- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062096577
感想・レビュー・書評
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私にとって初めての村上春樹。
彼特有のくどいくらいの比喩表現は最初はすごく気になったが、すみれが“あとかたもなく消え去った”辺りはグングンと読みすすめられてとても好感がもてた。
主要な登場人物は、
思考するのと書くことが同義な、すみれ
長い間自分を客観的に見ようとするせいで孤独に苛まれていた、僕(K)
14年も前に自分が自分ともう一人の自分に乖離してしまった、ミュウ
の三人だけ。
だがたった三人ながら、愛と欲が絡まり合い、みんな人間味があって良かった。
終わり方が少し納得いかないが、一度読んだだけなのでわからなかったのかもしれない。
もう何度か読んでみようと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独特の世界観で描く恋愛小説。
個人的には非常に好きな一冊。 -
久しぶりに村上春樹に手を出しました。
わたしにとって読むのに覚悟がいる作家さんです。
村上春樹さん…冒頭の表現からやってくれました。
恋に落ちるってこういうことを言うのね。
恋愛小説なんだろうけどぜったいそれを越えていると思います。
不思議な世界観は言うまでもなく,
人間の孤独感とか哲学的なことだとか。
奥が深くて1回読んだだけでは理解しきれないのに,何かを感じることができる作品です。 -
テーマは孤独なのか。読了後にいろいろと考えされられた。
ふと、孤独だって気づいた時の孤独って思った時の喪失感。喪失感自体は人としてごく自然な感情で、長期間喪失感から立ち直れない状態を放置すると、孤独を自覚してしまうのだと思う。人によって大事な、人との別れ、物を失った等の大小さまざまな喪失感はあると思う。でもそれを受け入れ生きて行くのだなって。登場人物達も受け入れられたのだと思う。
ともあれ、村上春樹独特のクドいくらいの比喩表現を堪能できたてよかった。 -
恋愛を軸に、現在の自分とあったかもしれないもう一人の自分を見つめる物語。
個人的感想としては、大人になりきれない大人に向けた現代に向けた寓話という気がした。
人を愛することや別れを相対的に見つめることによってしか人は本当の意味で成長できないのだろうとも思った。
愛する人間と別れることは、自分と相手とのあらゆる可能性を消し去り、太陽が昇らない暗く空虚な世界を生きていかなければならない決意をすることではないか。
出口のない暗いトンネルをただ歩いていくような失恋後の感覚を思い出した。
読了後は、恋愛についてタップリ考えさせられた疲労感と、もの悲しいモヤモヤがいつまでも続いた。
村上春樹のキャラクター設定はいつもながら素晴らしく、登場人物の「すみれ」の造形だけでこの小説の魅力を70%くらいは引き出している気がした。 -
(※2010年手帳より)
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独特な世界観。
上手く言い表せないけれども、切なさや喪失感が残る。 -
ノスタルジック(郷愁)な世界観。
とても読みやすい。
登場人物たちの行動や言動が明確で、文章を読むのが苦にならず進む。
物語の伏線が無いのも、読みやすい理由の1つなのかもしれない。
また、結末が不確定なものだと感じるがまったく嫌にはならない。
過去と現在の登場人物が生まれ変わるような描写が一番の見所だと思うので、その描写だけで結末が不確定でも納得できる。
むしろボヤけた感じの方が雰囲気が出るので1つの結末として納得出来た。
最後にすみれは、゛ぼく"に電話していたが、私は夢だと思っている。
まだすみれは向こう側の世界に居るような気がする。
スプートニク…あの宇宙の生物研究の犠牲者になったライカ犬のように。
タイトルと物語の内容がマッチしていて良い意味で考え深かい世界観だった。
ミュウも素敵な女性で惹かれるものがある。
そしてギリシャの島々の描写が美しく、読んでいてこちらも旅行をしている気分になった。
『もし不完全な人生からすべてのむだが消えてしまったら、それは不完全でさえなくなってしまう。』
『本の世界の方が現実よりも生き生きしている』
上品な文章に隠れている、言葉1つ1つに新たな気付きを私は得ました。