ブラフマンの埋葬

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 946
レビュー : 211
  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062123426

作品紹介・あらすじ

夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。あたたかくて、せつなくて、いとおしい。こころの奥に届く忘れられない物語。

感想・レビュー・書評

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  • ブラフマンと名づけられた動物は何なのか、最後まで明らかにはされない。
    体型の描写から言うとビーバーかカワウソかとも思うが定かではない。
    主人公が飼っていたのは、ペットでも動物でもなく「ブラフマン」なのだ。
    およそ生き物を飼ったことのある人なら、ここはおおいに共感できる部分だろう。
    碑文彫刻師の存在が、それを明快に語っている。
    世界にただひとりの、時間と心をわけあった友。それがブラフマン。
    主人公が自分のことを語る場面は過去形で語られ、ブラフマンのことを語る場面は現在形で語られる。
    そこが実に生き生きとしている。
    皮肉なことに、人間の「娘」にわずかに心を奪われた隙に、ブラフマンはあっけなく命を落とす。
    淡々と書かれた終盤の埋葬場面が、それだけに切ない。
    「淋しがらなくてもいい、僕はちゃんとここにいるから」
    そういえば私も、愛猫の死にそういって聞かせた。泣けるなぁ。
    無国籍風の舞台と、無駄を省いた文章が美しい。
    装画は山本容子さん。

  • 小川洋子さんの本ばかり選んで読んでしまうのは
    このひとの、こんな色彩感覚にも似たこの文才にあるとおもう。

    ブラフマンという ネコなのか、犬なのか、はたまたイタチなのかも
    わからない「謎」の動物の存在が「僕」の家に傷を負ってあらわれる。

    小川洋子さんの文章によく使われるのだけれど
    このかたの文章には「いち個人」の具体的な名前をつけない。
    わたしは「私」であって、ぼくは「ぼく」
    少女は「娘」であって、ほかを「彫刻師」など職業で表現する。

    またその職業もうつくしいし、外国か日本か
    そんなことはどうでもよくて、そこの世界観に生きる「ひとびと」という
    存在がある。

    もっとも好きなのが今回のような「僕」の存在や語りかけかただ。

    「無理しちゃダメだ」
    僕は頭を撫でた。
    「君は怪我をしているんだ」

    喧騒の中で生きているのをわすれるこの時間の静けさと対話のなんとやさしいことだろう。「僕」の存在というのは決してしかりつけたりなどしない。
    けれど謎の動物のいたずらにも「これは机といって、本を読んだり、食事をしたり、手紙を書いたりするものなんだ・・」と説明をする。
    人はこの説明という作業にどれだけ心が救われるかわからない。
    ここに「愛情」というものをとても感じるのだ。

    どうしてこんな風にすてきな言葉をえらぶんだろう。
    小川洋子さんの世界というのは色彩のように生まれて、水彩のように水を多く含んでいる。鮮やかな色をぼんやりと描き、ときには油絵のようにねっとりとけれど、全体はやさしく物語る。

    ブラフマンの最後ですら、彼女は「僕」としての注釈をつけた。
    けれど最後の一文に、電車の中で涙してしまうのだった。

  • 元資本家の別荘を管理する管理人。芸術家のお世話をする彼が見つけた不思議な生き物。その生き物とは、一体なんだろう?

    暗すぎずない内容で読後、何だかちょっとほっとした。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      この本、タイトルから、ブラフマンに訪れる悲劇が予想できていても
      ...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      この本、タイトルから、ブラフマンに訪れる悲劇が予想できていても
      終盤、ブラフマンが息絶えるところでは、やっぱり泣いてしまいました。
      それほどブラフマンにハートを掴まれた私ですが
      ゆきのすけさんと同じく、「この愛らしいブラフマンって、いったい何の動物なんだろう?」
      と最後までわからず仕舞いで。。。
      水かきがあって、しっぽも特徴的なので
      カワウソの仲間なのかなぁ?と想像したりしていました。

      ゆきのすけさんとは、読んだ本のレビューは書かずにいられないところや
      ブックオフの105円の棚で宝探し(?)することが大好きなところなど
      共通点がたくさんあるようで、本棚やレビューを見せていただいていて、
      どんどんうれしさがこみ上げてきてしまいました(笑)

      これからもレビュー率100%の素敵なレビューを楽しみにしていますので
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/07/28
  • 文学

  • 名を持つのは唯一ブラフマンだけ。どこともつかぬ空想の世界。ひんやりした、少しざらついた石肌を感じさせる小説。小さく繊細なものの愛しさと人間のおろかさと。

  • ブラフマン、かわうそかな?レース編み作家が一晩でブラフマンのおくるみを編んでくれたことが、なんだかうれしい。

  • 2008年11月14日~14日。
     うーん。
     これは正直今一つだったなぁ。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    夏の初めのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。それは傷だらけの小さな生き物だった。思いだせばいまでも温かな気持ちになれる、奇跡のような楽しい毎日。

    【キーワード】
    単行本・家族・生死



    +++1

  • つい50年前まで川を下る他には来る手段がなかった小さな村。そこに芸術家たちのために無償で提供されている家がある。創作者の家と呼ばれるその建物に住み込みの管理人している僕とある夏の夜迷い込んできた小さな動物、ブラフマンとの物語。

    ブラフマンは犬としか思えないのだがそうは書かれない。
    一体なんなのか?何故言ってくれないのか?そればかりが気になってしまい集中できなかった。ブラフマン目線のカギカッコつきのセリフの部分も必要だったのか疑問。

    土地と建物と人物と出来事の関係がうまく絡み合っていないような気がした。それぞれはとても魅力的なので余計に惜しい。後日談があれば読みたいくらいだ。

    小川作品にはもう少しの熱量とさらに癖のある人物を求めている。

  • 数時間で読めてしまった。やっぱりこの人の世界観が好き。奇想天外なストーリーがある訳ではないけど、心がスーッと落ち着く。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

小川洋子の作品

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