- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062096881
感想・レビュー・書評
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この人、めっちゃ成長したなぁ。
というのが第一声。デビュー作の『Twelve.Y.O』からこんな重厚冒険小説を書けるとはとても思いませんでした。途中すっごいグロいシーンもあるんだけど、これってどこかでありえるお話ですよね?まさに今中国とやり合ってるときに読んでしまったから妙なリアリティが。重くて濃くて、哀しい。この話にヒーローもヒロインもいません。完璧な探偵も出てきません。人間の書き方が正確すぎる。あとどうでもいいですが最初の登場人物の多さに3分ぐらい読むのやめようか悩みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
真田 広之主演の映画から、原作が読みたくなった。
原作も面白い。あの大部を一気に読んだ。
しかし、海上自衛隊の全面協力の映画の圧倒感には、
悲しいかな一歩譲る感があり。
ちなみに原作では「某国工作員」の所属名が
しっかり書かれているが、映画版では「大人の事情で」伏せられている。
工作員の名前は「フォヨンファ」って
もろにそのまま書いているのに。(笑)
しかし、日の出ずる国の軍事組織の政治的しがらみは
知ってはいたが予想以上。
「先手必勝」の戦いの鉄則は、なかったことにされているのが
切なえ・・・・・・・。 -
登場人物のドラマを丁寧に語りながら、やがてくる破局を予感させつつゆったりと物語が進んでいく前半、鳥肌が立つほど興奮し、これほどおもしろい小説は読んだことがないのではないかと思うほど、すばらしい読書体験をプレゼントしてくれた。
絵に描いたようにきっちりとしたどんでん返し(それが心理的要素できちんと前半と結びついているだけに、そしてその前の展開に実は不満を持ってただけに驚きであり、快感であった)を通り越し、そのあたりまで叫びたいほどおもしろかった。
ただ後半。映画の「ダイハード」を思わせるようなアクションシーンと、劇画の「沈黙の艦隊」を思わせるようなラストシーン、良くできているなあと思いながらも、なんとなくシュルシュルと予定調和に物語が収められていくようで不満が残った。
とはいえ、物語そのものや、そこに込められた人間ドラマ(やや安易な浪花節が見え隠れするにせよ)は骨太で、一級品であろう。映画化されるようだが、原作に恥ずかしくないような、がっちりとしたドラマを組み立ててほしいものだ。
あえて言うならば、時々伺える思想のようなものは、わりあい浅薄なものに感じられてならず、そこが「沈黙の艦隊」と「ダイハード」と「悪魔の選択」を混ぜあわれてスケール感を抜いたようなこの物語を、超一流と(僕に)感じさせない理由のような気がする。
2005/5/6 -
何度も「うわっすげーな!」と言ってしまいました。
中盤のどんでんでは、まんまとドキッとさせられてしまいました。
トリックだけを見れば大したこと無いようにも思うのですが、そこまでの持って行き方が巧妙なのでしょうね。 -
最初はやや取っつきにくいが、イージス鑑が乗っ取られ、事件が動き出すと、もう止まらない。
まるでハリウッド映画を見ているかのような、手に汗握るアクションシーンの連続。次の日が休みだったこともあったが、続きが気になって朝の7時まで読み続けてしまった。
こんなにページをめぐる手が止まらなかったのは後にも先にもこの作品だけ。心の中のベストテン、ミステリー部門、堂々の第1位。
ちなみに、ハリウッド映画のような、と書いたけど、実際の映画版は自分的にはイマイチ楽しめなかった。実写で見たかったシーンがことごとくカットされてるし、アクションシーンも微妙な感じ。この長さの物を2時間程度にまとめるのが無理があるよ。まあ期待が高すぎたせいかもしれないけど。 -
【亡国のイージス】 福井晴敏さん
アメリカがエネルギー研究、開発中に、偶然の産物として
生成された溶液「GUSOH(グソー)」。
この溶液は酸素と化合するとVXガスをしのぐ猛毒を発生させ、
