よもつひらさか往還

著者 :
  • 講談社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062110877

感想・レビュー・書評

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  • 倉橋由美子という作家はとてもユニーク。
    独自の、不思議な世界観が確立しています。
    小川洋子にも通じるものがあるけど、もっと、残酷というか突き放しているというか、大胆で男っぽい。

    読んでてまず思ったのが、「これ、誰か映像化してくれないかなあ」と。CGを使ったアートなアニメーション映像で。
    絶対面白いと思うんだけど。
    ビジュアルブックを眺めているような感覚を味わえる不思議な小説です。

    慧(けい)君は祖父からある「クラブ」を譲り受ける。
    クラブの中にはバーがあり、慧君が訪れるとバーテンの九鬼さんが不思議な特製カクテルを作ってくれる。
    そのカクテルは、異世界への入口。
    あるときは雪の天上世界、あるときは熟れた果実の熱帯の森、またあるときは鬼女の集う紅葉狩り。

    現実世界のすぐそばにある異次元世界を当たり前に受け入れつつ、どこか醒めているような感覚で描いています。
    瑞々しい感性とドライな視点が同居する文章が不思議と心地よいのです。
    小説というよりは軽い読み物、という感じ。

  • 何とはなしに魅力的なタイトルに出会い、本当に久しぶりに倉橋由美子を読みました。
    そうか、漢字にすれば黄泉比良坂往還か。こちらの方が良く判る。
    (「MARC」データベースより)
    時空を越え、はるかな異郷とこの世を自在に往来する少年・慧君の幻想的な性的冒険。辛辣で精錬されたユーモアとエスプリ溢れる倉橋由美子待望の連作小説集。『サントリークォータリー』掲載

    幻想的かつ耽美的な全15編。
    腐敗した肉、抽象化したカニバリズム、近親相姦。
    淫靡というか、直接的表現はあっさりしたものなのですが、シチュエーションがね。
    そして同時に、浅学な私は全くついて行け無い漢詩・和歌・ギリシャ神話・能などをモチーフにした教養小説。
    倉橋さんは何冊か読んでいるのですが、ずいぶん昔の話であまり記憶が無いのです。でも何となく「倉橋さんらしいな」と思わせる作品でした。
    かなり読み手を選ぶ作品でしょうね。好きな人は好き、駄目な人は駄目。
    私はと言えば、そこそこ楽しめました。

    ちなみに以下は読了後に調べた各編のキーワードです。
    ・花の雪散る里;式子内親王(新三十六歌仙)
    ・果実の中の饗宴;月と六ペンス
    ・月の都に帰る;かぐや姫
    ・植物的悪魔の季節;王安石(北宋の政治家・詩人)
    ・鬼女の宴;高浜虚子(爛々と昼の星見え菌生え)「
    ・雪女恋慕行;アフロディテとエロス
    ・緑陰酔生夢;江馬細香(江戸時代の女性漢詩人、画家)
    ・冥界往還記;菅茶山(江戸時代後期の儒学者・漢詩人)
    ・落陽原に登る;麻姑(中国神話に登場する仙女)
    ・海市遊宴;蘇軾(中国北宋代の政治家、詩人、書家)
    ・髑髏小町;通小町(執心男物の能楽)
    ・雪洞桃源;ペルセポネ(ギリシア神話に登場する女神で冥界の女王)
    ・臨湖亭綺譚;白楽天の琵琶行
    ・明月幻記;不明
    ・芒が原逍遥記;黒塚(安達ヶ原の鬼婆を題材にした能)

  • 「桂子さんシリーズ」8/8。彗君が主人公の幻想短編。「ポポイ」に登場の舞子も、もちろん桂子さんもちょい出る。

  • バーテンダーの九鬼さんがつくるカクテルに導かれ、あちらこちらとこの世ならざる場所へ渡っては女性と戯れる慧君が主人公の短篇集。官能的ではあるが描写はやんわりとぼかしていて、変に生々しいエロではないので、お酒の力も借りながら雰囲気に酔うといった感じ。時にふわふわと、時にどろりと痛む感触が心地よい。すっぱりと割り切った展開が好みの人には向かないが、たまには夢幻の世界でまどろみたいという人にはよいと思う。
    和洋中と世界中の詩やら文学、神話からの引用が文中に撒かれているので、知っているものが出てくると思わずにやりとしてしまう(笑)。

  • (2005.12.15読了)(2003.08.03購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    バーテンダーの九鬼さんが作る不思議なカクテルを口にすると、慧君はいつも時空を超えた妖しい空間に迷い込む。そこには鬼女や雪女、あるいは髑髏の美女も姿をあらわし、慧君は体の細胞が溶けていくようなエクスタシーを味わうことに…。この世とあの世の往来を愉しむ極上のファンタジー連作短編集。

    ☆倉橋由美子の本(既読)
    「聖少女」倉橋 由美子著、新潮社、1965.09.05
    「妖女のように」倉橋 由美子著、冬樹社、1966.01.20
    「スミヤキストQの冒険」倉橋 由美子著、講談社、1969.04.24
    「悪い夏」倉橋 由美子著、角川文庫、1970.05.10
    「婚約」倉橋 由美子著、新潮文庫、1971.06.21
    「暗い旅」倉橋 由美子著、新潮文庫、1971.11.30
    「ヴァージニア」倉橋 由美子著、新潮文庫、1973.05.25
    「わたしのなかのかれへ 上」倉橋 由美子著、講談社文庫、1973.09.15
    「わたしのなかのかれへ 下」倉橋 由美子著、講談社文庫、1973.09.15
    「夢の浮橋」倉橋 由美子著、中公文庫、1973.10.10
    「パルタイ」倉橋 由美子著、文春文庫、1975.01.25
    「ポポイ」倉橋 由美子著、新潮文庫、1991.04.25
    「大人のための残酷童話」倉橋 由美子著、新潮文庫、1998.08.01
    「よもつひらさか往還」倉橋 由美子著、講談社、2002.03.20

  • 時空を越え、はるかな異郷とこの世を自在に往来する少年・慧君の幻想的な性的冒険。辛辣で精錬されたユーモアとエスプリ溢れる倉橋由美子待望の連作小説集

  • 何度読み返しても、うっとりしてしまいます。妖艶なマスターのカクテルで、あの世とこの世を繋ぐよもつひら坂を渡れます。

  • 植物的なエロス、芳醇なカクテル、あの世とこの世を自在に行き交う妖しい空間…と倉橋さんのエッセンスが濃縮された
    ような短編集。シュールで残酷でエロいです。<br>しかし文庫版の表紙、あれはないと思う(泣)もっとほかになかったのか…。

著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉橋由美子の作品

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