- Amazon.co.jp ・本 (598ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062117616
作品紹介・あらすじ
酒鬼薔薇聖斗とは、何者だったのか?少年の犯行の動機は?時を経ても未だ解明されない「あの事件」の闇に著者が満を持して挑む、衝撃の書下ろしミステリイ。
感想・レビュー・書評
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佳多山ミステリガイドから。本作が推挙されていた章の、他に挙げられていた作品に好きな作品が多くて、それならこれも読んどこ、ってことで。単行本上下段600頁という分量にちょっと怯んだんだけど、少年A事件とかも関わっているというあらすじ紹介を見て、じゃあ頑張ってみよかな、と。結果的に、頑張ってみて良かった。正直、最初から最後まで、作中作としての”赫い月照”パートは苦手だったけど、そこを流し読んでも内容理解にはそれほど支障ないし、それ以外のパートの展開が絶妙で、思わず惹き込まれる。『これ、ひょっとして、また多重人格モノ…?』っていう懸念も途中で感じたんだけど、そっちに転んでくれなかったのも個人的にはポイント高し。後味の悪さも、何なら自分好み。意外な掘り出し物でした。
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人の首を切ることに快感を感じるということが、私にはまったく理解できないでいたけれど、読み終わって、その手の犯人の心理を追体験したかのような感覚を味わった。
命の授業と称して、動物を育てたあと殺して食べるというのが映画か何かにもなっていたけれど、某国立大倫理学の教授が
「そういう指導をしても、100人生徒がいたら、1人くらいはエクスタシーを感じる子供がいる。そして繰り返すようになる。命の大切さは喪失の痛みであって、生きているものを殺すことからは学べるものではない。喪失の痛みは、大切にしているぬいぐるみを失うことからでも学べる。」
とおっしゃっていた。
その言葉をうかがった時に、生き物を殺して快感を得るなんて、そんな子供がいるんですかとたずねた私に対して、必ずいるとお答えになった。
その時の私が感覚的にうなずけなかったのは、私が男ではなく女だからなのだというのを、この小説でやっと理解した。そして、某教授の発言もきっと正しいのだろう。
犯罪に向かうかどうかは別として、残虐な行為の中に、エクスタシーを感じる思春期の子供というのは、少なからず存在するのだろう。
だからこそ、その手のビデオが商売になるわけだ。
ストーリーの複雑で広い展開と収束の見事さも素晴らしく、読み終わった後、しばらく自分が異世界にいたようなそんな錯覚まで感じさせてくれた。 -
少年犯罪と神戸ネタ満載。作中作もあり、ころころ変わる場面展開とこれでもかというほどに詰め込まれた要素が少しうっとうしく感じられないでもなかったけれど、それらが最後にぴしっとはまったのにはびっくり。少年犯罪モチーフのようで、だけどテーマはそこだけにとどまっていないし。マスコミや警察による「動機の誘導」ってのも、考えさせられる問題だなあ。実際ありそうだものね。それにしてもこの結末は……ひどいな警察(愕然)。
しかしこれ「恋霊館事件」とか読んでからのほうがよかったのかもしれないです。ネタばれはなかったみたいだけれどね。 -
力が入ってる、それゆえに読んでるほうが気圧されてしまう。あまりにも多くの不可能犯罪というか幻想的な謎が提示されて、それが最後の場面で一気に解かれていく。よくもまあこれだけの謎が解決されるもんだという感想。