凄い時代 勝負は二〇一一年

著者 :
  • 講談社
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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062120807

作品紹介・あらすじ

空前の“大変”をどう生き抜けばいいのか?
金融、経済、外交、そして国内の諸問題。すべてが未曾有の惨状に陥っている。海図のない航海で、座礁せずに進むにはどうするか。堺屋太一ならではの認識と提言。

感想・レビュー・書評

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  • 久々に堺屋氏の新刊本を読みました、日本は彼の主張を取り入れていないようで、彼が以前に執筆したシュミレーション小説(平成30年)の通りになってしまうのかもしれません。

    日本の改革は不十分だとは言いつつも、彼が経済企画庁の長官をしたときに行ったブロードバンドの普及については毎度のことながら述べられていましたが。バブル景気が生まれた原因(p67)、植民地が独立できた原因(p125)に関するコメントは興味深かったです。

    以下は気なったポイントです。

    ・2008年のうちに金融大破綻の危機が回避できたのは、1)いずれの国も通貨援助をし合う、2)赤字予算を組んで需要を創造して、景気を振興する、である(p19)

    ・日本の問題は、製造業を中心とした物財面のみを自由化しながら、21世紀の成長分野である、医療・介護・育児・教育・都市運営・農業を完全な統制のままにしてきたこと(p31)

    ・21世紀の新世界にふさわしい地価社会にする大改革をするためには、1)気質(価値観)、2)体質(行為基準)、3)体格(社会構造)を抜本的に変える必要あり(p35)

    ・最も危険なのは長期の消費者金融なので、その前に運転資金(ジャング・ボンド)、設備資金(ITブーム)が普及した(p45)

    ・新しい工業を興すには、1)巨額資本(規格大量生産を実現)、2)広域市場(大量販売する場)、3)中堅技能者の大群(販売機構の運営)、が必要である(p49)

    ・世界に先駆けて新しい時代を開くのが難しいのは、成長する新産業より衰退する古い産業のほうが、生産量・就業者数がずっと大きいから(p59)

    ・中国は一人当たり3000ドル所得の貧しい状況だが、2008年に600万人の大学卒業者がでた、中国の生産力は世界比6%に対して、大卒者数は30%(p64)

    ・バブル景気が生まれた原因は、1)過大な将来予想、2)円高不況を恐れて低金利政策、3)多くの開発プロジェクトを実行、である(p67)

    ・80年代の円高時は、日本国内の市場は日本企業の聖域であった、国内流通・企業系列により輸入品は制限され、日本製品を高値で売れた(p69)

    ・橋本内閣の失敗は、金融と経済構造改革の前に、財政改革(消費税率アップ、医療費負担)をしたから(p75)

    ・企業や都市の盛衰を決めるのは、ビジネスモデルや技術開発の中核となるごく小数の人々、歌舞伎の場合、中心となる役者100人の周りには11.1万人が職を得ている(p88)

    ・アメリカでサブプライムローン危機が発生すると、アメリカの金融業者が資金を欧州から引き上げ、欧州機関はユーロ資産を売却してドル借金を返済したので、東欧には返す金がなかったので危機に陥った(p122)

    ・石油に始まる資源、農作物の過剰により、その供給地としての植民地の存在価値がなくなったため、独立した(p125)

    ・冷戦構造の消滅により、1)ドイツ再統一、2)欧州統合の大改革、3)軍事面によるアメリカの一極支配、4)経済のグローバル化がもたらされた(p135)

    ・ユーロが基軸通貨になりえないのは、1)税制、財政権限が各国政府にある、2)発券額が少ない、3)政治的軍事的力が少ない、である(p142)

    ・世界の価格を決める正当性を満たす条件は、1)自由、2)公開、3)先物、である(p218)

    ・暗く辛い世の中にした将軍が好評なのは、その記述者がほとんどが下級武士であったから、彼らは不況では相対的に豊かになるので(p227)

    ・金融危機の損失が少ない日本が、実態経済で最大になる理由は、1)日本は水平分業なので輸出が減少するほど輸入が減少しない、2)高級品に集中、3)経営体質が古く労務費の弾力性が乏しい(p250)

    ・小泉内閣の特徴は、1)主流派以外から生まれた、2)国公営事業の民営化に熱心、3)長年の財政運営の基本(ケインズ政策)を否定して国債発行を限定し公共事業を削減である(p279)

    ・公務員制度改革の要点は、1)公務員を身分から職業に、2)官僚内閣制から議院内閣制へ、である(p298)

  • 2011年のはじめに図書館で見つけ、早速借りてきた1冊です。副題に「勝負は2011年」とあるので、これを今まで読んでいなかったのだから、今年こそ読むべきだろうと。
    ちなみに、出版は2009年9月、リーマンショックから1年がたち、民主党が政権を奪った直後に書かれたものです。

    バブル崩壊以降、豊かさの指標が変化しました。つまり、モノや財産が多くあることが豊かだとされてきた時代から、精神的な満足を求める時代への変化です。そのためにはモノよりも知識や情報が価値を持つようになり、著者の堺屋氏は本書で「知価革命」という言葉で表現しています。

    そして、2008年9月に起こったリーマンショックについても、かなり突っ込んで分析されています。サブプライムローンの破綻に端を発する金融危機であることは間違いないのですが、その遠因として国際金融市場の構造的問題、もっと深掘りすれば国際基軸通貨であるドルが、国際通貨であることのみが信頼の理由となっていたため、信頼が崩れると崩壊を止められなかったことを指摘しています。

