孟嘗君(5)

著者 :
  • 講談社
3.68
  • (11)
  • (8)
  • (18)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 107
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062078962

作品紹介・あらすじ

いま函谷関の暁闇を破る者は。人間の大いなる心の成長を風韻高く描ききった文字通り最高の名品。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 孟嘗君に関する有名な故事「鶏鳴狗盗」が出てくるのは最後の章。また、有名な食客・馮諼(馮驩)が出てくるのはその章の中でも最終盤(しかも、彼の存在をある秘密に繋げている)
    というぐらい、実態が分かりづらい人物ではあるが、ここまでの長編として描く事が出来る著者は凄いの一言。
    白圭(風洪)があまりにも魅力的過ぎるので、主人公交代後はどうなる事か?と思ったが、最後まで面白かった。勝つにしてもほどほどに勝つ、中庸の姿勢で荒々しい時代を乗り越えてゆく孟嘗君。

  • (再読) 後半はエピソードが詰め込まれているような感じ。 登場人物もどうもよくわからなくなってしまっているのではないか。

  • 第五巻
    最後は何か歴史解説書の感じ
    食客の活躍による孟嘗君か?
    最後は洛巴の息子?が危機を救うのか
    白圭の最後は本当に安らか!

  • 利よりも仁と義を重んじる生き方に目覚めさせてもらえた。

  • 打ち切りマンガの如き駆け足での幕。中盤にかけての厚みとの差が酷い巻。宮城谷氏は飽き性なのだろうか。

  • 宮城谷さんの小説の中では最初に読んで、今でも一番好きな小説。
    戦争や政略、友情や恋愛といったあらゆるドラマを内包し格調高い文体で歴史の一片をつづる壮大な物語。

  • 「人を喜ばせたい。それがわしの喜びである」
    と田文はいうであろう。
    「身よりの者が、ここから遠くないところに住んでおりますと、客が退席したときは、贈り物
    はすでに先方に届いております」
    柏左は自信ありげにいった。
    「客は喜びましょうね」
    「喜ぶというより感激するようです。主のためには、いつ死んでもよい、という客さえおりま
    した」
    洛芭は急にめがしらが熱くなった。いままでにいちども人にいたわられたことのない人も、こ
    の世に多くいる。そのおもいがけない贈り物が、それらの人にもたらすものは、はかりしれな
    い。



    白圭の投機は神異であるとさえいわれる。白圭は他人から商売の要諦をずいぶんきかれたこ
    とがあるらしく、それについてかれは、
    「臨機応変の知力に欠け、決断する勇気が足りず、なにをとりなにを与えるべきかという仁の
    心がなく、守るべきところを守る強さがない者が、わたしの秘訣を学ぼうとしても、け
    っして教えない」
    と、いっている。


    孫ぴんが亡くなった。

    「文どの、遺言がございました」
    田文はさっと席をおりた。
    「釣台はこの世にひとつしかないが、それはそこにはない」

    「孫子が文どのに遺したことばをきかせてもらった」
    「釣台ですね」
    「その釣台は、伝説のかなたにある。夏王啓が天下の諸侯を招き、もてなした台でもある。ご
    存知であろう」
    「はい」
    「すなわち孫子は、その台にすわるのが、文どのであるといった。ただし、文どのは帝でも王
    でもない。小邑の主が台上の首座にすわれば、僭越のそしりをまぬかれね」
    「おっしゃるとおりです」
    「ゆえに、かたちのない台が必要となる」
    田文は口をつぐんだ。
    「その台は、各国の宮殿ではなく、天下万民の心のなかにある台ということです」
    「さて…」
    「べつのことばでいえば、中華そのものが、台です。その台は巨大すぎて、人の目にうつらな
    い。こころでしかみえない台です」


    「人を助ければ、おのれが助かる。人の運命は複雑さをともなっているようにみえるが、
    この年になってふりかえってみると、単純なものだ。平凡であるとさえいえる」
    「そうでしょうか」
    「そうさ。その平凡を全身でうけいれる者こそ非凡といえようが、まず、そんな者はいない。
    したがって平凡と非凡とを、目にみえるかたちとして峻別するものがある」
    「それはなんですか?」
    「勇気だ。勇気こそ、人をわける」


    「人を愛すれば勇気が湧く。人の向こうにあるおのれを愛することを仁という。人のこちら
    にあるおのれを愛することは仁とはいわず、そこには勇気も生じない」
    白圭は馬車に乗った。
    「猛嘗君、釣台はそこにはない」

  • 2008/7 再読

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮城谷昌光の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×