- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062096577
作品紹介・あらすじ
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない、書き下ろし長篇小説。
感想・レビュー・書評
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職場の同僚に薦められて読んでみました。
「恋愛小説の中では一番」とのコメントとともに薦められたのですが、村上春樹作品なので、普通の恋愛小説を読むときよりもえいっと気合を入れて読み始めました。
印象的な書き出しにはっとさせられ、「スプートニクの恋人」の由来で一気に引き込まれ、読み終えたときには本書に夢中になっている自分がいるのでした。
人工衛星スプートニクと人間の抱えるどうしようもない孤独感を重ね合わせたイメージが印象的で、忘れ難いものになりそうです。
村上春樹流の比喩にドキドキさせられます。
「クリスマスと夏休みと生まれたての仔犬がいっしょになったみたいにやさしい」とか。
どこか不安定な感じに、くらくらしてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なにかを考え出すと食事をとるのを忘れる傾向があり、
すみれは自分で料理を作るくらいならなにも食べないでいる方を選ぶ人間だった
ミュウは微笑んだ。久しぶりにどこかの引き出しの奥から引っ張り出してきたみたいな、懐かしく親密な微笑みだった。目の細め方がすてきだ。
とても物覚えがよくて、字のうまいひとだった
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村上春樹って、こんなにキレイな文章を書く人だったのか。
心地よい。
『女のいない男たち』から2冊目を読了。
他人とコミュニケーションをとることにどこか違和感を感じている「僕」と「すみれ」。
僕はすみれに恋愛感情を持っているけれど、すみれは未だかつてそういう感情をもったことがない。
そんなすみれが年上の女性「ミュウ」に恋をした。
ミュウに雇われ一緒に訪れたギリシャの小さな島で、すみれは忽然と姿を消した。すみれはどこへ消えたのか?
ハッピーエンドでもないし、どうしようもない孤独感が残るけれど、読み終わったときに、きっと僕は「あちら側の世界」ですみれに会えるに違いないと思えた。 -
村上春樹苦手だったけど、これは好き。
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心に残る一作。読み終わって少し時間がたった今でも、自分がギリシャにいるような錯覚を覚えることがあるくらい。
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村上作品の中でも賛否両論が激しいように思いますが
自分にはあっているなと感じます
華やかなストーリーでは決してないけれど、ぐっと印象に残る
とくに終盤で流れるなんとも言えない雰囲気が心地よいです
廻り続ける軌道のどこかでもう一度逢いたい。