壊れた脳 生存する知

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 250
感想 : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062122689

作品紹介・あらすじ

「からっぽになった脳」を少しずつ埋めていく「成長のし直し」の記録!
3度の脳出血、その後遺症と闘う医師の生き方!
靴のつま先とかかとを逆に履こうとする。食事中、持っていた皿をスープ皿の中に置いてしまう。和式の便器に足を突っ込む……。なぜこんな失敗をしでかすのか、自分でもさっぱりわからなかった。

「何やってんだろう、私」
そう。高次脳機能障害の本当のつらさがここにある。おかしな自分がわかるからつらい。知能の低下はひどくないので、自分の失敗がわかる。失敗したとき、人が何を言っているかもわかる。だから悲しい。いっこうにしゃんとしてくれない頭にイライラする。度重なるミスに、われながらあきれるわ、へこむわ、まったく自分が自分でいやになる。――(第3章より抜粋)

本書は医学的にも稀有な、貴重な記録である。
本書の内省の対象は、自分自身の心の障害である。壊れた脳が作り出す、自分の心のほころびについて率直に語っている。言うまでもないことだが、心という現象は主観的なものであり、本人以外には経験できない。(中略)自分がどういう状態にあり、どんな手助けをしてほしいのかなどということを周囲に教えてくれるわけではない。本人自身が薄闇の中にあり、そんなことはできないのである。その薄闇にある自分の障害と向き合い、その内容を教えてくれるのが本書である。
――神戸学院大学人文学部教授 山鳥重 「解説」より抜粋

感想・レビュー・書評

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  • みなさんは高次脳機能障害をご存知だろうか?
    この本は整形外科医自身が34歳から3度の脳出血を起こし、麻痺や高次脳機能障害を呈すが、それでもなお前向きに生き、後遺症と闘い、少しずつでも回復(成長)している記録である。医療者目線から語る高次脳機能障害の内面の世界。これがとても魅力的!!
    高次脳機能障害の方を理解するのにも参考になるし、リハビリとはと、また考えさせてくれる一冊でもあります!!

  • 読み終えてまず思った感想はこの本を書くのに著者はどれだけ苦労したのだろうかというものだった。
    自分の思考を文字に起こすという作業、自分の身体の現象を客観的に分析すること、悲観的にならずに日々学習する根気。これらは正常な脳があってこそ為せるものであり、世界が改変してしまった人からしたらどれほど大変なことなんだろう。
    病気というのはなった当事者にしか心境はわからず、それ以外の人達が全く同等に共感することは不可能だと思う。しかし、著者が言うように言動から想像しようとすることは出来る。
    医療の現場にいて「患者さんのことを思いやって」という言葉をよく聞くが想像するという観点から見ると提供されている医療は思いやりの欠片もないものである。それは科学に基づく治療と銘打って相手の言動を無視した一方的な医療を提供しているからである。
    医療は科学でもあるが、心は科学だけでは治せないと思う。それは人が千差万別な存在であり育ってきた環境や思考が違うからである。
    本書は貴重な患者から見える世界を言語化したもので患者の気持ちを理解するための本である。
    医療従事者に読むべき本として薦めたい。

  • 脳が壊れながらも生存している知性で本を執筆した希有なリポート。
    おかしな動きをしている人=(イコール)知性が欠けている人だと捉えることになんの疑問も持たないのが大多数の自然な感性かと思うが、そうではない人もいるんだという可能性に気づかされる一冊。そういう意味では東田直樹の本も同様で、このての本はたくさんの人に読んでほしい。
    ただ、この堅苦しいタイトルと表紙でどれほどの人が手に取ってくれるのか…後発の著作では改善されているようですけどね。

