恢復する家族

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本棚登録 : 90
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062075107

作品紹介・あらすじ

光さんと共に生きる。父のやさしい文と母のあたたかい画で綴る魂の記録。人の心を癒し、恢復させる力はどこにあるのか。ノーベル賞受賞後初の、感動的長篇エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • (2015.04.08読了)(2006.04.02購入)
    初出は日本臓器製薬の季刊誌「SAWARABI」1990年第二号~1995年第二十一号です。
    5年間20回分が収録されています。
    大江さんの長男光さんは、脳に障害を持ち脳手術で命は取り留めたのですが、知的障害者となりました。音に興味を持つので、音楽を教えたら、自分で作曲するようになりCDも出しています。
    このエッセイは、障害者の子供を持っている父親として講演を依頼されて話したり、光さんの活動に付き添ったり、送り迎えをしたり、光さんについて考えたりしていることを綴ったものです。
    挿絵は、大江健三郎さんの妻のゆかりさんの描いたものです。家族や花などを描いたものがカラーで掲載されています。花の絵は見事です。

    【目次】
    つらいかた
    謹直なユーモア
    ジャスト・ミート
    同情トイフコト
    受容する
    ああ、いま、わが故里には燈火が…
    その人らしさ
    仕方がない、やろう!
    アイデンティティーの裂け目
    どのかぞくもおんなじです
    異人
    吟味された言葉
    障害者の十年
    優情 その1
    優情 その2
    ザルツブルグ・ウィーンの旅 その1
    ザルツブルグ・ウィーンの旅 その2
    声の表情
    泣き叫ぶ魂
    すべてダメでし(す)た
    あとがき  大江ゆかり

    ●障害の受容(45頁)
    障害をこうむった人間が、心理的にも苦しい過程の後、どのようにしてそのような自分のあり方を積極的に引き受けて、障害ともども家庭と社会のなかでの役割を果しうるようになるか? 障害の受容という、その完成の地点についにいたるまでのリハビリテイションに、文学の考え方と共通し、かつそれをリアリスチックに先導するものを見出す気がした。
    ●父親の役割(83頁)
    僕は会長とか理事長とかの、ある集団において大きい父親の役割をおしつけられそうになった場合、ほとんど恐慌状態におちいって、なにがなんでもそれを逃れようとする。さらには、儀式において世間的な約束事のはっきり定まってる役割を真面目に果たす、ということがどうしてもうまくできない。
    僕には父親を早く喪ったことが尾を引いて、アイデンティティーを確立した大人、というところにうまくおさまりきれない欠陥がある。
    ●言葉(116頁)
    日常的な会話の言葉は、あいまいさ、不透明さにみちていて、うまく伝達されぬ場合がむしろ多いのである。話し手と聞き手との間に、理解を支えるにたる人間関係があらかじめ成立している必要もある。
    ●世界に住む(165頁)
    光にとって、この世界に最もしっくりと住みついている感覚があるのは、音楽を作っているときであり、逆にいえば、その思いの表現こそが、彼の音楽ではないか、ということである。僕自身にしても、今自分は世界にこのように住みついている、という根本的な感情を表現するためにこそ、小説を書いてきたのではないか?
    ●悪文(171頁)
    父親である僕の、小説あるいはエッセイの文章は、読みづらいと―もっと率直には、悪文だと―よく言われたものだ。

    ☆関連図書(既読)
    「個人的な体験」大江健三郎著、新潮文庫、1981.02.25
    「新しい人よ眼ざめよ」大江健三郎著、講談社文庫、1986.06.15
    「静かな生活」大江健三郎著、講談社、1990.10.25
    「あいまいな日本の私」大江健三郎著、岩波新書、1995.01.31
    ☆関連CD
    「大江光の音楽」日本コロムビア、1992/10/21
    「大江光ふたたび」日本コロムビア、1994/9/10
    「静かな生活 オリジナル・サウンドトラック」日本コロムビア、1995/10/21
    (2015年4月13日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    光さんと共に生きる。父のやさしい文と母のあたたかい画で綴る魂の記録。人の心を癒し、恢復させる力はどこにあるのか。ノーベル賞受賞後初の、感動的長篇エッセイ。

  • 『習慣とはある人間のその人らしさということにはっきりと結ぶことができる。』

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:914.6||O
    資料ID:59602212

  • 初出「SAWARABI(早蕨)」、1990年第二号~1995年第二十一号

  • 大江健三郎の古い小説が苦手で、あんまり近づいてなかったのだけど、これは本当によかった☆たくさん教えられ考えた。この世界にもっと入ってみようと思いました。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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