よもつひらさか往還

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062110877

感想・レビュー・書評

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  • 穂村弘さんや川上弘美さんの書評集で倉橋さんの作品を見かけて、ずっと気になっていました。初・倉橋作品。『聖少女』の前に…『よもつひらさか往還』と『酔郷譚』を。

    色鮮やかな妖しいカクテルがたくさん登場する。お酒がテーマかな…と思ったら、「サントリークォータリー」という雑誌?に掲載されていたものを一冊にした作品らしいです。表紙カバー絵もいいし見返しは銀河っぽい仕上がりで洒落ている。

    慧くんが主役なのですが、妖しい雰囲気を醸し出す九鬼さんの方が断然好みで、最初から最後まで面白く読むことが出来ました。夢みたいで酔っているようで摩訶不思議な気分になりました。こういう幻想的な奇譚ものすごく好き。

    酔っぱらって気がついたら苔むした洞窟の中にいて、ぼんやりと何かが見えるけど見えなくて、壁に触れるとぬるついていて、やはり何も見えない。この世とあの世を往ったり来たり。まだ寒くて春が行ったり来たりしている夜にぴったりの作品でした。あと季節の変わり目の夜にいいかも。お次は『酔郷譚』を。

  • なんとも幻想的かつ恥美的。
    此岸と彼岸をたゆたうとても素敵な作品でした。
    魔酒を調合する九鬼さん。
    彼の特別なカクテルの力を借りて異境へ誘われ、その味と香りと陶酔を愉しむ慧くん。
    作中に出てくる人々の終始なりゆきまかせなところがなんとも魅力的でたまらない。
    読み手のこちらまで妖艶な宴におぼれるようなうっとりとした酩酊感に誘われる。
    漢詩やギリシャ神話が出てきたりと文学的なスパイスの入れ具合も大層好みです。
    じっくりと味わったためか、本を閉じた時に夢から覚めたかのような心地にさせられた。
    多分何度も再読するであろう作品。

  • 倉橋由美子という作家はとてもユニーク。
    独自の、不思議な世界観が確立しています。
    小川洋子にも通じるものがあるけど、もっと、残酷というか突き放しているというか、大胆で男っぽい。

    読んでてまず思ったのが、「これ、誰か映像化してくれないかなあ」と。CGを使ったアートなアニメーション映像で。
    絶対面白いと思うんだけど。
    ビジュアルブックを眺めているような感覚を味わえる不思議な小説です。

    慧(けい)君は祖父からある「クラブ」を譲り受ける。
    クラブの中にはバーがあり、慧君が訪れるとバーテンの九鬼さんが不思議な特製カクテルを作ってくれる。
    そのカクテルは、異世界への入口。
    あるときは雪の天上世界、あるときは熟れた果実の熱帯の森、またあるときは鬼女の集う紅葉狩り。

    現実世界のすぐそばにある異次元世界を当たり前に受け入れつつ、どこか醒めているような感覚で描いています。
    瑞々しい感性とドライな視点が同居する文章が不思議と心地よいのです。
    小説というよりは軽い読み物、という感じ。

  • 何とはなしに魅力的なタイトルに出会い、本当に久しぶりに倉橋由美子を読みました。
    そうか、漢字にすれば黄泉比良坂往還か。こちらの方が良く判る。
    (「MARC」データベースより)
    時空を越え、はるかな異郷とこの世を自在に往来する少年・慧君の幻想的な性的冒険。辛辣で精錬されたユーモアとエスプリ溢れる倉橋由美子待望の連作小説集。『サントリークォータリー』掲載

    幻想的かつ耽美的な全15編。
    腐敗した肉、抽象化したカニバリズム、近親相姦。
    淫靡というか、直接的表現はあっさりしたものなのですが、シチュエーションがね。
    そして同時に、浅学な私は全くついて行け無い漢詩・和歌・ギリシャ神話・能などをモチーフにした教養小説。
    倉橋さんは何冊か読んでいるのですが、ずいぶん昔の話であまり記憶が無いのです。でも何となく「倉橋さんらしいな」と思わせる作品でした。
    かなり読み手を選ぶ作品でしょうね。好きな人は好き、駄目な人は駄目。
    私はと言えば、そこそこ楽しめました。

    ちなみに以下は読了後に調べた各編のキーワードです。
    ・花の雪散る里;式子内親王(新三十六歌仙)
    ・果実の中の饗宴;月と六ペンス
    ・月の都に帰る;かぐや姫
    ・植物的悪魔の季節;王安石(北宋の政治家・詩人)
    ・鬼女の宴;高浜虚子(爛々と昼の星見え菌生え)「
    ・雪女恋慕行;アフロディテとエロス
    ・緑陰酔生夢;江馬細香(江戸時代の女性漢詩人、画家)
    ・冥界往還記;菅茶山(江戸時代後期の儒学者・漢詩人)
    ・落陽原に登る;麻姑(中国神話に登場する仙女)
    ・海市遊宴;蘇軾(中国北宋代の政治家、詩人、書家)
    ・髑髏小町;通小町(執心男物の能楽)
    ・雪洞桃源;ペルセポネ(ギリシア神話に登場する女神で冥界の女王)
    ・臨湖亭綺譚;白楽天の琵琶行
    ・明月幻記;不明
    ・芒が原逍遥記;黒塚(安達ヶ原の鬼婆を題材にした能)

  • 上質にしてドラッギー 夢幻
    失礼ながら高齢の著者にこのようなものが書けることに驚いてしまった

  • バーテンダーの作るカクテルで異界に遊ぶ主人公。
    ギリシア神話に漢詩に和歌と幾つかのジャンルの言葉を引いて物語りに彩が加わります。
    エロス、と言えばエロスかも知れないけれど表現が綺麗なので気にならずにさらりと読めました。

  • バーテンダーの九鬼さんがつくるカクテルに導かれ、あちらこちらとこの世ならざる場所へ渡っては女性と戯れる慧君が主人公の短篇集。官能的ではあるが描写はやんわりとぼかしていて、変に生々しいエロではないので、お酒の力も借りながら雰囲気に酔うといった感じ。時にふわふわと、時にどろりと痛む感触が心地よい。すっぱりと割り切った展開が好みの人には向かないが、たまには夢幻の世界でまどろみたいという人にはよいと思う。
    和洋中と世界中の詩やら文学、神話からの引用が文中に撒かれているので、知っているものが出てくると思わずにやりとしてしまう(笑)。

  •  タイトル通り、オルフェウス的冥界譚、行きて帰りし物語の形式を採っている。読んでいて夢をみてるような、酩酊してしまったような眩暈を覚えること請け合いである。こういった文章が書けるその技巧に素直に関心した。

  • この慧くんと九鬼さんが出てくるシリーズ。なんか好きです。

  • 怪談オムニバスとして途中までは楽しく読めていたものの、とある部分から読むのがつらくなった。その境目がどことははっきり分からないんだけど、その衝撃的な筆力にも慣れてふと冷静になってみたらこういった雰囲気小説がいくつになっても読めない自分に気付いたというか、たぶんそういう低レベルな理由だと思う。
    読み終わったというよりは文に「連れて行かれた」に近いかも。

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