  • 私はこの本の作者(前頭葉を中心、右脳)とは違い、脳幹の梗塞でしたので、高次脳障害という意味では殆ど影響がありません。

    しかしそれは「今では」であって、やはり当初はいろいろとあったように思います。

    ここに書いてある事は、もちろん他人には計り知れない事ばかりですが、「事実」であることは本当によく伝わってきます。

    切ない内容もありますが、むしろあっけらかんと前向きに生きる姿勢を、私も自分に取り入れて行きたいです。

    星4つとはしましたが、ぜひ皆さんに読んでほしい本です。

  • 脳の血管が切れたり、脳梗塞で高次脳機能障害になった医者が自分の体験をまとめた。漢字が出てこない。左の半身が麻痺して感覚がない。短期記憶がすぐに薄れていく。等々のさまざまな高次脳機能障害を持ち前の負けず魂で少しずつ改善し、自分の置かれた世界を本にしてくれた貴重な記録である。

  • 宇宙について知ることと、
    脳の働きについて知ることは同じことの気がする。
    隣にいるひとが、知らない世界で生きている。
    想像したことがない世界を体験している。
    それを読むことができる。知ることができる。
    常日頃体が思ったように動いて当然と思っているけど、
    それはもしかしたら真理でないのかもしれない。
    (自分のものだと当然の権利のように思ってる、もしくは意識してさえない)この体は、ある日突然、与えられたものなんだったし、そういえば。。。
    生きていることのエキサイティングさ。
    不思議さ。生命のたくましさ。
    何より本当に、不死鳥のごとくよみがえるこの方を素晴らしいと思う。

  • 前書きのところから入り込んでしまう。
    医者として働いている中脳卒中になり高次脳機能障害をきした著者。医者からの立場、患者からの立場の二つの目線からの話が学べる。

    「何やってるんだろう、私」そう。高次脳機能障害の本当のつらさがここにある。おかしな自分がわかるからつらい。知能の低下はひどくないので、自分の失敗がわかる。失敗したとき、人が何を言っているかもわかる。だから悲しい。いっこうにしゃんとしてくれない頭にイライラする。度重なるミスに、われながらあきれるわ、へこむわ、まったく自分が自分でいやになる。

    いくら優秀な医者や研究者でも患者と同じ体験は出来ないのだ。

    意識朦朧の中点滴をされている針を抜いてしまう。そこで言われた「あなたお医者さんでしょ」「医者のくせに」わすかな覚醒のときのそんな記憶は、一生忘れることがないと思う。

    視覚失認。距離感がわからずに突き指などをしてしまう。階段を降りるときには、どこからスタートなのか、脚はどれだけ前に出せばいいのか、手すりを頼ってもはじめから最後までないと意味がない。作り方に怒りを覚えることもあった。

    著者の凄いところは脳卒中に3回なっても医者を続けるというところだと思った。高次脳機能障害、左麻痺、半側空間無視、着衣失行などがありながらも仕事を続けることは私の今までの常識では考えられなかった。

    十分な知識を持った専門家がどれだけいるか。軽々しく「できませんよ」と言って欲しくない。高齢の患者さんをまるで赤ん坊か幼児と勘違いしている。患者を自分よりも劣った人間のように扱う医療関係者が多いことも患者の立場になって改めて実感した。


    三度の脳卒中の中でも立ち上がる、なかなか出来る事ではない。さらに社会復帰。今では他の本の出版、公演なども行っているようだ。リハビリ職が限界を決めない。そんな事を強く思わせてくれる本であった。

  • 闘病記の棚にあります
    2016年度 2年2組のチャンプ本

  • 高次脳機能障害の諸症状について主観的にわかりやすく述べられている。

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著者プロフィール

1964年、香川県生まれ。東京女子医科大学卒。同大付属病院、香川医科大学(現・香川大学医学部)勤務を経て、山田整形外科病院院長に。37歳で3度目の脳出血を体験し、重篤な高次脳機能障害を発症。自分の症状や自前のリハビリ法などを綴った『壊れた 生存する知』が話題に。

「2011年 『壊れた脳も学習する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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