飛魂

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 45
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062091503

作品紹介・あらすじ

森の奥に亀鏡という女虎使いが住んでいた。彼女を師と慕う若い女たちが、大勢、家を捨てて森に入っていった。女たちは森の寄宿舎で寝食を共にし、「虎」を求めた。さまざまな授業に出席するほか、「原書室」に備え付けの原典360巻を読まなければならない。主人公、梨水は、そこでどんな体験をし、何を見るのか?読者を酩酊させるイメージの奔流。幻想的世界に誘う長篇綺譚。

感想・レビュー・書評

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  • 多和田葉子さん、やっぱりいい。以前に読んだ『雪の練習生』も良かったけど、それとは全くテイストが違って、さらに良かった。

    でもやっぱり装丁が勿体無いなぁと思う。作品はすごくいいのに、本の見た目ではその良さが想像できない。


    さて、どんな内容なのかというと説明するのが難しい。
    言葉と虎、という冒頭のキーワードで中島敦の『山月記』を思い出したが、しかしまるで違った。

    人里離れた場所にある書を学ぶための学舎でたくさんの女たちと暮らす梨水という女性の話。
    その学舎は亀鏡というカリスマ的な女性によって存在している。
    ここでは言葉から虎や鯉が出現し、女たちは言葉を操る。

    梨水から発せられる声には不思議な力があり、彼女は思考がいつも十転する「飛魂」の心の持ち主でもある。
    梨水、亀鏡、煙花、紅石、指姫、朝鈴、どう読んでいいのか分からない彼女たちの名前。
    意味にとらわれないで受け止める言葉というものの力。


    読みながら本の中の世界にふわふわと漂っているような心地になった。
    頭で物語を読むのではなく、ただ感じる。だから読んでいるという感じがしなかった。かといって映像的というのでもない。
    理屈がなく言葉や文章が体の中を通り抜けていく感じ。

    こういう本はなかなか無い。気持ちの良い本だった。

  • 子供の時に漢字好きであったことをなぜか思い出させてくれた小説だった。「字」の不思議さを読んでいて感じた。
    自分にとって文芸雑誌に連載されていた小説を初めて読んだ、というものでもあり思い入れのある小説。

  • 久しぶりにすごい本と出会いました。

    鬼が云うとかいて魂だと。。。

    その魂の話しでさらに魂が飛ぶ→飛魂です
    形的には会話としての記載が全くないのにもかかわらず、ここに出てくる人々はたくさんのことを話し合っています。確かに名前の漢字や、風景といえば云えないこともない描写から、中国を想像しますが、そうとも限らない。なぜかと言うと、ここに書かれている名前は本名とは思えないですが、真の名前のようで、風景も移ろっていて、同席していても、人によって全く違って見えているような気がします。そういうようなものごとや形の境が曖昧な書き方がされている。不可思議な感覚でそれでいて確かにここで人々が行きている。うまく書き表せなくてすみません。できれば読んでください。といいたいのですが、どうやら、希少本らしく、価格上昇中のようです。

  • まさに僕の魂の一冊、人生のバイブル、生涯の愛読書・・・色々言い方はありますが、まあ大体そんな感じです。
    一見するとフィクション性の非常に強い作品のようですが、当時大学に入ったばかりの僕にとっては、
    不思議とリアルな話のように思えてなりませんでした。僕たちの生きるこの世界とはまったく別の時間が流れ、
    異なる価値基準や律やシステムが存在し、紅石、指姫、煙花などの魅力的な名前の登場人物達は、
    基本的にはそれに従って学生生活?を送っているのですが、それぞれがまた強烈な個性を持っていて、
    時には協調し、時には対立し、僕たちにはとても想像の及ばない悩みに耽ったりしながら、成長?していきます。

    殆ど完全なるパラレル・ワールドの世界観なのに、いやむしろであるが故に、
    ただの大学での学生生活を綴った本などより、何故か共感を持ててしまうのです。
    それは個々の場面というより、文章の展開というか流れのような部分で浮かび上がってくるような。
    何度も読み返していますが、まだまだハテナの多い一冊です。

    想像がとても追いつかないような世界を想像するということは、容易な作業ではないような気がします。
    筆者・多和田葉子氏の底知れぬ才能だからこそ実現できた、至高の物語なのでしょうか。

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