狐罠

著者 :
  • 講談社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062086264

感想・レビュー・書評

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  • 蓮杖那智を1冊読んで、こちらに寄り道。
    古美術業界、なかなか闇が深いですね。
    とっても面白いけど、とっても怖い。
    本当にこんな事をしてまで贋作を作っているのでしょうか?
    宇佐見陶子、凶笑面の何処に出てましたっけ?

  • 蓮杖那智シリーズに登場するので読んでみました。
    骨董、古美術の世界は独特のものがあるのだろう、とは以前から思っていましたが予想を遥かに上回る魑魅魍魎の跋扈する世界でした。
    プロがプロに贋作を掴ませられる『目利き殺し』をされた主人公が相手に同じ事を仕掛ける、と言う内容ですがそこに相手古美術商の従業員殺害事件が絡み出し、さらには表に出せない関係を結んでいた国立博物館主任研究員の殺害事件まで起こる波乱の展開。
    贋作の有名な事件や漆器の製造方法、贋作をいかに本物のようにするか、と言った色々な知識も得られて面白かったです。

    主人公陶子とDが食事をするビア・バーって香菜里屋ですよね。他作品の人物も登場する遊び心も楽しかったです。

  • 蓮杖那智シリーズの北森鴻作品。
    レビューを見ると、主人公の旗師が蓮杖那智シリーズに出てきたとあるが、覚えていない。

  • 古美術業界の小説。
    全く、知識のない世界の話でしたが、読んでいてわかりやすく、緊迫感もあり、非常に面白かった。
    一見詐欺ともいえる贋作という世界の奥深さ、そして、それを見破ろうとする者と見破られまいとする者の攻防。
    贋作を作る者の狂気にもにた徹底したこだわりに、読んでいて凄みを感じた。

  • 旗師「冬狐堂」・宇佐見陶子シリーズの第一作目。

    店を持たず古美術の仲介などをする「旗師」宇佐見陶子は、古墳からの発掘物といわれ、唐様切子紺碧碗を銀座の骨董商「橘薫堂」店主から購入した。この値段ならば安いぐらいの良物と思った。…思っていた。「目利き殺し」を仕掛けられニセモノをつかまされたのだと、自室で確認して初めて分かったのだ。
    しかし古美術の世界では、表立って売り手を追求することはできない。未熟だとしかいいようがないのだ。それでも屈辱は残る陶子。そんな彼女のもとに保険調査員・鄭 富健が現われ、目利き殺しを返すように巧妙に唆す。
    陶子はかつての夫で大学教授・プロフェッサー”D”に、潮見老人へのつなぎを頼み、老人に贋作を依頼した。たとえある決意を秘めていようとも、贋作作りは忌むべきもの。その”闇”に彼女は自ら飛び込んだのだ。
    時をほぼ同じくして、橘薫堂の有能営業員・田倉俊子がスーツケースに入った腐乱死体で発見されていた。所持品のノートに陶子の名前があったことから、根岸と四阿という2人の刑事が訪問。陶子本人には田倉との接点はなかったのだが、橘薫堂との因縁から警察から目をつけられ、現在の事件と30年も前の事件の裏側とが絡み合う中、陶子は精神的にも身体的にも窮地に陥っていく。

    骨董業界を舞台にした長編ミステリです。
    古美術界というのはどうにも一般人には馴染みがなくて、特殊な感じがしますよね。実際、古美術なんてテレビで「なん○も鑑定団」見るくらいしか接点がないゼ私(笑)
    それでも大丈夫。ちゃんと分かるように読ませます北森氏は。業界のシステムと、そして業界の闇を。
    ただし、それはあくまでも”一部”でしかありません。私たち読者は垣間見るだけなのです。すべて知った時は…陶子たち骨董商のように、2度と抜け出せないところまで入ってしまうのかもしれませんから。
    ミステリとしては非常に良質です。てっきりケリが付いたものと思ってたら、ラストでどんでん返しがありましたからね!てっきり無関係だと思ってたのに…!みたいな。
    でも、これはハードボイルドとして読んでも構わない作品なのではないかと思います。陶子が追い詰められ、だんだんと凄みが増していく様はワクワクしますよ。事件を、陰謀の中を生き抜いた彼女が、次作でまた闇の中をどう走っていくのか。期待大!ですね。

