飛魂

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 48
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062091503

作品紹介・あらすじ

森の奥に亀鏡という女虎使いが住んでいた。彼女を師と慕う若い女たちが、大勢、家を捨てて森に入っていった。女たちは森の寄宿舎で寝食を共にし、「虎」を求めた。さまざまな授業に出席するほか、「原書室」に備え付けの原典360巻を読まなければならない。主人公、梨水は、そこでどんな体験をし、何を見るのか?読者を酩酊させるイメージの奔流。幻想的世界に誘う長篇綺譚。

感想・レビュー・書評

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  • 多和田葉子さん、やっぱりいい。以前に読んだ『雪の練習生』も良かったけど、それとは全くテイストが違って、さらに良かった。

    でもやっぱり装丁が勿体無いなぁと思う。作品はすごくいいのに、本の見た目ではその良さが想像できない。


    さて、どんな内容なのかというと説明するのが難しい。
    言葉と虎、という冒頭のキーワードで中島敦の『山月記』を思い出したが、しかしまるで違った。

    人里離れた場所にある書を学ぶための学舎でたくさんの女たちと暮らす梨水という女性の話。
    その学舎は亀鏡というカリスマ的な女性によって存在している。
    ここでは言葉から虎や鯉が出現し、女たちは言葉を操る。

    梨水から発せられる声には不思議な力があり、彼女は思考がいつも十転する「飛魂」の心の持ち主でもある。
    梨水、亀鏡、煙花、紅石、指姫、朝鈴、どう読んでいいのか分からない彼女たちの名前。
    意味にとらわれないで受け止める言葉というものの力。


    読みながら本の中の世界にふわふわと漂っているような心地になった。
    頭で物語を読むのではなく、ただ感じる。だから読んでいるという感じがしなかった。かといって映像的というのでもない。
    理屈がなく言葉や文章が体の中を通り抜けていく感じ。

    こういう本はなかなか無い。気持ちの良い本だった。

  • 子供の時に漢字好きであったことをなぜか思い出させてくれた小説だった。「字」の不思議さを読んでいて感じた。
    自分にとって文芸雑誌に連載されていた小説を初めて読んだ、というものでもあり思い入れのある小説。

  • まさに僕の魂の一冊、人生のバイブル、生涯の愛読書・・・色々言い方はありますが、まあ大体そんな感じです。
    一見するとフィクション性の非常に強い作品のようですが、当時大学に入ったばかりの僕にとっては、
    不思議とリアルな話のように思えてなりませんでした。僕たちの生きるこの世界とはまったく別の時間が流れ、
    異なる価値基準や律やシステムが存在し、紅石、指姫、煙花などの魅力的な名前の登場人物達は、
    基本的にはそれに従って学生生活?を送っているのですが、それぞれがまた強烈な個性を持っていて、
    時には協調し、時には対立し、僕たちにはとても想像の及ばない悩みに耽ったりしながら、成長?していきます。

    殆ど完全なるパラレル・ワールドの世界観なのに、いやむしろであるが故に、
    ただの大学での学生生活を綴った本などより、何故か共感を持ててしまうのです。
    それは個々の場面というより、文章の展開というか流れのような部分で浮かび上がってくるような。
    何度も読み返していますが、まだまだハテナの多い一冊です。

    想像がとても追いつかないような世界を想像するということは、容易な作業ではないような気がします。
    筆者・多和田葉子氏の底知れぬ才能だからこそ実現できた、至高の物語なのでしょうか。

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著者プロフィール

多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞し、2018年『献灯使』で全米図書賞翻訳文学部門、2020年朝日賞など受賞多数。著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』などがある。

「2022年 『太陽諸島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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