DNA

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感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062121729

作品紹介・あらすじ

二重らせん発見から50年生命の謎がいま明かされる!実験室から食卓まで、難病克服から犯罪捜査まで、もはや遺伝子抜きで世界は語れない。DNAをめぐる人類の壮大な試みはどこへ向かうのか?ワトソン博士が生命の神秘と科学の可能性に迫る。DNAのすべてがわかる決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 昔読んだ本

  • 本書は1953年にDNAの二重らせん構造を発見しノーベル医学・生理学賞を受賞したジェームス・ワトソン博士が、研究の歴史と未来を解説したもの。
     まずは遺伝を科学の領域で捉えようとしたメンデルの業績から、二重らせん構造の発見、その後の「ヒトゲノム計画」の歴史を振り返る。方程式や化学記号が並ぶ専門書とは異なるのは、人間の社会的営みや歴史的背景の中での意義や批判を軸とした解説を加えている点だ。ナチスの思想に代表される「優生学」の暗い歴史や、先端研究に影響を与える政治的思惑についても、けれん味なく言及する。そのうえで「遺伝は行動や能力を『決定』する因子ではなく、いわばポテンシャル」という見解を示し、遺伝か環境かの議論が時代遅れであることを証明する。
     遺伝子組み換え農作物や塩基配列特許の是非論、DNA鑑定など今日的課題についても深い見識を示す。

    (日経ビジネス 2004/02/09 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
    -- 日経BP企画

  • 著者のジェームス・ワトソンとフランシス・クリックによるDNA二重らせん構造の発見からまだ61年しか経っていないがその間にヒトゲノムの全塩基解析が終わり、バイオテクノロジーは大きな産業となった。まだこれからの技術も含めそのワトソンが遺伝学の始まりから現在までをレビューしたのが本書なのだが最も気になるのがその二重らせん構造を発見したいきさつをどう描いたかだった。

    1951年にはDNA骨格の構造が非常に規則的であることがわかってきていた。ワトソンが博士論文を書き上げDNAを研究できるコペンハーゲンの研究所に移ったのが1950年、翌51年に期待せずに出たX線解析の小さな会議でノーベル賞を同時受賞したケンブリッジ大キングスカレッジのモーリス・ウィルキンスが発表した写真が極めて規則的な結晶構造を示しているのを見たがこの時点ではまだ何も見つかってはいない。ワトソンはウィルキンスに手伝いたいと申し出るが相手にされていない。ちょうどこのころアメリカではライナス・ポーリングが分子模型を作るという今では当たり前の方法によりタンパク質の構造をアルファらせんだと推測し、わずか1週間後にその正しさが確かめられた。

    51年秋DNAの構造を解明するためにX線構造解析を学ぼうとキャベンディッシュ研究所に移ったワトソンは23歳でここで同じ部屋を使うフランシス・クリックと出会った。ワトソンはポーリングの模型をDNAに適応できないかとクリックに尋ね、クリックは旧友のウィルキンスを呼び進展を聴くことになった。このころウィルキンスはらせん構造を予想していたがそれは三重鎖だった。ウィルキンスの同僚ロザリンド・フランクリンは模型作りに反対しウィルキンスとは大げんかをしていたためウィルキンスはフランクリンの実験の進捗を知らず、フランクリンのセミナーに出席したワトソンがその内容をヒントに三重鎖のモデルを作ったのだが、結晶学の初心者だったワトソンはセミナーの内容を勘違いしDNAが水分を含まないモデルで模型を作ったためフランクリンは一瞥してそのモデルは間違っていると指摘しますます模型作りに反対するようになった。そしてワトソン=クリックはDNAのモデル作りから手を引き構造解析はキングスカレッジに任せるように言い渡されてしまっている。

