犬と鬼-知られざる日本の肖像-

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062081016

感想・レビュー・書評

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  • 数年前に読んで感銘を受けた本を読み直した。この本の影響かどうかはわからないけど、現在の状況を見ると書かれている内容が良い方向に少し向かっている。ほんのささやかかもしれないけれど変化がある。
     今の私に何ができるのかわからないが、何かをしなければいけないことだけは間違いない。それは10年後、20年後のこの国の人達の為に。皆が半歩歩めば大きな一歩に近づく筈だ。
     このような事態を招くのは人間の欲だ。それ自体は生物として当然のことかもしれない。問題は、どこで良しとするか。まさしく「足るを知る」ことだ。

  • 日本に住み日本を愛するが故に、今の日本をこころから案じて書かれた渾身の一冊と言っていいかも。

    アメリカ人である著者:アレックス・カーが外から見える日本を日本人には書けない所まで指摘して書き上げた、日本への警告と受け止めました。

    本当に今のままでは、本来の日本文化や自然は壊し、日本経済を破綻に追い込むコンクリートの構造物や地方の隅々に立て続けられる負の遺産と言っていい箱物の施設によって地方もどんどん疲弊していく様を彼はこころから案じて書いている。

    国土を土建により壊し(整備しているという受取方もあるが)海や川をコンクリートで固め、環境は壊し、日本の文化さえも教育と共に均一化され右にならえと言えば全て右にならえという人間を作り、借金はどんどん膨らんで行っている。

    結局この国は官僚が支配して箱物や土建に使うお金はジャブジャブ垂れ流し、その使い道はその目的以外には使えないため負の遺産として増え続け、それを維持するために地方までも負債を抱え続けて行っている。

    そして、ありとあらゆる地方の果てまで使われる事も無い人も集まらないモニュメントが出来上がり、日本自体がおかしな国に邁進していると言う事を著者は警告しています。

    確かに、日本はおかしな方向に進んでいるなと、この本を読んで行くに連れつくづく思わされました。

    題名の「犬と鬼」は中国の故事で画家に犬と鬼はどちらが描きやすいかと聞いたら鬼の方が描きやすく犬は難しいと答えたという所から名付けたそうで、今の日本の官僚が描くモニュメントや箱物土建工事といった身近にない壮大なプロジェクトは鬼であり、空気のようにいつもそばにある日々の生活の保障とか町並みの整備とか本来生活に直結している易しい政策が意外と描きにくい犬だと著者は言っているようです。

    官僚にやりたい放題鬼を描かせている日本がこれからどうなるのか!?15年以上前に書かれた本ですが、今の日本がどこまでそのまま転げ落ちて鬼ばかりになっているのか?この本を読んで思い浮かべてみるといいかもしれません。

  • 内容(「MARC」データベースより)
    奇妙なモニュメントが都市の美観を破壊し、公共事業があらゆる自然を人口に変える。日本人にすら魅力的でなくなった日本を造ったのは誰か? 「美しき日本の残像」で新潮学芸賞を受賞した著者による痛烈な日本論。

  • 1度決めたことは、何があっても後戻りできない。一番の成功者は、たとえその成功を後押しした環境や状況が変化しても、その成功体験を捨てられず、次代における敗者となる。劇的な破滅はないだろうが、ぬるま湯の中で、静かにゆでガエルになるのを待つ状況。「実」から目をそらし続け、本質から逃れようともがく国。
    日本とは本当に、そんなに救いようのない国なのか。実感として、この社会に対する生きにくさや、文化や歴史を忘れた風景、全てを子ども扱いし、平等に情けなく扱いたがる現代の空気に絶望感を感じていた時に、叔父から借りた本。
    自分一人でこの状況を変えることなどできるわけもないが、せめて自分と周りの人たちには良い影響を与え、くだらない不幸と不満の牽制の輪から逃れることはできるのではないか?そのためには今何ができるのか?
    世界を見ること。語学を学び、日本以外の情報を得ること。社会で少しでも上に行き、負の遺産を潰すこと。とりあえず他国よりマシ、と信じられているものの真実を探り、ただすべきをただしていく一助となること。
    著者の視点はあまりにネガティブにすぎるところもあるかもしれないが、冷静に耳を傾けるべき点は多い。
    もちろん、他国も日本とは違う多くの問題を抱えてはいるだろうし、その解決に苦心しているのも同じだろうと思う。だとすると、日本人としてできることは、日本としてのオリジナルの未来を見つけること。
    あまりに色々考えさせてくれる本なので、自分で買って、再読したいと感じた。

  • うなった。

  • 経済だけでなく、文化の面からも日本を論じた名著。海外からの視点、というところにさらに意味があります。日本人として「名著」と書いて情けなくなってしまいますが、本書で展開される皮肉は今以て真正面から受け止めるべきと考えます。フェイクな文化、まがい物の観光施設に疑問を抱く目と、思考、明確な意思を持つ必要があると感じました。

  • 厳しく、現実を突きつけられる。
    日本的なる極端が、環境破壊・公共事業の加速を、欧米のそれよりも悲惨なものにしたのか。

    ○海外からの目を入れる、そのための情報公開

    ○「実」がないために「鬼」のモニュメントをつくってしまう。「実」は何か、考えなければならない。

  • 著者のアレックス・カーが若い頃に日本を旅し記した美しき日本の残像も外国人青年であった視点から物凄い洞察と日本に対する愛情で満たされていたが、成熟した後に書かれた本書は前書を上回る素晴らしい内容であった。
    外国人による日本論だが、ここまで日本社会を理解し現代日本について解析された内容は他にない。よくありがちな知ったかぶりの外国人による主観で日本社会を揶揄した要素は一切なく、日本人が喪失した心の在り方や現代日本が直面する諸問題を洗いざらいに告発し、尚且つ日本人がそこに至ってしまう精神構造の発見は素晴らしい成果であった。
    完成までに六年の歳月をついやした内容は圧倒的でした。

  • 日本社会の在り方に関心ある人にはとても面白い。読む価値大いにあり。

  • 広範な範囲を対象として、日本の問題を論じた秀作。

著者プロフィール

1952年米国メリーランド生まれ。1964年に初来日し、1966年まで父の仕事の関係で横浜の米軍基地に住む。1974年エール大学日本学部卒業。日本学を専攻、学士号(最優秀)取得。1972~73年まで慶應義塾大学国際センターでロータリー奨学生として日本語研修。1974~77年、英国オックスフォード大学ベイリオル・カレッジでローズ奨学生として中国学を専攻。学士号、修士号を取得。著書に、『美しき日本の残像』(新潮社学芸賞)、『ニッポン景観論』などがある。日本の魅力を広く知らしめる活動を展開中。

「2017年 『犬と鬼 知られざる日本の肖像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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