奇偶

著者 :
  • 講談社
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (610ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062115827

作品紹介・あらすじ

神の名は-。混迷の中、片目になった推理作家は、自らの墓碑銘を書き始めた。その墓碑銘は…"偶然"。『生ける屍の死』以来の大長編1200枚。

感想・レビュー・書評

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  • 評価を聞いても、みんな首をひねるばかりで、的を得た答えが返ってこない理由が、ようやくわかりました。これは奇書だ。

    骰子からはじまり、ユング、シンクロ二ティ、ボーアの手袋、不確定性原理、不完全性定理、量子学、確率、因果、運命、シュレディンガー、心理学、易学、神の意志、そして宇宙…

    【偶然】を講義する作品。でしかない…こじらせています。密室殺人なんて壁に投げてください。

    小説としては、絶対に勧められない。ただ、これほどわかりやくアンチミステリであり、作者が限界に挑戦した作品は、知らない。奇書を極める者達は、必ず通る道であろう。

    読んでいる間は、案外面白かった。
    「さんざんこねくり回したんだから、アレも出せよー」
    が本当に最後出てきて大笑い。

  • 「どんな内容なんだ?」
    「一種の推理小説仕立てになっている。奇妙な連続死は出てくるし、犯人探しの推理も出てくる。だがこれは、通常の推理小説とは、かなり違った感触を与える作品だよ」
    「どこが特異なんだ?」
    「連続する人の死に絡めて、偶然事象が頻発する――というような不可解な出来事が描かれていて、登場人物たちが、事件そっちのけで、蜿蜒と抽象的な議論を交わすんだ。《偶然》を俎上に載せて、あらゆる分野からの見当がなされる。背景と前景がまったく転倒していて、犯人が誰かということよりも、もっぱら、《偶然》というテーマの追求に血道を上げているようなのだ。いかようにも読める小説と言うか――」
    「――で、その大作の結末はどうなっているんだい?」


    -----*システムがビジー状態になっています。-----

     徹頭徹尾、《偶然》のタブーに挑戦したメタフィクショナルな小説。
     あなたがこのレヴューを読む気になったのは、間違いなく《偶然》だろう。その《偶然》に、意味の有無を考えたことはあるだろうか。
     このサイトに来たのが《偶然》なら、ブラウザを開いたのも《偶然》。コンピュータを起動させたのも《偶然》なら、今起きているのも《偶然》だ。
     どの《偶然》に意味があり、どの《偶然》に意味がないのか。
     暇ができた時、この小説で《偶然》の迷宮を楽しんでみてはいかがだろうか。

  • 読みにくい。一度挫折し、リベンジ。
    偶然に関わるエピソードはそれぞれ面白く、それらがメインのストーリーと絡んでいくところも興味深かった。しかしさくさく読めるミステリーに慣れている身としては、量子論やら哲学やら易学やら、知らない分野の情報を理解しようとすると、非常に難解で時間がかかった。
    いくつもの偶然に精神に異常を懐していく主人公、そしてその他の登場人物もそれぞれ癖があり中盤はテンポよく進む。新興宗教、密室殺人とミステリーらしくなってくるものの、終わり方が微妙。これがいいと思う方もいるのだろうが、私は密室トリックや殺人事件に纏わるストーリーがもう少し充実して欲しかったなという印象。
    筆者の知識の幅には脱帽。

  • 人間原理。

  •  この文量の長編としては「生ける屍の死」以来(!)だそうで。歌詞の一部をエピグラムにしたり、確かに近い感触かも。ただし内容的にはおよそ別物。

     キッド・ピストルズシリーズの背景としてはおなじみ、量子力学とりわけ不確定性定理に関する記述がここでもかなり紙面を割いていて、確率論的パラドックス等における著者の関心が相当なものであることが窺われる。

     とにかく文中の言葉を借りて言えば“鵺のようなグロテスクな”ミステリ風思弁小説であることは疑いない。そんなわけなので、ミステリミステリしたミステリや、ラストラストしたラストを期待する向きにはちょっと・・・

     逆に、巻末の参考・引用文献にピクリときた方にはお薦め(ブルーバックス『確率の世界』とか講談社現代新書『ゲーデルの哲学』とか)。

  • 日本ミステリー界において、四大奇書といわれる作品があるのだが、その5作目の候補に挙げられている(らしい)本作。
    次々に起こる「偶然の出来事」、その因果関係に囚われ、徐々に狂い出す主人公。奇遇という事象を説明するために繰り広げられる膨大な知識と解釈。
    不確定性原理とか密室殺人の解答として受け入れていいものなのだろうかと、若干気になったけども、ページをめくる手が止まらなかった。

  • 小説において、語り手の言うことがその世界における絶対であるのに、この本において語り手は自ら自分を否定している。その点においては、『ドグラ・マグラ』と似ているが、『奇偶』では、語り手の口調はあくまで理知的で、科学理論を盾にしている。それは、読者を科学の狂気な世界に誘う。すなわち、理屈っぽい科学を感覚で読み取ることができる。
    文中に出てくる知識は実に難解なものが多い。その上、分厚い本であるため、読み始めは実に読破に対して不安になるが、すぐに引き込まれて先が気になってはページを捲り始める。
    まったく、理系科目の教科書もこれほど面白かったら、科学の魅力に気づく人がもっと増えるのではないのだろうか。

  • とにかく壮大。難解。でも読み始めると、妙に取り憑かれてしまう作品(とはいえ前回一度挫折したのだけれど)。「偶然」というものの恐ろしさを知った気分。何事も疑い始めるときりがないのだけれど、全ては「偶然」の力なんだものね。
    さて、これが「本格ミステリ」なのかどうかは評価が分かれるところらしいけれど。道具立ては本格ミステリそのものでしょ。ただし結末は……どうだろ? 密室殺人?の謎解きなんて、バカミスっぽいし。やはり山口さん自身が言われていたように、「偶然の物語」というのがいちばんぴったりくる表現。

  • この小説では、やっちゃいけないことを2つ、やってると思います。1つは、作者も認めているように、「偶然を推理小説にふんだんに盛り込む」ということ。もう1つは「自論を述べすぎて小説と言う体系から離れている」ということです。よって、面白くないし、オチもNGだと思います。山口さんの自説を、ちゃんとした論文で読んでいたら、面白いと思う。

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