麦の海に沈む果実 (メフィスト・クラブ)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 244
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062101691

感想・レビュー・書評

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  • 『麦の海に沈む果実』
    わたしが少女であったころ、
    わたしたちは灰色の海に浮かぶ果実だった。

    わたしが少年であったころ、
    わたしたちは幕間のような暗い波間に声もなく漂っていた。

    開かれた窓には、雲と地平線のあいだのはしごを登っていくわたしたちが見える。
    麦の海に溺れるわたしたちの魂が。

    海より帰りて船人は、
    再び陸で時の花びらに沈む。

    海より帰りて船人は、
    再び宙で時の花びらを散らす。


    三月から始まる三月の王国へ、二月の終わりに転校生がやってきた。
    破滅をもたらす「二月の転校生の伝説」に戸惑う彼女の名前は、理瀬。
    「この三月の国の趣旨に添わない生徒は、いつのまにかいなくなる」
    王国の王である校長の「お茶会」に、ファミリーの憂理、黎二、聖と共に招かれた理瀬は
    かつてのファミリー・麗子の生死を確かめるため降霊術を行う。
    学園の諸所に現れる麗子の影。そして次々と起きる"不慮の死亡事故"に、
    天使のような容貌を持つヨハンとファミリー達は校長への不信感を募らせる。
    王国での様々な出来事に心を塞ぎこんだ理瀬は、ハロウィンパーティの最中
    校長から「黒い紅茶」を受け取る。

    はあ。早くも終わってしまった!
    レビューを残すにあたり何もかもを省きたくない、エレガントな小説でした。
    幻想的な世界を脳内に描画させてくれる点において、恩田陸は
    稀代の作家なのではないかと思わせてくれる作品。
    既視感の描写ってあまり好きじゃないんだけど
    (ほらほら気になるだろ?伏線ですよー☆彡って感じがして)
    これは気にならなかった。鮮やかに締めてくれた。
    理瀬も、脇を固めるファミリー達もそれぞれいい味を出していて
    みんな愛おしい。
    学園のイメージもモンサンミッシェルを想起させるようで好き。
    ネクロポリスといい恩田さんはモンサンミッシェルの雰囲気好きなんじゃないか。
    結論として、当然のように長くなるブックレビュー。名作です。
    師走に良い本に出会えて良かった。

    「『三月は深き紅の淵を』というのよ。赤い表紙で、ちょっと小さめのサイズ。作者名は書かれていないわ」

    「―思い出したんだね?」
    「ええ、パパ。何もかも」


    指の隙間から、灰色の湿原に、水色の花吹雪が散ってゆく。

  • 見事やられてしまった! こういう話もモノにするとは流石ですねぇ。隔離された学園を舞台に不可思議な怖いようなミステリアスなストーリーが展開していくのだけれどラストで何度かひっくり返されてしまう。なるほどメフィストクラブだわ、納得しました。

  • 閉ざされた学園で、生徒たちは苗字のない家族として暮らす。次々に起こる変死。主人公の失われた記憶。はらはらしながら読んだらいつの間にか終わってた。記憶の戻った理瀬の今までとのギャップが印象的だった。

  • 随分前に読んですごく面白かった記憶のある「三月は深き紅の淵を」に関わる話ということで買ったんだけど積んでた本。
    ハリーポッターの世界をちょっと思わせる学園もの。
    この本を積読しているうちに年を取ってしまった私に楽しめるか不安でしたが、杞憂でした。

    内容自体にすごく驚くような何かがあるわけでないし、オチも少々がっかりでしたが、なんというかものすごく面白い。すごい筆力。時間を忘れて読まされる。

    マンガのような分かりやすいキャラ設定のおかげで生徒一人ひとりの顔まで簡単に目に浮かぶ。現実離れした世界観もあり、主人公含め、登場人物たちの誰かに共感できたりするわけではなかったけど、この世界には入ってみたい。この学校の図書室に住みたい。現実逃避したい。

    校長先生のキャラはかなり好きです。女装の意味は良く分からなかったけど。
    校長先生メインの外伝があれば読みたい。

    十代の頃に読んでたら、生徒たちへもっと共感できたかも。

  • 2017.5.11

  • 学園ものの雰囲気と、恩田さん特有のロマンティシズムが融合して
    いってしまえば少女小説のような世界観がある。
    何度も読み返した大好きな本です。

  • 外界から閉ざされた学園。男にも女にもなれる校長。美しく、優秀で、出来の良い生徒達。
    閉ざされた空間で起こる様々な人間模様や殺人やミステリーにいい意味で翻弄され、読み終わった時にああ、そうだったのか。と納得し、人間だからこその行動に共感したり逆に嫌悪したりする。
    理瀬が自分を取り戻していく過程もとても美しかった。

  • 残りわずかで数々の謎が、複線らしき事象が、まるで解決されず、かなり強引な夢幻想による真実に落とすが、大きいなぞは結局未解決のまま放置。これはないなあ。

  • 北の地の大湿原の中に築かれた外界とは閉ざされた学園。そこに主人公の少女理瀬が転入してくる。その学園の生徒達はは素性は明かされないが有力者の子息や才能ある者たちで、謎めいた美少女、美少年揃い。女性にも男性にもなれる校長。何もかもが不思議で魅惑的な世界に引きずり込まれる。まるでハリー・ポッターみたいな…。何よりも主人公の理瀬、彼女が何者なのか、彼女自身にもわからない。最後まで謎のまま物語はクライマックスへ!大変面白かった。今まで読んだ恩田陸さんの小説の中でも群を抜いて面白い。実写映画にならないかな。映像にしたらかなり美しいだろう。

  • 理瀬に騙された。騙されても嫌いになれないから、理瀬はいい女なんだろうと思う。

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プロフィール

恩田 陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。幼少期は名古屋、長野、富山、仙台などを転々とする。高校時代は茨城県水戸市に在住。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。
1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。
2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞と第14回本屋大賞を受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。

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