1492年のマリア

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062110907

感想・レビュー・書評

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  • NHK FM 青春アドベンチャー「1492年のマリア(全10回)」の原作
    http://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2016011.html

  • 2013/04/18
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  • (2004.12.22読了)(2002.08.31購入)
    著者は、工学部を卒業し、情報学を専攻しているので、コンピュータについて、コンピュータの現代社会に及ぼす影響について論じている人のはずなのですが、著作を読んでみると結構文学的な内容に思えたりしていたのですが、最近小説を書き出したとか。
    積読を得意とする僕としては、「刺客の青い花」「1492年のマリア」「アメリカの階梯」と3冊も溜まってしまった圧力でやっと読み出しました。「アメリカの階梯」を先に読んだのですが、レビューは後で書きます。

    舞台は、1490年ごろのスペイン・セビーリャ。主人公は、25歳の航海士、アロンソ・デ・トーレス。ユダヤ人だが、ユダヤ教からキリスト教に改宗したニュー・クリスチャンである。西回りインド航海の計画を立ててスペインやポルトガルの王に許可を得ようとしているクリストバル・コロンと町で出会う。以前にも会って話をしたことがある。
    クリストバル・コロンは、アロンソにユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三教徒の融和を目指したライムンドゥス・ルルスの話をし、ルルスの弟子が書いたという1冊の日誌を渡す。ただでは譲れない。西回り航海に参加してくれるときに支払う手当ての一部で清算してくれという。(一緒にインドに行かないかと誘ったわけだ。)
    1492年1月2日、グラナダは陥落し、ムーア人の国はイベリア半島からなくなった。
    狂信的キリスト教徒、イサベル女王はそれだけでは満足せず、1492年3月31日ユダヤ教徒に対して国外追放令を出した。退去の期限は7月31日。
    キリスト教に改宗すれば退去せずにすむのだが、異端審問所に眼をつけられたら逃れるすべはない。ユダヤ教徒であることを認めなければ死ぬまで拷問が続き、認めれば火あぶりの刑が待っている。いずれにしても死ぬしかない。
    キリスト教に改宗しているロレンソも幼馴染みのロドリゴの密告で、異端審問所に追われる。マリアが一緒に逃げてかくまってくれたのだが、助けを求めた相手がロドリゴだったために、捕まってしまう。ロレンソは火あぶりになり、ロドリゴは、コロンと西回りインド航海に出かける。
    マリアは絶望のあまり、自分の顔に十字を刻み顔を覆って生活する。30年後、西インド諸島から小包が届く。

    ルルスのアフリカ伝道の話、ロレンソとマリアの逃避行。最後のどんでん返し。面白く読めた。

    ●ライムンドゥス・ルルス
    1233年、マジョルカ島のパルマに生まれた。マジョルカ島はもともとイスラム教徒の領土だった。だが、ルルスが生まれる数年前にジャウマ征服王によって占領され、地中海を往来するカタルーニャ商人の中継基地として栄えていた。そこは三宗教並存の地で、住民は依然としてアラビア人が多かったが、ユダヤ人も少なくなかった。
    ルルスの父親はバルセロナ生まれの名門貴族である。ジャウマ征服王に従ってマジョルカ島占領で功績をあげ、王から封土を与えられてパルマに住み着いたのだ。ルルスはなに不自由なく育てられたのだろう。記録によれば、12歳の時ジャウマ征服王の小姓となり、宮仕えを始めた。やがて、詩歌と武芸に秀でた典型的な宮廷騎士に成長していく。
    ルルスが地位も財産も捨て、一介の修道士となるために廷臣を辞したのは、1262年、齢30になろうとしたときだった。脂の乗り切った男盛り、これから重臣として王を支えなくてはならない立場を放棄したとすれば、風狂と言われても仕方がない。
    とはいえ、ルルスのその後の活動は目覚しいものだ。
    残した書物は3百巻近く、哲学、神学、教育、伝道はもとより、科学や文学、さらに百科全書的な分野のものさえある。ラテン語やカタルーニャ語の著作だけではない、アラビア語の著作もたくさんある。そうした中で編まれたという、あの不思議な「アルス・マグナ(大いなる普遍の術)」。

