海霧〈下〉

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 11
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062114189

作品紹介・あらすじ

馬を駆る娘がいた野望を秘めた若者もいた。多彩な一族が織りなす北の地の物語。

感想・レビュー・書評

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  • とても面白かった。一昔前の日本人の価値観を、改めて実感しそれをやはり受け継いで行きたいと思わせる本だった。

    真面目に、周囲への気遣いや優しさを持ちながら生きて行く人達が、その勤勉さや努力が報われたり、思うように人生が行かない時があったり、という一家の長い物語。最初は主人公が幸吉。賢く、野心がありそれでも人柄が良い(しかも見栄えもする様子)、もう心から応援したくなる笑。それがまたさよという素晴らしい伴侶を得て、一家が栄えて行く様子は二人の人柄故にまったく嫌味がない。賢い女房を得る事が一家の安定や発展のためには大事なんだな・・と改めて思った。二人の会話がそれぞれのお国言葉で繰り広げられるのもまた味があって楽しい。

    それでもうまく行く事ばかりではなく、やっとできた子供達が大きくなってからは苦労する二人。家の繁栄と存続のために、という目的がまだ個人の感情よりも優先される時代であり、長女は生まれて来る時代が合わなくて気の毒。またその不幸の原因を作ってしまい、苦しむ両親も気の毒。

    不幸な事が結局いくつかあっても、人生を力強く生きて行った人達の、爽やかな物語だった。主要な人達が亡くなってしまうシーンが案外あっさり描かれていたのも、良かったのかもしれない。そうでなかれば、いちいち涙を流す所だった笑。

    まだ私はこのような「一昔前」の日本人について理解し共感できる世代だと思うが、これがもし若い世代にとって、全く意味の分からないものとなってしまったら寂しいな、と思った。

  • 帯より作者の言葉
    「海霧」は、生家をモデルにした一族の物語である。物語である以上、すべて事実であるわけはなく、虚と実とがないまぜになった小説ということになろう。すべてが虚であり、すべてが実であると作者は言いたいけれど、コツの部分について触れるなら、生家は女系であった。父親と馬首を並べて根室まで買い付けに行き、ときには沖積みまで指図して、26歳の若さで世を去った祖母・・・。彼女は少女時代の私のヒロインであった。この物語のパン種は、明治の昔に早世した女人にあるのかもしれない。

    (作者は、作中では千鶴の長女にあたるようである)

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