スプートニクの恋人

著者 :
  • 講談社
3.45
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本棚登録 : 2060
レビュー : 242
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062096577

作品紹介・あらすじ

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない、書き下ろし長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 職場の同僚に薦められて読んでみました。
    「恋愛小説の中では一番」とのコメントとともに薦められたのですが、村上春樹作品なので、普通の恋愛小説を読むときよりもえいっと気合を入れて読み始めました。

    印象的な書き出しにはっとさせられ、「スプートニクの恋人」の由来で一気に引き込まれ、読み終えたときには本書に夢中になっている自分がいるのでした。
    人工衛星スプートニクと人間の抱えるどうしようもない孤独感を重ね合わせたイメージが印象的で、忘れ難いものになりそうです。

    村上春樹流の比喩にドキドキさせられます。
    「クリスマスと夏休みと生まれたての仔犬がいっしょになったみたいにやさしい」とか。
    どこか不安定な感じに、くらくらしてしまう。

  • 22歳のすみれは17歳年上で既婚者の女性のミュウに恋をした。語り手の「ぼく」はすみれと長い付き合いだが、ずっと友だちとして付き合っている。ベッドを共にするガールフレンドは何人かいても、すみれに対するような気持ちで付き合えない。
    すみれはミュウの仕事を手伝うようになる。いつも書いていた小説が書けなくなる。ミュウに恋をしていると気がつく。ミュウは仕事で外国にすみれを伴って行き、すみれはあるきっかけからミュウを求めるが、彼女は応えられない。その後、すみれの姿が消える。


    いつもと少し違った話と思ったのは、男女間の恋愛ではないからか、それぞれが自分の気持ちに反する行為をしている、または気持ちを受け入れられないからか。みんなが孤独で、自分の本当の想いは遂げられない。いつもの村上ワールドはいつもみんな楽しく思い通りな話とも思わないけど、少なくとも恋愛はそこそこ成就してるようなので、これは特に、みんなが寂しい話という気がする。

    すみれはもう一人のミュウに会ったのか。想いを遂げられたのか。すみれの猫と同じなのか。もしすみれも半分になったら、それはもうすみれじゃないから戻ってきても意味がないのか。

    スプートニク、旅の連れ。一時の、ということなのだろうか。やはり謎は多い。

    これも宇宙関係なかった!

    現実と夢の境目が曖昧ですごく不安なのに、さらさら読める。夢だよね、と流してしまうような感じで。切なくて寂しくて、ちょっとだけ美しい。


    引用メモ。
    どうして書かずにはいられないのか? その理由ははっきりしている。何かについて考えるためには、ひとまずその何かを文章にしてみる必要があるからだ。
    小さなころからずっとそうだった。何かわからないことがあると、わたしは足もとに散らばっている言葉をひとつひとつ拾いあげ、文章のかたちに並べてみる。もしその文章が役に立たなければ、もう一度ばらばらにして、またべつのかたちに並べ替えてみる。そんなことを何度か繰り返して、ようやくわたしは人並みにものを考えることができた。文章を書くことは、わたしにとってはそんなに面倒でも苦痛でもなかった。ほかの子供たちが美しい小石やどんぐりを拾うのと同じように、わたしは夢中になって文章を書いた。わたしは息をするようにごく自然に、紙と鉛筆を使って次からつぎへと文章を書いた。そして考えた。(191ページ、すみれの文章)

    わたしがまだ若かったころには、たくさんの人がわたしに進んで話しかけてくれた。そしていろんな話を聞かせてくれたわ。楽しい話や、美しい話や、不思議な話。でもある時点を通り過ぎてからは、もう誰もわたしには話しかけてこなくなった。誰ひとりとして。夫も、子供も、友だちも……みんなよ。(294ページ、ぼくのガールフレンド=生徒の母親の話)

  • 村上春樹って、こんなにキレイな文章を書く人だったのか。
    心地よい。
    『女のいない男たち』から2冊目を読了。

    他人とコミュニケーションをとることにどこか違和感を感じている「僕」と「すみれ」。
    僕はすみれに恋愛感情を持っているけれど、すみれは未だかつてそういう感情をもったことがない。
    そんなすみれが年上の女性「ミュウ」に恋をした。
    ミュウに雇われ一緒に訪れたギリシャの小さな島で、すみれは忽然と姿を消した。すみれはどこへ消えたのか?