ミサイルに搭載すると、驚異的な生物兵器として代用できる。
アメリカは「GUSOH」をトップシークレットとして、秘匿するが
北朝鮮工作員がコレを探知し、強奪した。。
* * *
日本国が保有するミニ・イージス・システムを搭載した
最新の護衛艦『いそかぜ』
その『いそかぜ』が訓練航行中、海軍幕僚と偽って
乗り込んでいた北朝鮮工作員にシージャックされた。
彼らは「GUSOH」をミサイルに搭載し、照準を
東京に向けて、日本政府に要求をつきつけた。
☆
約600ページ強。。通常の2冊分。。
マイミクさんの日記を読んで、興味を持ち借りてきました。
読みきるまでに約一週間かかりましたが、噂にたがわぬ、
内容の濃い、面白い物語でした。
あらすじを要約するのは難しい。。
殺された息子の復讐に凝り固まった、艦長。
先任伍長たち従来からの艦乗組員は艦が我が家である。
いかに階級が上だといっても、次々と艦を乗り変わり
配属される幹部士官は外様でしかないと思っている。
新規で配属された初任幹部は、そのことに不満を抱いている。
そして艦長を利用しようとした、北朝鮮工作員。
彼らは、彼らなりの方法で祖国救済を目指していた。
クーデター派は艦長以下、幹部と北朝鮮工作員
館内で諜報活動をし、ひきおこされた事態によっては
身を賭した破壊活動をも厭わない日本国側の工作員、
その工作員の如月行と、奪われた我が艦を取り戻そうとする
先任伍長の仙石
『いそかぜ』の要求にどう応じるかを論議する
内閣閣僚、警察庁長官、防衛省幹部など
読み応えのある本でした。
また、現在の防衛論理のあり方が、現代の兵器の進化に
伴っていないというコトも興味深い点でした。
戦争放棄を唱えていれば、平和は約束されていると
思っている、危機感の乏しい日本人
いざ、戦が始まれば先手必勝、2発目は無い。。
そういう状況を踏まえれば、現在の法は適していない。
やはり防衛と抑止力というモノをもっと真剣に
考えないといけないのだろうというコトが
この本から伝わってきました。 -
映画で見るより小説で読むほうが断然おもしろい作品。
戦争のような痛烈で残酷、緊迫した状況の中にある、如月と仙石の、不器用な、でも人間らしいやり取りに心が動く。
生きる“甲斐”ってものをかけて戦う男たちに感動する作品。 -
先に映画を見てしまって後悔。
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図書館より拝借。
いろいろ難しいとは思います。
けど、もうちょっと変わっていければいいのにと、思う。
如月行の話があるみたいなのでまた今度。 -
読み終えて時計を見たら1:51でした。久しぶりの深夜に及ぶ読書。654ページというなかなかのボリュームでした。
「イージス」というのは「楯」のことなので、自衛隊のことを指している。その楯が守る国日本は平和ボケして安眠を貪り国体の形も定まらない「亡国」であるというメッセージがタイトルになってる。自衛隊擁護というか好戦的な気分が横溢している。がそんな思想的な書ではない。
「もう指一本動かしたくない、とにかく休みたいというのが正直な思いだったが、浸水区画に戻ったからにはやらなければならないことがあった。」なんて描写は冒険小説の定番のもので、イージス艦を舞台にした冒険小説という面が一番強いと思う。特異な場所でアクションを展開する、≪ダイハード≫シリーズとか「ホワイトアウト」あたりと同様のシチュエーションアクションの一つとして読める。
もう一つシミレーション小説の側面があって、このジャンルの本は細かければ細かいほど正しいという認識があるようでディテイルがやたらと細かい。もう少しはしょってもと思うが筆力にはひれ伏すしかない。
ストーリーは全く知らないで読んだので途中のどんでん返しや後半の意表をつく展開なども楽しめた。
最後は自己犠牲と熱き友情というセンチメンタルになっていく。これだけの分量を支えるにはこれだけのメンタリティが必要できっちり書けてはいるのだがいっしょになって熱くなるという感じではない。さじ加減としてはもう少しクールでもよかったのではと思うのでした。
事件の動機となる艦長の反乱については最後までうまく心に落ちてこないものがありました。