    53年に入るとポーリングが三重鎖モデルを発表したが、この論文には明らかな欠陥があった。ワトソンはウィルキンスとフランクリンにらせんモデルを説明するがフランクリンは取り合わない。そこで今ならもの凄い批判を浴びるやり方だが、ウィルキンスはフランクリンには内緒でX線写真を見せた。後にウィルキンスは元々自分にフランクリンのデーターの閲覧権があったと釈明しているのだが。この時までワトソンが知らなかったB型DNAの写真には十字形の影が写っており明らかにらせん構造を支持していた。後はどういうモデルを作るか、しかしこの時点でもワトソンは塩基が互いに水素結合をしているというデーターを無視していた。それはワトソンが持っていた核酸の教科書が間違っていたためで2月27日にその間違いを教えられたワトソンは模型の水素原子の一を変更し翌28日に正しいモデルが完成した。それはシャルガフのデーターを元にクリックが予測していたアデニン=チミン、グアニン=シトシンのペアを裏付けるものでもあった。

    ノーベル賞の元となったワトソン=クリックの短い論文はわずか1ページ、以前に発表された三重鎖モデルの欠陥を指摘し二重らせんモデルのペア構造を説明したものだ。そしてその論文はウィルキンスとフランクリンのデーターとアイデアに刺激されたと結ばれている。フランクリンが生きていれば同時受賞者は彼女だったかも知れないと本書では書いているが、別の本ではワトソンはフランクリンには二重らせん構造は発見できないとばっさり言い切っている。この本でもフランクリンを誉めてたりその功績を認めてるわけではない。(「二重らせん」はまだ読んでませんがそっちではもっとぼろくそだとか。「ロザリンド・フランクリンとDNA-盗まれた栄光」「ダークレディと呼ばれて 二重らせん発見とロザリンド・フランクリンの真実」「二重らせん第三の男」も合わせて読みたいのだが・・・)

    直感に基づいてモデルを作り上げたワトソンの功績はセレンディピティと言うにはあまりにも強引だ、それにしても自前のデーターは何もない。ただその直感は正しかったということだ。

    他に紹介しているのはDNA鑑定、遺伝子治療、遺伝子組み換え技術からイブの7人の娘の話もあり各章だけでも1冊の本が書ける内容だ。ちなみにワトソンは遺伝子治療には条件付き賛成で組み替え作物は問題なく賛成。一方で企業が解析した病原遺伝子の情報を特許化するのには反対している。なかなか良い人とは言いにくいし、あまり一緒に働きたいタイプではないがこの本の内容はすばらしい。まあ共著者がサイエンス・ライターなのでそこで上手くまとめてるのかも知れないのだが。

  • 遺伝子組み替え作物は別に怖くないのだなということがわかった。生物を全く知らなくてもわかりやすく遺伝子の面白さを解説してくれる。バイオテクノロジーを恐れるのはよく知らないからなのだな、と思った。

  • 遺伝子について勉強せずに「遺伝子組み換え食品はキケンだ!」という人は、まだ議論の土台に立ってもいませんよ。

  • DNAの二重らせん構造の発見者、ジェームズ・D・ワトソンが
    DNAと科学にまつわる20世紀のストーリーを
    つむぎだす。

    DNAが何かということを学べる。
    そして、DNAが現実社会にどのようにかかわり合ってきたかという
    豊富な実例を知ることができる。
    読み物として非常に面白い。

    犯罪や事件の真実の証明とDNA技術の関わりは、
    すごいミステリーを読んでいるかのようなおもしろさ。

    そして遺伝子工学とビジネスの結びつきに関しては、
    そのビジネス界のパワーに圧倒される。
    「お金を稼ぐ」というミームの強力さを
    感じるなぁ…。

    ワトソンという人は、遺伝子工学がビジネスに
    強力に取り込まれることについて、
    良いとも悪いとも言わない。
    科学者らしい客観的な視点で、何が起きているかを
    捉えている。
    このあたり、非常に好感を持つ。

    とはいえ、じゃあ科学者は現実社会に関わりません、
    というようなスタンスの人でもない。
    まったく逆である。
    科学の知見を正しく理解し、その成果をもって、
    人がよりよく生きられるあり方を探っているのである。

