川瀬敏郎 私の花

著者 :
  • 講談社
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感想 : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062082761

作品紹介・あらすじ

花人川瀬敏郎の過去、現在、未来が濃密に息づく究極の花世界。花のいけ方から花合わせ、花留め法まで、川瀬敏郎の花のノウハウもぎっしり収録。

感想・レビュー・書評

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  • 川瀬さんの花は「止まっている」。時間を凍結させたような、そういう印象を抱く。

    川瀬さんのような、言と技が一致する、正統の求道者が、今同じ時代にいる。このことを知れただけでも、自分にとっては大きい。小さい世界を見て満足していたらダメだ。今の僕がいるのは井の中だ。もっと日本古来のもの、古典に触れて、その理解を深め、自分の世界を深めていかないと、ただの中途に終わってしまう。



    ●以下引用

    美を求めれば即ち美を得ず
    美を求めざれば即ち美なり(白隠)

    その花が日本の自然のなかに咲いているある種の花の場合、無心にいけ終わった後、私は、なにかこう自然との約束を果たしたような、安らかな気持ちになる。

    日本の自然のなかに自生している花というのは、いけて生かされることを通じて初めて本当の「花」になる。

    日本人は、自然というもののなかに自分たちの魂を、長い年月植え付けていきました。それゆえに、日本の国土に咲いている花というものは、人間のさまざまな心の形を持って咲き続けてきました。

    それらの自然、花は、歌に詠まれあるいは花としていけられることによって、その瞬間を切り取られます。そこに心が浮かび上がったり、自然が、花が甦る、その行為を永遠に繰り返すことによって、私たちは、自然と人間の、密度の濃い関係を築き上げてきたのです

    花にはさまざまな人間の記憶がインプットされていて、ごく自然にその花の記憶の糸をたぐり、その記憶の瞬間を切り取って、いけるという方法論を通じて、より明確な形に仕上がっていく

    自然というもののなかに心を置いてきた民族ゆえに、その心を訪ねる旅が可能であった

    雨や雪に打たれ、その重みに耐えた一本の花の中に人間の悲しみを見つけ、欠けた葉っぱや虫食い葉に夢破れた人生を見たり、、、

    外国のポエムというものが、プロフェッショナルな詩人によって詠われ続け、その歴史を完成されていくものなのに対して、日本の短歌も、茶も、そして花も、すべてプロとアマチュアの差をもたずに続いてきました

    弘法大師も、あるいは芭蕉も言っていますが、「古人の跡を学ばず、その成したるところを学べ」

    私たちは、花というものに、自分の生きる様を映し出していくことができた

    「いける」ということは、個人のパーソナリティーに根ざしたものだということ。なおかつそこに、全ての伝統が集約されていると人々に思わせる「何か」が生まれた時にこそ、花は、日本の運名詩になる

    私自身は、個で生きるという意味では、今でもヨーロッパ的な資質を、より強くもっている人間だと思っています

    自分の心のなかに刻み込まれたはずのヨーロッパという記憶を確かめたくてヨーロッパにきたはずなのに、最後はやはりヨーロッパという記憶が自分のなかにはない。

    形になることのできない心を、私は信用しない

    言葉でどれだけのことを話しても、肝心なことを何一つ語れない。私にとって肝心なことは、たとえば一本の花。一本の花がさっと入っているだけでも、肝心なことが言えてしまう

    人間というものは誰しも、自分自身のことはわからないものです。けれども、そのわかっていない自分が、ある人にぶつかったり、ある物にぶつかったりするなかから、「ああ自分というのはこういう人間だったのか」とか、「こんなこと、本当は好みでなかったはずなのに、案代いざとなると自分はこういうものに手を出すのか、などと自分自身を発見して行く生き物ではないでしょうか

    内容が深かろうが浅かろうが、結局、覚悟があるかどうか、命をかけているかどうかが問題

    日本の芸道は、百点満点の九十一点目からの道です。九十点までは、じつは川瀬敏郎であろうが誰であろうが、大した変わりはない。

    もちろん私のいいなぁは私の「分」に応じた範囲に限られ、値段で言えば高の知れたものが多い

    老い木に初花の咲かんがごとく

    花をいけるというのは、目にみえるありのままの花ではなく、目に見えないあるべき花を、目に見える形にすることです
    ➡まさに「詩」だ。同じことをしているんだ。「原型」というのは、目には見えない。そこを表象させるのが、仕事。

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