- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062122986
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進路支援図書「シュウカツの友」
2009/07/08更新 011号 紹介図書
http://www.nvlu.ac.jp/library/friends/friends-011.html/ -
酪農という業種は、大自然に抱かれて何かとてものびのびと働いているような健康的なイメージがあるが、そこにもかなり過酷な現実が横たわっている例が少なくないことを知らされる。高額な機械の導入や設備投資、輸入飼料の購入、規模の拡大、効率の追求による労働負荷の増大といった、絵に描いたような負のサイクルが頻出する。自然に逆らわず、損なわず、むしろ人間が手をかけることを減らすことで、利益率と品質を向上させている著名な酪農家でが何人も登場し、淡々と自らの試行錯誤と信念の歩みを語っているが、それがなぜ、稀有な成功例ということにとどまり普及をしていかないかということに、問題は集約されている。
本書の大半は聞き書きという手法でつづられているので、まさに目の前で語りかけられているような臨場感と、方言交じりの本人の言葉づかいが温かい。 -
聞き書きドキュメンタリーの手法を通して、食糧安全保障の問題を酪農従事者の目線から世に問うたもの。山地農法で神とも謳われる旭川・斎藤牧場の斎藤晶氏の生き方と酪農法を物語の“フック”とし、その賛否と他の酪農家(族)それぞれの人生の綾を描き出すことに成功している。食の生産現場が抱える問題点を知る上で『草の牛乳』と併せて必読の書。「一頭の牛から少しでもたくさんの乳を搾ろうとする一般酪農のやり方にいは、『お金を払って飼料を購入する』『それを人間が運んで食べさせる』『たくさん食べた牛がたくさん排泄した糞を始末する』という二重三重のお金と労働力がかかっているのだ。」(p.210)