    もちろん、ワトソンは創造論者ではない(当然だけど)。
    そして、宗教への過信に対して警句を発する。

    ------------------------------------
    p.508

    私は、人が自らの道徳的指針として宗教に頼る権利に異議を唱える
    つもりはない。しかし大いに反論したいのは、宗教的な人たちは
    あまりにもしばしば、無神論者には道徳のかけらもないと
    決めつけることだ。思うに、宗教という古代に書かれた道徳律の
    必要性を感じない人たちは、生まれつきの道徳的直感のみを
    頼みにしているのだろう― それは宗教よりもはるか昔に、
    私たちの祖先の集団がよくまとまった社会を作るよう自然選択によって
    形づくられたものだ。
    (略)
    これから何世紀という時間のなかで遺伝学が発展し、多くの人たちが
    「自分という人間は遺伝子のさいころをでたらめに振った産物だ―
     つまり、両親の遺伝子の偶然による組み合わせと、これまた偶然による
     突然変異により作られたのだ」と考えるようになれば、
    今日の宗教よりはるかに歴史の古い智恵が、宗教的にも受け入れられるように
    なるのではないだろうか。そして、人間創造の仕様書である私たちのDNAが、
    宗教の経典に代わって真理の番人になるかもしれない。
    ------------------------------------

    まさに、リチャード・ドーキンスやスティーブン・ピンカーらの
    科学者たちが言うことに繋がる
    (というか、ワトソンがある意味では師匠ということになるか・笑)。

    日本人は、ワトソンが言う「宗教以前の道徳律」を活かして
    発展した今日での稀有な実例だと個人的には思う。
    我々の宗教へのスタンスは実に一貫性がなく、好き勝手をやっているが、
    世界のあらゆる国の中で際立って治安がよく、安定した国であることを
    否定する人は少ないだろう。

    さよなら数千年の一神教。 こんにちは数十億年の遺伝子。
    私も、そんな未来にワクワクする一人である。

  • めちゃくちゃおもしろかった。小説のようにおもしろく、教科書のように知識がつき、新聞のように考えさせらるので、1冊で3倍ぐらい得した気分になれる。

    2重螺旋の発見でノーベル賞を受賞した、ジェームズ・ワトソンが、アンドリュー・ベリーという生物学者でもあるライターとともに書いた本である。2重螺旋の構造から、遺伝学の歴史、遺伝学の問題、今後の展望を彼独自の視点でまくし立てている。

    専門的なことを述べている部分はまったくついていけないところもあったが、わからなくても読み進められる。なにより、ワトソンの学者としての遺伝学への情熱がひしひしと伝わってくる。ただ、この本はあくまで一人の遺伝学者の考えを述べている本である。たとえば、遺伝子組み換え作物の問題など、「なんでも反対屋さんの罪」はもっともだと思うが、彼の考え方自体は科学至上主義ので、偏りがあるように思う。ビジネスや倫理の問題などは、老人の愚痴とも思えるような記述も多い。それでも、彼の遺伝学に対する愛情を持った記述には心を動かされるし、これまで持っていたさまざまな偏見を正す良い機会になったと思う。少なくとも、(抑えきれてはないが)感情を抑えて、理路整然と実証された事実のみを書くように心がけてあり、中途半端なことや、エセ科学的なことは書いてない。

    なにより、この本を読んでいると、学問に対する愛情がわいてくる。この本を読んで、学者になりたい、なればよかった・・・と思う人は多いのではないだろうか。そう思わせるほど、この本からは彼の熱意や愛情が伝わってくる。また、ライターが共著しているためか、文章もとてもうまく、引き込まれて夢中になって読んでしまった。

    後で調べたところによると、ワトソンは、実直に物を言い過ぎることによって批判も多いらしい。実際、この本の中でもタブー視されそうな問題についてもずかずかと率直に意見を述べている。若くしてノーベル賞をとって地位を築いた人だからこそ許されることだと思うが、中途半端にもったいをつけずに、自分の意見を意見としてストレートに伝えているところには非常に好感がもてた。

  • 図書館にて借読。
    ノンフィクションの中に隠される人間ドラマにに大変自分が弱いことを自覚してからこういう読み物に惹かれがちです。
    理系には学生時代さっぱり興味を示さなかったのが悔やまれるくらいおもしろかった。
    自分で考えることは出来ないがこうやって知識として汲み取るには大変興味をそそられた。

  • bookscaned

  • 二重らせんの発見からヒトの遺伝子への応用まで、DNAに関するあらゆるドラマが分かりやすく語られている。内容が内容だけにこれ1冊だけでは駆け足になってしまっているが、興味のあるテーマはそれぞれもっと詳しい書物を読めばいいと思う。

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