終戦のローレライ 下

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (606ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062115292

作品紹介・あらすじ

「国家の切腹を断行する」南方戦線で地獄を見た男の、血塗られた終戦工作。命がけで否と答えるべく、その潜水艦は行動を起こす。耐えてくれ、ローレライ。おれたち大人が始めたしょうもない戦争の痛みを全身で受け止めて、行く道を示してくれ。この世界の戦をあまねく鎮めるために。いつか、悲鳴の聞こえない海を取り戻すために-。どの世代にも描き得なかった"あの戦争"がここに。はるかな地平に到達した著者、待望の書下ろし超大作。

感想・レビュー・書評

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  • 好きな作家の一人である。
    一番最初に読んだのが「Twelve YO」だったが、その感激が今も残っている。
    その後、既刊新刊を問わずその時点で刊行されている全てを読破した。
    作風は一貫していて日本または自衛隊の存在意義、男の生き方、そして守るべき存在を如何にして守るか、という「男子の本懐」を指し示しながらそれを一流のエンターテインメントにするところにある。

    強い男に憧れる、極限状態でも冷静な判断を下す、ということに世の中の殆どの男は強い渇望があると思われる。

     第二次世界大戦において、日本に3発目の原子爆弾が投下される予定であった。
    この原爆を阻止すべく戦利潜水艦の乗組員たちが活躍するのが本書のアウトラインである。
    もともと映画化を前提に描かれたそうだが、小説としての完成度はすこぶる高い。
    後に文庫化になったが第一分冊から第四分冊までという長編小説である。

    そこに終戦という歴史の分岐点を生きた男たちのすさまじい生き様が描かれ、それに対する形で、この国の現在を問い直している。

    「もはや戦後ではない」などとなんのことか分からないことを喧伝するよりも、もう一度日本という国の主権を守るためになにをなすべきかについて考えることが必要だ。

    愛国心とは。国家をいかにして守るか。
    50年先、100年先の日本に何を残せるか。
    戦後の日本人であることを問われている。  

    先日「ローレライ」と題された映画も見たが、内容が薄っぺらで小説の世界観、登場人物の内面、背景をほとんど映し出していなかった。
    やはりこれほどボリュームのある原作を映画化することに無理があるのだろう。


    原作のある映画は、ほとんど期待を裏切られることが多い。

    そのなかでも期待を裏切らない映画化のなかに「羊たちの沈黙」トマス・ハリスが挙げられる。
    これは良く出来た映画化である。

    その後の「ハンニバル」は結末が小説と映画では異なっているのだが、私的には小説のラストの方が甘美的で好きである。

  • 読ませる、という力に秀でた作品。
    そして懊悩の部分の入れ方もまた、秀でています。

    もっとも終盤がものすごい力量です。
    その圧倒的な文章の力に
    押しつぶされることなきよう。
    そして、不可避な運命には切なくなることでしょう。
    避けられないんです。絶対に。

    そして、ラスト。
    きちんと読んだ人ならば
    ある人物が感じたこと、わかりますよね。

  • 「2004本屋大賞 8位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/541842

  • とにかく長い。
    ただ、だらだらと長くなってる印象。
    もう少し短くできなかったものか。
    上巻は、勢いがあって面白かったが、下巻から勢いがなくなってしまった。
    残念。

  • ほどよいリアリティとほどよい御都合主義をうまく混ぜ合わせた
    エンターテイメント、ですな。ローレライは嘘だけどCZは本当、とか。

    亡国のイージス」は映画化が無理なので、映画化を念頭に書いた、
    となんか読んだけど、確かに映像が目に浮かぶシーンが多かった気がする。
    ただ、なんかどっかで見たことあるようなシーンがあちこちにあった、気もする。
    まあ気のせいかもだけど。「天誅」のとこ、漫画版パトレイバーとか思い出しましたが。
    面白うございました。

  • 太平洋戦争、潜水艦の話。
    分厚く内容も重たい本だったが、一気読みした。

    次世代に希望を託して、今の自分たちができることをする。
    先人の眼鏡にかなっているのかを常に冷静に俯瞰しつつ、今を生きる。
    それでこそ、生き切ったと言えるのかもしれない。

  • 【390】

  • 再読。やはり長くて重い、けれども読む手が止まらなくなる作品だった。戦闘シーンの緊迫感も読んでてハラハラした。でも印象に残ってるのは戦闘よりも人と人との関わり会うシーンのほうが多いかも。
    ローレライを持って日本に自らの考える"あるべき終戦の形"を押し付けようとする朝倉の凶行に対して、一度は朝倉の言葉に傾きながら「ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」と、断固とした態度で拒絶したり、無茶で無謀で一見絶対成功できっこない作戦を完遂させて「作戦完了。本館はこれより帰還の途につく。機関始動」という言葉を吐く絹見艦長がカッコ良かった。帰還中に皆で「椰子の実」を歌うシーンは泣けてきました。ソレに対して終章は少し読んでて寂しかった。その後は知りたいけどもう少しスッキリ終わらなかったものかな

  • 「国家の切腹を断行する」南方戦線で地獄を見た男の、血塗られた終戦工作。命がけで否と答えるべく、その潜水艦は行動を起こす。耐えてくれ、ローレライ。おれたち大人が始めたしょうもない戦争の痛みを全身で受け止めて、行く道を示してくれ。この世界の戦をあまねく鎮めるために。いつか、悲鳴の聞こえない海を取り戻すために―。

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著者プロフィール

1968年東京都墨田区生まれ。98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年刊行の2作目『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2003年『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞を受賞。05年には原作を手がけた映画『ローレライ(原作:終戦のローレライ)』『戦国自衛隊1549(原案:半村良氏)』 『亡国のイージス』が相次いで公開され話題になる。他著に『川の深さは』『小説・震災後』『Op.ローズダスト』『機動戦士ガンダムUC』などがある。

「2015年 『人類資金(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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