    ルルスの積年の望みは、各地の有力な大学に外国語の講座を設けることだった。それによって「アルス・マグナ」を通じて神の真理を異教徒に説く伝道者が育つことになる。相手の言葉で語りかけることが、伝道には欠くことができない。相手にも理がある。それは相手の言葉の中に潜んでおる。だから、ただこちらの言葉で聖書を説き、理を語るだけでは、相手の説伏など不可能なこと。こちらから相手の言葉に入っていって、そこで、諄々と理を説くのじゃ。

    宇宙は混沌に見える。だが、実は見事な秩序があって、整然たる一元的論理に従っているのだよ。なぜなら宇宙とは、創造主である神がお造りになったものなのだから、万物のなかに神が刻印された御言葉、アルファベットがなくてはおかしい。そして、まさにそのアルファベットを読み解くことこそ、“知”の働きであるのだ。(キリスト教とギリシャ哲学が結びつくことによってこのような考え方が生じてきた。ギリシャ哲学はどこからきたかというと、イスラム世界を通じて、ギリシャ哲学がヨーロッパ中世に伝えられた。アラビア語を学んだ人たちが、アラビア語になっていたギリシャ哲学を翻訳し、ヨーロッパに伝え、ルネッサンスにつながったといわれる。神の造った整然とした秩序を読み解く努力の成果が西洋科学ということになる。そういう意味で、神の存在と西洋科学は矛盾しない。神の存在を前提に西洋科学は作られてきた。オーム真理教の幹部に科学者たちがいるのを不思議と論ずる人たちがいるけれど、西洋科学の成り立ちから見て、何の不思議もなく、ごく当たり前のことと言える。)

    自然のあらゆる個物は、土、空気、火、水という四元素の違った混合の仕方で構成されておる。あらゆる動植物は単一の力によって生育する。もっともそれらは平等ではない。万物は一種の階梯をなしていて、上から順に神、天使、天、人間、動物、植物、無機物などのように多層に分けられる。上層の存在は下層の存在に常に影響を与え、その運行を司っている。(日本人は、人間は動物の一種という考えに抵抗はないけれど、キリスト教徒はそのようには考えてはいない。)

    神の真理を万人(キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒)に納得できるように説くための機械をルルスは作ったという。円盤機械というのだそうだ。それに当たるのが現代のコンピュータ!
    ルルスは、イスラム教徒だろうとユダヤ教徒だろうと、相手の信仰の区別無く、対話を通じて愛を説こうとした。

    ●関連図書
    「インディアスの破壊についての簡潔な報告」ラス・カサス著、岩波文庫
    「ラス=カサス 人と思想」染田秀藤著、清水書院、1997.10.09
    「コロンブス航海誌」コロンブス著、岩波文庫、1977.09.16
    「コロンブス」増田義郎著、岩波新書、1979.08.20
    「コロンブス」青木康征著、中公新書、1989.08.25
    「スペインの新大陸征服」L.ハンケ著、平凡社、1979.10.08
    「新世界のユートピア」増田義郎著、研究社、1971.09.30
    「インディアスの発見」石原保徳著、田畑書店、1980.11.25
    「十二世紀ルネサンス」伊東俊太郎著、岩波書店、1993.01.22
    ☆西垣通さんの本(既読)
    「聖なるヴァーチャル・リアリティ」西垣通著、岩波書店、1995.12.05
    「インターネットの5年後を読む」西垣通著、カッパ・ブックス、1996.04.25
    「インターネット社会の正しい読み方」牧野昇・西垣通著、PHP研究所、1996.11.07
    「デジタル・ナルシス」西垣通著、岩波・同時代、1997.01.14
    「メディアの森」西垣通著、朝日新聞社、1998.10.30
    「こころの情報学」西垣通著、ちくま新書、1999.06.20
    「IT革命」西垣通著、岩波新書、2001.05.18
    「アメリカの階梯」西垣通著、講談社、2004.09.07

    著者 西垣 通
    1948年 東京生まれ
    1972年 東京大学工学部計数工学科卒業
    1991年 「デジタル・ナルシス」でサントリー学芸賞受賞
    専攻は情報学、メディア論
    東京大学大学院情報学環教授

    (「MARC」データベースより)amazon
    1492年=コロンブスの新大陸発見。そして、ユダヤ人のスペイン追放。その時全ては始まった! 壮大なる歴史ロマンに秘められた、情報社会の功罪をめぐる「暗合の糸」。最先端の情報学者が挑む書き下ろし歴史小説。

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