ことばで私を育てる

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062099981

感想・レビュー・書評

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  • 図書館。「はじめに」を読んで、ことばに対してのさまざまに触れられる本だと期待が高まるも、序盤は「日本人とは~」のような話が出てきて、思っていたものとは違う内容だったかな、と思った。が、その後の筆者が取材等を通して考えたこと等の各論(?)に入ってからは、引き込まれて読み進めた。三好万季さんのレポートと、雫石さんの著作が読みたい。
    引用を「読書メモ」にメモ。2023/11/18

  • 元NHKアナウンサー山根基世さんのエッセイ集。
    「ことばの杜」の共同発起人
    http://kotobanomori.jp/

    タイトルに惹かれる

    第一章 ことばの重みに気づくとき
    第二章 ちょっと真面目なことばの知識
    第三章 世間はことばで回っている
    第四章 仕事に負けないことばを磨く
    第五章 ことばから広がる情景
    第六章 人を知り、ことばを知る

    P15 小さなほころびは、それだけでは終わらない。おおげさに言えば、日本の文化全体にかかわることのように思えるのだ。片隅のほんのささやかなところから、日本がほころびはじめている・・・・・。

    P36 なにしろいまは「なんでもあり」の時代。抑制も節度もなく、自分の中にあるものを洗いざらいぶちまけるような作品も多いのだ。従来の枠組みや既成概念を打ち破って「個の表現」をしようとすれば、そこに行き着くのは当然かもしれない。
    「能書きばかり言う奴のすいかがうまかった例はない」
    ペラペラ饒舌になってしまった私たち。ことばの数は増えたけれど、その中身はごく薄くなってしまっているようだ。やはり生き方とことばもつながっているにちがいない。

    P40母と娘の遠慮のなさは、丁寧語などとは無縁のふだん着のことばで、ズカズカとお互いの中に入りこんでしまう。それは血の濃さ、上の厚さでもあるのだが、一歩間違えればズタズタに傷つけあういい愛になだれこませるものでもある。
    丁寧語なことばは一見冷たく、人を隔ててしまう側面もある。だからこそ、相手の中に入り込みすぎず、適度な距離を保つことができる。親子といえども、夫婦といえども、否、親子、夫婦だからこそ、けっして入ってはならない領域というのがあるのだ。姑はそのことをよくわかっていた。つくづく「他人との距離のとり方」のうまい人だったと思うのである。

    P41「モトヨさん」と呼び、「ありがとう」と言う夫には「妻は他人」なのだという冷静な認識があるように思える。それは血の繋がった母が、娘を自分の分身のように受けとめ、思いどおりということは、けっして自分の思いどおりに支配することはできない「一人の人間」として敬意を払ってもらっているということだ。私が実家で身につけてきたのとは違う、夫婦の間のことばを養ってきたことが、二人の関係を育ててきともいえるだろう。

    P48つまりー「読む」基本というのは、日頃人が自然に話している方法に基づくこと。それはおそらく、人間という生き物が自然に呼吸しながら。日本人の場合、日本語の音の構造の原則にのっとってしゃべっている(あるいは、その原則は逆に、日本人の呼吸によって出来上がってきてのかもしれない)からだ。ともかく、生き物としての肉体の「呼吸」と、日本語の原則とを重ね合わせて読むということは「自然の摂理」にしたがうということではないのか。

    P63こうして、ことばに対するいきいきとした興味をもたせる一方で、子どもの思考能力を育てる配慮も必要だ。ことばは表現の手段であると同時に、認識したり思考したりするための道具でもあるからだ。

    P76「自分を振り返っても、女性の五十代ってとてもいい仕事のできる年代なのよ。そんな大切なときに、たかが語学のために何年も費やすなんてもったいないわよ」
    「英語なんてしょせん道具でしょう。道具を磨くよりも、語るべき自分の思想をもつことのほうがずっと大切よ。そんなのいい通訳さえいればすむ話じゃないの」

    P78インタヴューを終えると、「初めはことばで説明なんかできないと思っていたのですが、今回、いままでの自分の仕事を振り返って、一度ことばで整理することができたのは、自分にとってとてもよい体験でした」
    テレビ時代のいま、美術の世界にまでことばが求められてしまうのだ。

    P83「理あらざれば、万人これを学ぶことを得ず、言ったっていうんだ。理ってのはつまりことばだよ、ことばで伝えなきゃ伝えることはできないんだよ。理あらざれば万人これを学ぶことを得ず、まったくそうだよなあ」~司馬遼太郎「江戸剣客の伊藤一刀斎のことばから

    P115若者たちにも、ぜひ「大人との世間話」をすすめたい。

    P116つまり「きつい性格」というのは独立してあるのではなく、つねに相手との「関係」によって生まれるのだ。どんな人でも、状況次第できつくなりうるのだ。それを自覚すれば「きつい性格」の人を、まるで宇宙人のように恐れなくとも済むのではないだろうか。

    P128だが長年ニューヨークで暮らす恵さんに言わせると、黙っていては、百年経っても世の中一ミリも変わらないということになる。一人ひとりが、よいことはよい、悪いことは悪いと声を上げることが大切だ。個人のことばが社会を変えるのだと、恵さんは信じているらしい。
    私自身も恵さんのそんなことばに動かされているのだから、やはりことばの力は大きい。

    P145 会議の技術
    みんなで話し合ってものごとを決めていくとき、自分の意見を通すには、相手の話をよく聞いたうえで冷静に、論理的に、相手を傷つけぬよう発言していかなければならない。これは一朝一夕でできることではない。そういう場を多く経験し、その中で自分を訓練していくしかない。
    一方、会議というのは、必ずしも正論が通るとは限らない。「何を言ったか」ももちろん大切だが、それ以上に「だれが言ったか」のほうが重要だったりするのである。

    P151会議必勝法ーまず自分の言いたい結論から簡潔に話すこと、それが第一歩だ。しかし、この第一歩を踏み出すためには、自分のいちばん言いたい結論が何かを、しっかり把握しておく必要がある。そのためには、何段階もの思考のステップを重ねなければならない。しかもようやく見えてきた「言いたいこと」を簡潔にするためには、されに何段階ものそぎ落としの作業が求められる。

    P157「結局、リーダーシップというのはことばですね」井上武吉(いのうえぶきち)彫刻家

    P159「考える」とは、自分の中でまだことばにならず、モヤモヤと漂っているものを、ことばにしていく作業ある。「わが社の商品」について、「自分の仕事」について、考えるづけることーこれ胃がに「自分のことば」を獲得する確実な方法はない。自分の頭で考えるほかに、自分のことばを得る早道はないのだ。



    昨日気づいたけど、「半沢直樹」のナレーションが山根基世さんだった。

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著者プロフィール

早稲田大学卒業後、NHKに入局。ニュース、ナレーション等多くの番組を担当。退職後は、子どものことばを育てる活動を続けている。著書に『感じる漢字』『山根基世の朗読読本』、翻訳絵本に『このてはあなたのために』『きっときっとまもってあげる』『ちっちゃな木のおはなし』など。

「2020年 『山根基世の朗読読本2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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