいになった。
    西太后に叩かれても罵られても、自分の孝行が足りないからだと自責し、西太后を責めない。孔子の教えでは、孝行するのは当然らしい。
    早死にした西太后の息子(色欲で脳毒にかかって死んだ愚息)の代わりに孝行してあげたいと思っており、自分がそうなれないから西太后を怒らせてしまうのだ、と思っている。彼の清らかさや実直さが、余計に西太后を苦しめている気がする。

    李鴻章。
    天津の将軍。60歳くらい。西太后やその側近たちも、帝派の者たちも、この人のことを恐れている。
    その気になれば清国を手に入れるだけの力が、この将軍にはあるらしい。
    とても忙しい中にあっても、面談を求める人とは必ず会って話すなど、律儀な男。
    王逸(文秀の同期)は、上巻の後編で李鴻章の片腕となっていた。

    順桂。
    文秀の同期。満州族のお坊ちゃんで、高貴な印象。
    冷静な話し方をするが西太后に対しては過激な考えを持っている(消すしかない、とか言う)。そのギャップがこわい。
    彼の思想のバックグラウンドは、満州族として幼い時から聞かされていた話によるもののようだ。
    中国という国は、言葉も文化も少しずつ違う国、地域の集まりなのだということ、そのような歴史による国全体の歪みについて、彼の存在が示している気がする。

    上巻は、光緒帝の実父が死ぬところまでだった。
    個人的な盛り上がりは、文秀の科挙受験と合格、春児が宦官として西太后のお気に入りになるところ。
    クライマックスかと思っていた2人の再会は結構あっさりしたものだった。当時、宦官と科挙役人は個人的交流を禁じられていて、発覚したら八つ裂きに殺されるほどのことだったらしい。
    再開時の2人の思いは…と考えると、春児よりも文秀の方が圧倒的に驚いたことと思う。文秀は、春児はとっくに死んだと思っていただろうから。
    2人で見上げた昴の星。言葉はいらなかったのかもしれない。

    ところで、太堂にあるとされていたお宝は、ガラス玉だったということだが、偽物とすり替えられてしまったのか(本物はどこかにある?)、そもそも宝は幻だったのか。
    下巻ではそのあたりも明かされていくのだろうか。
    そのあたりは歴史ミステリー、歴史ロマンである。

  • 清末の動乱期を皇帝に仕える気鋭の官僚、西太后のお気に入りで後宮を差配する大物宦官、それらを外から眺める新聞記事の3人を通じて描き出した大作。日中共同でのドラマ化もされています。

    僕は小説は読み返さないので、一度読むと手放してしまいますが、これは高校時代に初めて読んで以来、都合3度買い直して数年ごとに読んでおります。清末の動乱をメインストーリーに、清初の乾隆帝時代のエピソードが語られたり入り組んだ構成が中国史好きにはたまらぬ出来です。

    これともう一つの歴史小説は座右に置いていますが、入試世界史の難問奇問で中国学に定評のある京都の某私大が「満洲八旗の旗の色を答えよ(記述式)」と問うたエピソードにぞわぞわする人ならこれもハマります。


    さて、本書より。

    主役のひとり、宦官の李春雲について。
    その人格ゆえ周囲の宦官たちから圧倒的な支持を集める宦官ナンバースリーの李春雲は、宦官トップの大総管李蓮英の意に背いて筋を通す。

    怒り心頭の李蓮英は部下に李春雲を罰するよう命じるが、春雲を慕う下っ端宦官たちは自らも罰せられかねぬ危険を犯して李蓮英に直言する。

    ○いやいや、あんたは悪者だよ。そっちの崔老爺も悪い奴だよ。わしはあんたの出世をかまどの陰からずっと見てきたけど、ちっとも偉かねえもの。まいないは取る、暴力はふるう、上にはこびへつらって下の者にはいばり散らす。そうやって何が何でも出世しようってのなら、誰でも大総管になってら。だが、この春児はシャオフチーのころからずっと、そんなことはしたことねえもの。見ろよ、李老爺。
    見ろよ。こいつは老祖宗に引き立てられたばかりじゃなく、みんなに推されて出世した初めての大監だ」

  • 浅田次郎の壮大なる中国伝記です。
    病院に入院中に職場の先輩から貰いました。
    かなりボリュームもありましたが、一気に読めて、入院中も退屈しませんでした。
    ぜひご一読を(上下巻あります)。

  • おもろい。とまらん。
    中国史は苦手で全然知らんし、同じ人物が何個も違う名前で呼ばれてたりでちょっと戸惑ったけど、おもろい。とまらん。
    どこにどう着地すんのか見えてないから、少し不安はあるけれど、、、
    たれかある、はよう、朕は早う下巻を読みたい。

  • 噂にたがわぬ良い本です。
    中国の歴史モノなので、名前とか役職とかきっと読みづらいんだろうなと思っていたのですがあまり気になりませんでした。

    複数の主人公がいて、いろんな感じ方ができる。
    春児の行動力、いじらしさについつい肩入れし、その妹リンリンの今後がとても気になり、少爺=史了=文秀の運命や王逸たちの運命も。下巻が楽しみです。

    歴史上では悪評高い西太后の描かれ方も面白いです。
    春児と黒牡丹との別れのシーンなどは本当に胸が熱くなりました。

  • これだけ「想像力」を刺激される作品は
    そうそう ありませんね
    初めの数ページで
    こんなふうに 思わせられる作品は
    そう ありませんね

    面白い!

  • 大好きな浅田次郎の作品の中でも最も壮大な大河小説。

    時代背景の緻密な描写と同時に創作される怒濤の物語。
    小説って面白い、素晴らしい。
    と思わせてくれる珠玉の作品だと思う。

  • 欧米列強に勢力分割され近代化を迫られていた末期の清を舞台にした物語で、主人公の立身出世に絡めて交錯する、さまざまな人物の心情を見事に描いたすげえ本だと思いました。

    史実に忠実に描いてある(と思われる)歴史モノなので、ハナシは淡々と進み、「ココが最大の見せ場」というトコロがないのですが、それは全編がクライマックスというカンジなので、惹きこまれたまま最後までイッキ読みしてしまいました。
    また、私がこれまで読んだ作品のなかでは圧倒的に登場人物の数が多いのに、ひとりひとりが生き生きと描かれていて、人物の多さにまったく煩わしさを覚えなかったのと、ともすれば尻切れとんぼと言われてしまいそうなラストシーンがまったく気にならないホドの壮大なストーリー展開は圧巻でした。

    なんか作者のヒトが、「コレを書くために作家になった。」と言っているそうですが、その思いが文面から伝わってくるような本。
    すげえ。

    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1708.html

  • 昴の星を持つと予言された春児は、宦官として後宮に仕官し、西大后に仕える。
    激動の時代、守旧派と改革派の対立を描く

    【長崎大学】ペンネーム:眠子さん

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著者プロフィール

1951年東京都生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞を受賞。以降、一九九七年『鉄道員』で直木賞、二〇〇〇年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、二〇〇六年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、二〇〇八年『中原の虹』で吉川英治文学賞、二〇一〇年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、二〇一六年『帰郷』で大佛次郎賞を、それぞれ受賞。二〇一五年紫綬褒章受章、二〇一九年菊池寛賞受賞。他の著書に『蒼穹の昴』『天国までの百マイル』『大名倒産』『流人道中記』『おもかげ』など多数。

「2021年 『日輪の遺産 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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