    ところで北森作品では、別シリーズの人物がこっそり登場することが多いのも特徴ですが。
    いましたね今回も!某ビア・バーの店主がvv 描写自体は少なかったですが嬉しいなぁv

  • 一度嵌まり込んだ者は脱け出せない、骨董の世界の奥深さ。泥々とした駆引きと計算が行き交う怪しさ、危うさ。殺人事件そのものより、そんな骨董の世界に棲みつく人々の思惑の片鱗が緻密に散りばめられていて、専門用語に挫けることなく読み進められました。長かった、が、面白かった。
    …とりあえず香菜里屋に行って、美味しい酒が飲みたい。

  • 骨董業界を舞台にした作品でした。推理小説ということで、一応殺人事件も発生しますが、それよりも業界の底知れなさの方に怖さや面白さを感じました。

  • 香菜里屋シリーズの最後に出てきた宇佐美陶子が、
    どんな女性なのかが気になり、読み始めた。

    美術界の裏側が描かれているのだが、
    その前に美術界そのものの説明に難苦した。
    専門用語がいっぱいで読み進めない。

    殺人事件が起こり、
    その犯人探しが始まって推理小説らしくなり、
    やっとのめりこめるようになった。

    そうなるとおもしろい。

    最後の最後で、
    今までの伏線の意味がわかる。
    「ああ、そうだったのか」と納得できるのがいい。

    最後に納得のできない推理小説ほど、
    おもしろくないものはない。

    さて次はどんな推理をみせてくれるのか…。

  • 自分の鑑定眼だけを頼りに店舗を持たない骨董商「旗師」。「冬狐堂」の名で活躍する若き旗師、宇佐見陶子は同業の橘董堂に「目利き殺し」を仕掛けられる。所謂、贋作を買わされたのだ。
    忸怩たる思いを噛締めていた陶子のもとに保険会社の美術監査部員の鄭富健が訪れ、陶子は橘董堂に目利き殺しをし返すことを決意する。

    騙し騙される美術骨董品の世界。その裏側を丁寧に描写しながら、陶子の視点で描かれる贋作作りや舞台作りの鬼気迫る迫力と緊迫感。そんな最中に起こる橘董堂絡みの殺人事件に巻き込まれていく様は見事だ。
    練られたプロットと伏線故だろうか。読み進めても、どこかで何かが忘れられているような。誰が誰を騙しているのか常に不安になるような展開で怖くなる。その筆力は凄い。
    一般人にあまり馴染みのない世界。さぞかし取材されたことだろう。それを説明調でなく話の中で自然に伝えていく描写力にも感心するが、個人的にはやはり「ちょっととっつきにくい感」はあった。(最近、あまり重いものを読み慣れていなかったせいもあるとは思う。)ただ、事件が起こって刑事二人が絡むまでが怖くて怖くてなかなか先に進めなかったのはもう作品にやられているとしか言いようがない。(2005-12-6)

  • 店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う旗師・冬狐堂こと宇佐見陶子。
    その美貌と確かな鑑定眼で業界では名を知られるようになった彼女だが、同業の橘薫堂から仕入れた唐紋切子紺碧碗が贋作であった。
    プロを騙す「目利き殺し」にかけられた陶子は意趣返しの罠を仕掛けようとする。
    が、橘薫堂の外商が殺され、殺人事件にも巻き込まれてしまうこととなる・・・。

    『蜻蛉始末』を読んだ時にぽんちゃんがおすすめしてくれた北森作品。
    面白かった~!どうもありがとう。

    贋作を扱っているということで、漫画『ギャラリーフェイク』を思い出しましたが、これまたすっごい技術ですね。
    「時代つけ」とか、科学鑑定をも欺いちゃうなんて。
    小説で読むほど簡単ではないのでしょうが、圧倒されました。
    贋物作り、ということで偽札づくりを扱った真保裕一さんの『奪取』も思い出しましたが、どちらもやっぱり割りにあわないものなのかな。

    陶子の仕掛けがどう転ぶか、そして骨董の世界についてが面白すぎて、殺人事件が邪魔に感じてしまいました。
    ただ一般庶民代表としての刑事さんたちの登場はよかった。
    最後の大立ち回りなんて特に。骨董関係者ではああはいかないでしょうから。

    どうもシリーズになっているみたいなんで、続けて読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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