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- / ISBN・EAN: 9784062110976
感想・レビュー・書評
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誰が書いたとも知れぬ小説『三月は深き紅の淵を』の第一章が『黒と茶の幻想』でもあり、表題作の作品があると知り、読んでみようと手に取ると…分厚いっ(汗)!これ、文庫だと上下巻に分かれているようですね。
学生時代の同級生、利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人で、卒業から十数年後Y島を旅することになる…。それぞれが「美しい謎」を持参することが旅の条件になっており、4人の視点から物語が展開する…。4人は何らかの形で現在は姿を消している憂理(『麦の海に沈む果実』」で理瀬のルームメイトだった子)と関わっており、なぜ姿を消したのか、生きているのか、その「美しい謎」に迫る…。これは「美しい謎」の1つ、他にも沢山の「美しい謎」が描かれています。
Y島の自然とあいまって、「美しい謎」がなんだかとっても重厚なものに感じました。いいですね~私もこう気の置けない仲間とこんな旅をしてみたくなりました!この4人が再びY島を訪れる続編も恩田陸さん、手がけてほしいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
40歳、大学同期の男女4名の屋久島旅行
幼馴染、元恋人、親友(訳あり)が旅で過去を振り返る。
ノルウェーの物語を連想する親友の死とトラウマ、禁断の愛などが盛り込まれている。
真実を語らない優しさはなぜ、誤解を生むのだろう?
「利枝子」のような女性はなぜか気になる。
今の年齢だから、楽しめる本かもしれない。 -
再読。恩田作品の中でも一番好きかも知れない。
学生時代の同級生が卒業後十数年を経て、仲間の送別会をきっかけにY島への旅を企画する。
本間節子、辻蒔生、利枝子、三崎彰彦。利枝子と蒔生はかつて恋人同士だった。皆今はそれぞれに家庭を持っている。
旅のテーマは「美しい謎」過去の謎をそれぞれに持ち寄って、旅の間に解決しようと彰彦が提案する。
過去の謎、太古の森への旅。私の大好きなテーマがぎっしり詰まって、まさに宝石箱のよう。恩田世界にどっぷり浸れます。
以下ネタバレ
利枝子と蒔生が別れた原因となる女性に梶原憂理が登場。
「麦の海に沈む果実」で理瀬のルームメイトだった子。彼女の一人芝居ではあの寄宿学校での麗子とのエピソードが語られる。憂理は利枝子の親友だった。何故蒔生は恋人の親友を好きになったのか?憂理は何故姿を消したのか?生きているのか?
彰彦は何故紫陽花が怖いのか?高校時代の親友の友紀が死んだ事を忘れていたのは何故なのか?
節子の夢に度々現れる紫の割烹着の女性は誰なのか?
それぞれが胸に抱いた過去の亡霊が紐解かれていくのがとても面白い。
そして随所にちりばめられた小さな謎解きにもうーん、とうならせられる。
4人が一人ずつ語っていく形式なので、それぞれがお互いに抱いている思いが微妙に擦れ違っていたりして、何気ない会話やエピソードがものすごくツボ。
観光案内としても秀逸。今すぐに屋久島にいってみたくなる。
最初から最後まで一語一句全てが美酒。 -
再読本だと思うのですが、記録になく……。(かなり前に読んだのかな)
大学時代に仲の良かった男女4人組で、とある島の山の中にある有名な杉と、その近くにある心の疚しい人には見えないという、三顧の桜を見に行くことに。
卒業してから10年以上たち、それだけ大人になったからこそ見えてくるものとかもあるわけで。
その時はわからなかったけど、今思うと、こうだったのだね。という話がたくさんありました。(登山しながら、4人で色々な話をしていくので)
麦の海に沈む果実に出てくる憂理が、名前だけ出てきます。
コロナ療養中に読んだ旅行もの。行った気分になれました。 -
この物語がミステリのカテゴリなのかどうかは分らない。そして、読む人全てが深く感銘できる作品だとも思わないし、してくれなくても構わない。だけど、神秘的な雰囲気と謎が複雑な人間関係と絡んで進行するこの不思議でとても素敵な作品は、自分にとってメモリアルな作品になっていることは間違いがない。
男女四人の同級生が屋久島に旅行に行く過程でそれぞれの立場からそれぞれの思いを語る進行は女性の読者向けであるようにも思うが、男が男性の視点で読んでも十分に読み応えがある。
自分や自分の恋人が四人の登場人物の誰に一番近いか、ついつい考えてしまうが、様々な場面で見られる各々の発言や言動にはそれぞれに共感出来る部分が多い。おそらく四人の登場人物のどこかにでも自分の過去を投影出来た人は物語に引き込まれて行くのだと思う。
自分としては最高の評価をする作品であるが、誰彼なく読むのを薦めることは一切したくない。そんな特別な作品である。 -
分厚い本を読み進める勇気?が出るまで、少し時間 がかかりました。 しかし、4人が島に着いてからは、自分でも驚くほ どのスピードで読みました。 それほど続きが気になったんでしょうね。
美しい謎なのかは正直分かりませんでしたが、登場 人物と同世代の今のタイミングで読めたことに、勝 手に縁を感じました。
旅をしたくなりました。