黒と茶の幻想 (Mephisto club)

著者 :
  • 講談社
3.72
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本棚登録 : 1362
レビュー : 230
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062110976

作品紹介・あらすじ

目の前に、こんなにも雄大な森がひろがっているというのに、あたしは見えない森のことを考えていたのだ。どこか狭い場所で眠っている巨大な森のことを。学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子。卒業から十数年を経て、4人はY島へ旅をする。太古の森林の中で、心中に去来するのは閉ざされた『過去』の闇。旅の終わりまでに謎の織りなす綾は解けるのか…?華麗にして「美しい謎」、恩田陸の全てがつまった最高長編。

感想・レビュー・書評

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  • この物語がミステリのカテゴリなのかどうかは分らない。そして、読む人全てが深く感銘できる作品だとも思わないし、してくれなくても構わない。だけど、神秘的な雰囲気と謎が複雑な人間関係と絡んで進行するこの不思議でとても素敵な作品は、自分にとってメモリアルな作品になっていることは間違いがない。
    男女四人の同級生が屋久島に旅行に行く過程でそれぞれの立場からそれぞれの思いを語る進行は女性の読者向けであるようにも思うが、男が男性の視点で読んでも十分に読み応えがある。
    自分や自分の恋人が四人の登場人物の誰に一番近いか、ついつい考えてしまうが、様々な場面で見られる各々の発言や言動にはそれぞれに共感出来る部分が多い。おそらく四人の登場人物のどこかにでも自分の過去を投影出来た人は物語に引き込まれて行くのだと思う。

    自分としては最高の評価をする作品であるが、誰彼なく読むのを薦めることは一切したくない。そんな特別な作品である。

  • 再読。恩田作品の中でも一番好きかも知れない。
    学生時代の同級生が卒業後十数年を経て、仲間の送別会をきっかけにY島への旅を企画する。
    本間節子、辻蒔生、利枝子、三崎彰彦。利枝子と蒔生はかつて恋人同士だった。皆今はそれぞれに家庭を持っている。
    旅のテーマは「美しい謎」過去の謎をそれぞれに持ち寄って、旅の間に解決しようと彰彦が提案する。

    過去の謎、太古の森への旅。私の大好きなテーマがぎっしり詰まって、まさに宝石箱のよう。恩田世界にどっぷり浸れます。
    以下ネタバレ

    利枝子と蒔生が別れた原因となる女性に梶原憂理が登場。
    「麦の海に沈む果実」で理瀬のルームメイトだった子。彼女の一人芝居ではあの寄宿学校での麗子とのエピソードが語られる。憂理は利枝子の親友だった。何故蒔生は恋人の親友を好きになったのか?憂理は何故姿を消したのか?生きているのか?
    彰彦は何故紫陽花が怖いのか?高校時代の親友の友紀が死んだ事を忘れていたのは何故なのか?
    節子の夢に度々現れる紫の割烹着の女性は誰なのか?
    それぞれが胸に抱いた過去の亡霊が紐解かれていくのがとても面白い。
    そして随所にちりばめられた小さな謎解きにもうーん、とうならせられる。
    4人が一人ずつ語っていく形式なので、それぞれがお互いに抱いている思いが微妙に擦れ違っていたりして、何気ない会話やエピソードがものすごくツボ。
    観光案内としても秀逸。今すぐに屋久島にいってみたくなる。
    最初から最後まで一語一句全てが美酒。

  • 大人の遠足、大人の修学旅行。不思議な謎は持ち込まれたり、その場で出会ったり。それぞれが納得できる答えを探していく中で、4人の過去にまつわる謎もほどかれて…。タブーの恋愛を織り混ぜて、そこは恩田さんらしいと感じました♪四人ともが魅力的で、確実に老いながら過去に触れる様は私も経験してみたい程の強い友情が存在していました。一癖も二癖もある蒔生と紫織の存在が光りました。決して気持ちの良い人達ではなかったけれど。自分が優しいと思っている人より、自分は優しくないと知っている人の方が優しいのよ…そうであって欲しいです。

  • この本を初めて読んだのは、中学生か高校生のときで、
    それ以来、屋久島は私の憧れの地となりました。
    近日、いよいよ、屋久島へ行ってきます。
    行く直前に、原点回帰ということで再読。

