螢火

著者 :
  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062124362

作品紹介・あらすじ

消せない過去、日々の溜息が、布目にからみつく。北の街の夕暮れどきに、「ちぎり屋」と「染み抜き屋」の灯がともる。芸妓から成島屋の御内儀に納まった紫乃が持ち込んだ、男物の紋付羽織。結び雁金の紋所は、かつての恋が、紫乃の心に染みになって残っていると告げているように、つるには思えた。「こういう染みって、素人でも抜けるものですか」紫乃の言葉に、つるの胸の底で赤黒い炎が大きく揺れた。身の裡のほとぼりを鎮めるために、つるは一人、おもんの「ちぎり屋」の暖簾をくぐった-「徳壺」より。他の収録作「星月夜」「十色の虹」「花魁鴨」「蛍火」。

感想・レビュー・書評

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  •  蜂谷涼さん、「ちぎり屋」「はだか嫁」「おネエさまの秘め事」「紅ぎらい 献残屋はだか嫁始末」に続く5冊目は「蛍火」(2004.6)です。星月夜、十色の虹、徳壺、花魁鴨、蛍火の連作5話。六畳二間の四軒長屋と(二坪の物置)に住む染み抜き屋の30過ぎの別嬪仲村つると長屋の住民の物語。おもんが営むしっとりと落ち着いた空気の「ちぎり屋」とハイカラで開けっ広げな雰囲気のとさかの店「えれきてる」での料理や会話が味わい深いです。大正から明治にかけての北海道は小樽、余市が舞台。薩長と会津のわだかまりが根底に流れています。

  • 回想シリーズものとして定着しても良いレベルで、なんかイケてないアニメの時間稼ぎじゃねーかって。は、言いすぎにしても。
    太夫とか芸妓とか、そこらへんの区別とか、そういう世界が微妙に事細かに書かれてて、なんか興味深い。ていうかそういうのがブイブイ言わせてた時代に帰りたい。ていうか行きたい。と思う事がないでもない。でも高いって言うから行けないな、きっと。
    でもって最後には壮大に回想しまくる。しかも本編と全然関係ない幕末から明治初期あたりの話を、本当にただ歴史を語りたいだけじゃないか、的に語りまくる。
    というわけで回想。

  • 長屋に住む人々や、染み抜きを通して知り合った人との交流が主人公の過去を和らげてくれるのかな、と。
    ただ、最終章の「ドーユー」さんのお話は、斜め読みどころか飛ばし読み。ごめんなさい。

  • 始まりは市井の女たちの物語、やがて明治維新の傷痕を描き出す。
    北海道に、ただ『墓』とだけ彫られた会津移民の墓標があると、何かで読んだのを思い出しました。
    どんな境遇にあろうと、どんなにわだかまるものがあろうと、ひとは皆、尺取虫のように進んでいくしかない。思いがけず重かったけれど、色々残る作品でした。

  • 消せない過去、日々の溜息が、布目にからみつく。北の街の夕暮れどきに、「ちぎり屋」と「染み抜き屋」の灯がともる。芸妓から成島屋の御内儀に納まった紫乃が持ち込んだ、男物の紋付羽織。結び雁金の紋所は、かつての恋が、紫乃の心に染みになって残っていると告げているように、つるには思えた。「こういう染みって、素人でも抜けるものですか」紫乃の言葉に、つるの胸の底で赤黒い炎が大きく揺れた。身の裡のほとぼりを鎮めるために、つるは一人、おもんの「ちぎり屋」の暖簾をくぐった―「徳壺」より。他の収録作「星月夜」「十色の虹」「花魁鴨」「蛍火」。

  • 09/09/20 ほんの少し重いが、面白味はその数倍。

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著者プロフィール

1961年小樽市生まれ。北海道を拠点に執筆活動を行なう。
2008年『てけれっつのぱ』(柏艪舎刊)が劇団文化座により舞台化され、同舞台は2008年文化庁芸術祭大賞受賞。
主な著書に『落ちてぞ滾つ』、『いとど遙けし』、『雁にあらねど』(各 柏艪舎)、『雪えくぼ』、『舞灯籠』(各 新潮社)、『夢の浮橋』(文藝春秋)、『蛍火』(講談社)などがある。

「2018年 『曙に咲く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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