    ハッピーエンドでもないし、どうしようもない孤独感が残るけれど、読み終わったときに、きっと僕は「あちら側の世界」ですみれに会えるに違いないと思えた。

  • 村上春樹苦手だったけど、これは好き。

  • ひゃー、よかった。落着。よかったよかった。あー、よかったー。。

  • 心に残る一作。読み終わって少し時間がたった今でも、自分がギリシャにいるような錯覚を覚えることがあるくらい。

  • 村上作品の中でも賛否両論が激しいように思いますが
    自分にはあっているなと感じます
    華やかなストーリーでは決してないけれど、ぐっと印象に残る

    とくに終盤で流れるなんとも言えない雰囲気が心地よいです
    廻り続ける軌道のどこかでもう一度逢いたい。

  • 世界のありかたが「ねじまき鳥」と同じととらえていいのだろうか?こちらとどこか。不在。ミュウと島本さんなど、周辺作に近似をみる、というより、イメージがこんがらがってしまう。
    特段難解とは思わないが、「アフターダーク」のような明確さのみで話は進まない。
    むしろ世界のねじれ部分のすべての描写がドラッギーな酩酊感をもたらす。気持ちいいのだ。
    春樹作品中最もサイケデリックだと思う。

  • もう10年以上昔のことである。とあるホテルに泊まったときの話だ。
    フロントでキーを受け取って、自分の部屋へ行くために、僕はエレベーターに乗り込んだ。乗客は僕ひとりだった。扉が開いて、何も考えずに降りた瞬間、固まった。あたりがあまりにも暗いのだ。真っ暗と言ってもいい。
    とっさに考えたことは、間違えた階に来てしまったということだ。たぶんボタンを押し間違えて、従業員用のフロアにでも降りてしまったか。
    それにしても暗い。それに何やらがやがやと声がする。間違いなく何者かがいる気配がする。何かがおかしい。ココハナニカガオカシイ。
    そこまで考えるのに、1秒とかからなかっただろう。僕は思わず怖くなり、もう一度エレベーターのボタン押した。幸いエレベーターはすぐに開き、僕はそれに飛び乗った。もう一回フロントまで降りて、今度は注意深くボタンを確かめながら押した。ドキドキしながら扉が開くと、何の変哲も無い客室の廊下が現れた。あの不気味な場所につながることはなかった。僕は心から安堵した。
    僕はあのとき、間違いなく「あちら側」の扉を開けてしまったのだと思う。この本にも「あちら側」行って失踪してしまう少女が描かれているが、そのような世界は実際に存在するんじゃないだろうか。そこには鏡合わせのようにもう一人の自分がいる……。
    あのとき、変な冒険心を起こして、先へ進んでいたらどうなっていただろう。この小説の少女のように、神隠しに遭ったように消えてしまったかもしれない。だから、この物語は僕にとってフィクションではないのである。ばかばかしいと言われようが、あの夜の体験は、まざまざと僕の脳裡に刻みつけられている。

  • とても好きな作品になりました。

    気に入った言葉を3つ。
    「そういうのはおそらく、選びようのないことなんです」
    ホント選びようがないよね、ってすごく思いました。

    「そのがらんとした感情の廃墟の、うらぶれた山頂から、自分の人生をはるか先まで見渡すことができた」
    「どうしてみんなこれほどまで孤独にならなくてはならないのだろう」
    もう最近は人生とかいうワードが出てくるだけでドキっとしますよね…

    あとすみれさんの日記は、自分も同じような描き方をしているので共感でした。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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