    大学の同級生である4人の男女が、Y島を旅する物語。
    旅の企画者である彰彦は、残りの3人に招待メールを送った。
    ”『美しい謎』持参のこと。”
    今ではそれぞれに家庭を持ち、別々の場所で仕事をしている彼等。
    太古の森を歩く中で、お互いに持ち寄った『美しい謎』を推理するうちに、
    皆で共有する過去、自分自身の内側にある過去へと迷い込んでいく。
    かつて恋人だった蒔夫が自分の親友を殺したのではと思う、利枝子。
    なぜか紫陽花に恐怖を感じる、彰彦。
    太古の森の中で死んだはずの女を見る、蒔生。
    内気な性格が180度変わったきっかけに覚えのない、節子。
    そして、4人の記憶の中に残る美しい女、憂理。
    彼らは過去という森に潜む『美しい謎』を解き明かせるのか…。


    皆思っていることをズバリと聞かないんですよ。
    それは、この関係性を崩さないためのそれぞれの気遣いでもあり、
    謎が解けたときに自分がどう振る舞うかを自分自身が畏れているからでもあるのです。
    でも、外堀を埋めるようにじわじわと、一人ずつ、謎の核心に近づいていく。
    それにより、少しずつ4人の心境と雰囲気が変わっていく。
    4人の微妙なバランスで保たれている空気感が、臨場感たっぷりに伝わってきます。
    4人がこの結末を迎えられたのは奇跡としか思えない。
    非常に満足のできるラストです。
    恩田作品には珍しい丁寧なラスト。笑

    彼らが51歳になった時のスピンオフとか書いてほしいなー。
    その時は、今回の旅のきっかけになった、
    故郷でがんばっている潔も呼んでさ。
    私は蒔生が再婚していない方に賭けるな。
    利枝子の「しないで」に意外とやられているのでは。

  • 「三月は深き紅の淵を」関連の本。

    第1章:利枝子、第2章:彰彦、第3章:蒔生、第4章:節子と
    それぞれの視点で描かれている。
    それぞれが「美しい謎」を持って屋久島を旅する。
    いろいろな謎が出てくるけど、解決しないものが多い。
    でもそれが良いんじゃないかと思う。正解ってないしね。
    どの登場人物にも感情移入できて、
    それぞれに秘められた想いが伝わってくる。
    他に重要な役割を持っている紫織、憂理もまた魅力的。
    心理描写や登場人物の描き方が上手いなぁって思う。
    何度読んでも引き込まれる物語。



    (図書館→購入)

  • 厚い!笑 四人の会話だけ追っていくと実際の設定よりずっと若く感じられたんだけど、きっと昔の知り合いっていくつになって会ってもあんなかんじで会話するんだろうな。

  • それぞれが内に思いを秘めて臨む旅。好きです。この本はきっと読む歳によって見え方は全く変わってくる本なんだと思います。高校生のときに読めば、個人的には何か学生生活に憧れを抱くような、大学生のときに読めば、青春が何かを考えさせられ、社会人になってから読むと何とも言えない懐かしさが込み上げて来ると思います。また時が経ってから読み返して見たい本です。
    この本を読むなら先に「三月は深き紅の淵を」と「麦の海シリーズ」を読むことをお勧めします。

  • 数十年来の友人同士が屋久島を訪れ、過去の秘密を話し合うという、非常に不穏な感じがする物語。特に最後の語り手がとても感じのいい女性なだけに、実はすごく後味の悪い小説だったらどうしよう、と警戒していたのですが、そうか、こんなふうに締めるのか。人の底知れなさを思わせつつも、根底には、いろんなものを受け入れて変わっていける人間に対する信頼があって、ほっとしました。

  • 小さな魅力的な謎が散りばめられた贅沢な物語。一言でゆうとこんな感じです。 日常の中の小さな美しい謎…こんな旅がしてみたいです。

  • 学生時代の友人同士の利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人で屋久島(Y島と表記)を旅する話。「美しい謎」をテーマに話しながら、最終目標縄文杉と三顧の桜を目指して旅は続く。利枝子の親友だった憂理(「麦の海に沈む果実」に出てくる)はどうなったのか?彰彦の紫陽花が怖い理由とは?節子の突き落とされる夢の根拠は?四十前の男女の友人同士の旅というのがまず面白かった。学生時代と変わったところ、変わらぬところ。そして屋久島の自然。数々の「美しい謎」。最後、節子の章で思わぬ展開となった。長編だが、飽きさせない。

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プロフィール

恩田 陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。幼少期は名古屋、長野、富山、仙台などを転々とする。高校時代は茨城県水戸市に在住。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。
1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。
2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞と第14回本屋大賞を受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。

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