    翻って、日本は製造業で発展してきた国であり、それゆえにモノへの依存が強く、l知価革命への対応が遅れたという状況にあります。サブプライムローンの影響を直接に受けなかった日本が、金融危機のダメージが最も大きかった理由もそこにあり、金融危機を脱した後に日本が国際的なプレゼンスを失うのか、新しい価値を得るのかの分岐点は2011年、今年にやってくるということでした。

    おもしろいのが、江戸時代の日本経済を分析した部分。悪君とされた徳川綱吉の時代は元禄文化が花開き、世界最初の先物取引(大阪の米問屋)もこの時期であったといいます。名君と名高い吉宗の時代は、統制経済により不況を招いたとして、かなり批判的にみていました。

    ここまでは書籍の内容のまとめで、ここからは私の感想。
    正直なところ、日本の将来については、悲観せざるを得ない部分があります。日本という国に限らず、どんな組織でも個人でもそうですが、自分から変わることは非常に難しい。国の場合、革命か外圧かで変容させられることになるのですが、日本で革命は起こるはずもなく、米国自身も不況にあえいでいる中では、日本がよい方向に変容する外圧を期待できません。
    本書でも明治維新なみの改革が必要で、公務員を一生が保証された「身分」から能力のある人材がつく「職業」へ改革すること、国の権限を弱めて道州制を導入することなどを提言していますが、実現はまず不可能でしょう。

    ただ、知価革命という考え方は賛同できますし、高齢化を国の没落の象徴ではなく、価値を創造していく武器と考えるのは十分に現実的な考え方だと思いました。国ではなく、個人単位で知価革命を成し遂げていくのが、これからの私たちの生きていく道ではないかと考えています

  • 過去の歴史から未来の歴史を予測するには定評のある、元経済企画庁長官堺屋太一氏の著書。

    問題の2011年になったが、その年には震災が起こった。理想論とも言われることも多いが、本書の指摘するように構造が大きく転換している中で、どのように生きるべきかを指南している本であると思う。

  • “2009/11/17
     「知価革命」がいまいち分かりに​くい。
    他に説明の仕方はないもの​かなぁ...

    2010/07/28
     二度目。印象がなかったんだなぁ​。”

  • 堺屋太一さん最高ですね。やや読みにくいところもありましたが、これほど日本&世界を浮き彫りにしているので面白かった。変わりゆく世界を知るにはベストな本かもしれません。世界構造、金融構造、人口構造など色んな角度で検証されているので参考になりますよ☆

  • 過去の経済を分析し、将来の世界経済、国際社会、日本を予想した書。
    これまでの日本は近代工業社会で、物質面の豊かさを求めてきたが、既に英米では知価社会といって、物質的な面よりも個人の満足度を向上させる価値観が主流をしめている社会になってきている。そうすると近代工業社会用の社会体制を築いてきた日本は、この波に乗り遅れることになる。
    グローバリズム、自由化の交代は孤立主義と国際的対立でしかない。
    サブプライム以降何とか、景気回復しているが、それは財政出動によるものであり、その効果が切れたとき、真に景気回復していないと二番底があるかもしれない。
    日本が生き残る道は、自由主義経済体質を築き、競争原理体積を築くこと。
    官僚依存体質はだめ。地域主権確立により国旗亜公務員を3割とする。国の借金も地方に分散する。
    終身雇用制度も緩和せよ。
    今の官僚制は省益重視、官僚家族主義的でだめ。官僚人事制度を見直せ。
    地方分遣し、国の役割は外交や防衛等に絞り込め。
    とにかくグロール化と自由化が必要。学校なども、自由化により、学区制ではなく、自由に学校を選択することにより,学校の室があがっていく。

  • 元経済企画庁長官が書いた本。
    現在の日本とそれを取り巻く環境を一から説明してくれているのであまり詳しくない自分でもわかりやすく読むことができた。
    最近自分は時事問題に疎いと感じたのでそれを克服しようと読んだ一冊。

  • 明治維新と現代社会を上手く対比させて、わかりやすく解説。ほんとはどうっだったか、という経済構造の裏を垣間見た。

  • 最近の日本と世界の経済状況。平成の大不況と今後世界はどうなっていくのか。詳しく解説されていて、経済への理解度を深めることができました。

  • 凄い時代、知価社会をはじめ、聞きなれない言葉が多くあるが、日本・世界の動向を知る上でとても役立つ本だと思う。
    本著では、金融危機とそれ以前、今後の展望・解決策が述べられているが、現在は"日本も世界も大きな変革期にあり"、"その変化がチャンスになる"という認識、危機感には、大きな刺激を受けた。

    …中国を他国と比べて、日本の高齢者を他の産業と比べて、評価し過ぎている気もするが。

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著者プロフィール

堺屋太一

一九三五年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省し、日本万国博覧会を企画、開催したほか、沖縄海洋博覧会や「サンシャイン計画」を推進した。在職中の七五年、『油断!』で作家デビュー。七八年に退官し、執筆、講演、イベントプロデュースを行う。予測小説の分野を拓き、経済、文明評論、歴史小説など多くの作品を発表。「団塊の世代」という言葉を生んだ同名作をはじめ、『峠の群像』『知価革命』など多くの作品がベストセラーとなった。一九九八年から二〇〇〇年まで小渕恵三、森喜朗内閣で経済企画庁長官、二〇一三年から安倍晋三内閣の内閣官房参与を務めた。一九年、没。

「2022年 『組織の盛衰 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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